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くすりの話 あれこれ ~代々木病院~
No.141:アルコールと次亜塩素酸ナトリウムについて
八田加奈子 薬剤師 代々木病院
新型コロナウイルス感染症予防の観点からアルコール製品を使用する機会が多くなりました。ドラッグストアやスーパーで販売される商品や医療現場で使用する製品も品薄状態が続き、アルコール以外で殺菌効果のある消毒剤として「次亜塩素酸ナトリウム」が挙げられました。しかし、どの消毒剤も殺菌力を得るには濃度が大切です。そこで今一番使用されている消毒剤のアルコールと次亜塩素酸ナトリウムの特徴と注意点を示します。
1. 消毒用アルコール
消毒用アルコールの最適濃度は70%(殺菌効果、皮膚への飛散、揮散性も適度で皮膚の損傷や皮脂を溶解し去ることもなく無害)です。殺菌力の最適濃度は大体50~80%の間が適当とされていますが、諸説があります。医療現場で使用するアルコール消毒剤の濃度は76.9~81.4%と表記されているものが殆どです。適応範囲は手指・皮膚・医療器具等で、新型コロナウイルスなどエンベローブを有するウイルスはアルコール消毒剤にダメージを受けやすいと言われています。
注意点は
- ①芽胞菌への殺菌効果は期待できない(その場合次亜塩素酸ナトリウムを用いる)。
- ②使用濃度が低下すると殺菌速度が著しく遅くなる(ウイルス汚染の環境消毒には低濃度アルコールは用いない)。
- ③有機物(血液など)により殺菌力が滴下する。
- ④揮発しやすいため殺菌力の持続性がない。
- ⑤刺激が強く、粘膜や損傷皮膚には使用できない。
- ⑥合成ゴム製品、合成樹脂製品、鏡器具などには変質するものがあるため長時間浸漬しない。
- ⑦可燃性、引火性である
2. 次亜塩素酸ナトリウム
次亜塩素酸ナトリウムは、低濃度でも殺菌力を発揮し、ウイルスに対する効果もあります。新型コロナウイルス感染症対策の環境消毒では0.05%で有効です。芽胞菌に対しては十分な殺菌力が得られにくいが、時間をかければ有効です。
注意点は
- ①酸性物質が混入すると多量の塩素ガスを発生(他の洗剤等と混ぜない)。
- ②金属製品、繊維製品、木工製品、精密機械などに使用すると、腐食や変色する場合がありプラスチック、ゴムを劣化させる。
- ③手指の消毒には適さない(薄めた液体でも皮膚を傷める恐れがあり、皮膚についた時はすぐに水で十分洗い流す)。
- ④使用の際は十分換気を行う。
- ⑤薄めた液をスプレー容器に入れて噴霧することも避ける(せき込み、呼吸器に異常をきたす恐れがある)。
- ⑥血液や石鹸類など汚れが残ったまま使用すると殺菌力が低下する(タンパク質と反応して殺菌有効成分の生成ができなくなる)。
- ⑦脱色作用がある(色落ち等起こるため注意)。
- ⑧商品により塩素濃度が異なるため表示を確認する。
- ⑨直射日光や高温で安定性が悪く効果が短時間で低下。
- ⑩薄めた液を他の容器などに入れて保管することは避ける(薄めた液は次亜塩素酸ナトリウムが分解されやすく効果が持続しないため使用の都度、必要量を作り使い切る)。
- ⑪パルプや紙などのワイプ類は殺菌効果がすぐになくなってします。