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くすりの話 あれこれ ~代々木病院~
No.96:異なる高血圧基準値の話題
たくみ外苑薬局 楠本 由美子
高血圧学会は4月1日に、高血圧治療ガイドライン2014を5年ぶりに発表しました。高血圧を140/90mmHg以上という従来の基準は変更されませんでした。
人間ドック学会からも4月4日に、ドックの新たな基準範囲(血圧147/94mmHgが正常)が公表されました。これは、極めて健康な人1万5千人の検査データを分析したもので、今後この追跡調査を進める予定であり、当面はドックでは現在の基準範囲129/84mmHgが使われます。この基準値の違いについて、話題となり混乱を招いている事を受け、日本高血圧学会から「国民の皆様へのお願い」という声明が、以下の様に出されました。
『血圧の基準140/90mmHgは、血圧が高くなると、将来脳卒中や心筋梗塞を起こし易いかどうかを、多くのデータにより十分な検討を経て設定したもので、病気になるリスクを重視し、治療を始める判断の目安として決められたものである。人間ドック学会の新基準案は、病気になるかどうかを予測されておらず、将来に渡って健康かどうか保証されているものではない。血圧がこの範囲であれば大丈夫という事を示す「正常」ではなく、現在健康で正常な人の基準値を示している。』との見解です。又、人間ドック学会との基準値のズレの範囲に入っている方(140~147/90~94mmHg)への対応についても、『家庭での血圧を、朝起床後1時間以内と夜就寝前に各々2回ずつ測定し5日以上の平均値が135/85mmHg以上であれば、医師の診察が必要』と注意喚起しています。
高血圧治療ガイドライン2014では、基本血圧の目標値は140/90mmHgですが、75歳以上の方は少し緩めに150/90mmHg、糖尿病や、蛋白尿のある慢性腎臓病の方は130/80mmHgを目標にしています。ただし、115/75mmHgより低くなった場合に、脳卒中や心筋梗塞が予防できるかどうかの研究はしていないので、低ければ低いほど良いというわけではないと述べています。
心臓病、脳梗塞、糖尿病、慢性腎臓病などのリスクを考えて、血圧を保つことが必要と考えられます。「私の場合はどうなのでしょう?」と医師と対等な立場で話し合って、治療方針に合意して血圧の管理をしましょう。