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くすりの話 あれこれ ~代々木病院~
No.99:今年3月に承認されたある新薬について
間 規子 薬剤師 たくみ外苑薬局
それは新型インフルエンザの薬です。今年3月に承認されましたが、有効性・安全性の問題が解決されておらず、いまだ発売許可はおりていません。しかし、この薬がエボラ出血熱に効くかもしれないと注目されています。この記事が出る頃にはその結果が報道されているかもしれません。
期待の大きい新薬ですが、薬だけに未知の部分にある危険性をどれだけ防げるかが重要になってきます。治療薬のないエボラ出血熱に使用するのだから、効果も危険性も不確かだが使って当然とはいきません。WHO(世界保健機関)の対応も慎重でした。
今回は、この新薬が承認に至るまでの試験や調査、審議をまとめた報告書から、この新薬について知ってもらいたい2点について書いてみました。
①使用できるのは新型インフルエンザ感染症だけ。一般のインフルエンザには使わせない!
②催奇形性―奇形の子どもが生まれる危険性がある。
①については、これまでのインフルエンザ治療薬との比較試験では、この薬の方が劣る結果がでています。しかし、新型に対しては、実験レベル(細胞や動物)で、これまでの治療薬にはない効果が認められたため、単なるインフルエンザには使わせない!新型だけ! と いう結果になりました。
②については、厳重な管理下での臨床試験でさえも、注意違反がありました。厳重注意したところで市場に出たらそれは無意味だと、審査段階で強く指摘されています。
かつて催奇形性の危険性を世にしらしめたサリドマイドが、現在、使用する医師と患者双方に厳重な管理を強いて、血液癌の治療薬として使用されていますが、同レベルの扱いになる予定です。
エボラの状況だけでは、この薬の「夢」や「希望」の情報しか入ってきそうにありません。まして、助けたいと思うのが医療人の心情、悪いニュースには弱気な対応になってしまいがちです。
しかし、治って元気になりたいから、効果だけでなく、安全性もしっかり考えてほしいという患者さんのアピールこそが、薬を安全・有効に使用する勢力の要となります。必要な薬を有用に使うために、これからも薬を吟味し、大事な情報をきちんと伝えていきたいと思います。