わかばだより

No.72:アルコールとの上手な付き合い方

2013年11月 わかば薬局発行

アルコールの基礎知識

  1. 口から入ったアルコールは胃・小腸から吸収され、血液に入り、全身にいきわたります。
  2. 体内に入ったアルコールのほとんどが肝臓で代謝されます。肝臓ではアルコールはアセトアルデヒドを経て酢酸という物質に分解されます。
  3. 酢酸は血液によって全身をめぐり、筋肉や脂肪組織などで水と二酸化炭素に分解されて体外に排出されます。
  4. 摂取されたアルコールの2~10%が、そのままの形で尿・汗として排泄されます。

血液に溶け込んで脳に運ばれたアルコールによって脳の働きが低下することが「酔う」ということです。
酔いの状態はアルコール血中濃度によって6段階に分けられています(表1)。大脳の働きが抑えられることによって、本能や感情をつかさどる部分の働きが活発になり、解放感を感じたり、陽気になったりするのです。
しかし、アルコールの量が増えるのにしたがって酔いが進み、脳の働きの低下も進みます。「酩酊(めいてい)初期」「酩酊期」になると知覚や運動能力が鈍り、繰り返し同じ話をしたり千鳥足になったりします。
さらに飲酒が進み、「昏睡期」になると、麻痺は脳全体に及び、呼吸困難に陥り、最悪の場合には死に至る危険性もあります。
楽しくお酒を飲めるのは「ほろ酔い期」の段階までです。

処方せんってなに?

処方せんとは、病院の診察において薬による治療が必要になったときに、薬局で薬をもらうために必要な文書です。医師、歯科医師等が記載し、薬剤師が処方せんの内容を元に薬の準備をします。処方せんには以下の項目が記載されています。

▼お酒の量と酔いの状態(表1)

血中濃度 酒量 酔いの状態
爽快期
(0.02~0.04%)
日本酒(~1合)
ビール大びん(~1本)
ウイスキー・シングル(~2杯)
・さわやかな気分になる
・皮膚が赤くなる
・陽気になる
・判断力が少しにぶる
ほろ酔い期
(0.05~0.10%)
日本酒(1~2合)
ビール大びん(1~2本)
ウイスキー・シングル(3杯)
・ほろ酔い気分になる
・手の動きが活発になる
・抑制がとれる(理性が失われる)
・体温が上がる
・脈が速くなる
酩酊初期
(0.11~0.15%)
日本酒(3合)
ビール大びん(3本)
ウイスキー・ダブル(3本)
・気が大きくなる
・大声でがなりたてる
・おこりっぽくなる
・立てばふらつく
酩酊期
(0.16~0.30%)
日本酒(4~6合)
ビール大びん(4~6本)
ウイスキー・ダブル(5杯)
・千鳥足になる
・何度も同じことをしゃべる
・呼吸が速くなる
・吐き気、おう吐がおこる
泥酔期
(0.31~0.40%)
日本酒(7合~1升)
ビール大びん(7~10本)
ウイスキー・ボトル(1本)
・まともに立てない
・意識がはっきりしない
・言語がめちゃめちゃになる
昏睡期
(0.41~0.50%)
日本酒(1升以上)
ビール大びん(10本以上)
ウイスキー・ボトル(1本以上)
・ゆり動かしても起きない
・大小便はたれ流しになる
・呼吸はゆっくりと深い
・死亡

適量の目安

一般的に、約1~2単位のお酒を限度とするとよいと言われています(表2)。
▼酒類別の1単位(表2)

種類 ml 目安 アルコール度数
ビール 500ml 中びん1本 5度
日本酒 180ml 1合 15度
焼酎 約110ml 0.6合 25度
ウイスキー 60ml ダブル1杯 43度
ワイン 約180ml 1/4本 14度
缶チューハイ 約520ml 1.5缶 5度

※適量には個人差があり、お酒に弱い人や女性であればこの基準よりも少ない量を適量と考えるべきです。同じ人であってもその日の状態によって酔い具合が異なるので、自分の体調と相談してほどよく楽しめる程度に抑えましょう。

<アルコールと薬>

お酒(アルコール)と医薬品の相互作用(飲み合わせ)について、注意が必要なものを見てみましょう。アルコールと薬を同時に飲むことによってそれぞれの作用が増強されたり、体に悪影響な物質がつくられたりします。
まず、特に注意が必要な薬は以下の通りです。

飲酒してはいけない薬

これらの薬はアルコールの代謝を遅らせ、頭痛・動悸・悪心・嘔吐・ショックなどを起こしやすいです。
●嫌酒薬
シアナマイド
●抗生剤
セフェム系でMMT基をもつもの…セフメタゾール、セフォぺラゾン、シオマリン
●ピロリ除菌・原虫症・細菌感染症
フラジール
※特に投与中及び投与中止後1週間は禁酒


大量の飲酒をしてはいけない薬

●メトグルコ
メトグルコという糖尿病薬は、飲酒により乳酸アシドーシスを起こしやすくなります。※過度なアルコールは禁忌!ビールの場合500mlが1本、日本酒の場合1合が限度です。
☆乳酸アシドーシスとは?
乳酸アシドーシスの症状としては、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛といった初期症状が急激に始まって、進行すると過呼吸、脱水、低血圧、低体温、昏睡などの症状を引き起こすこともあります。
●アセトアミノフェン
大量の飲酒により肝臓に毒性のある物質がつくられ、肝機能障害をおこします。アルコールを常飲している方は特に肝機能障害がおこりやすいです。

その他にも以下のように注意の必要な薬が多くあります。


服用している薬 アルコールと一緒に飲むと…
心臓の薬 心臓の働きを活発にする強心薬は、アルコールによって代謝が抑えられ、薬の血中濃度が高くなり中毒症状を呈する事があります。
血圧の薬 成分のうえでは併用は問題ないのですが、アルコールには血管を広げる働きがある為、降圧作用が強くなって、立ちくらみ、めまい等を起こす事があります。
胃の薬 アルコールを多飲すると、シメチジンという薬を服用中の人はアルコール依存症になりやすいといわれます。また、胃酸の分泌を促し、潰腸の原因にもなります。血管の拡張作用もあるので、潰腸のある方は出血する事もあり、控えることが必要です。
咳止めの薬 席の神経を抑制するので、眠気が強くでたりします。要注意が必要な仕事、危険な作業の方は控えて下さい。
抗アレルギー剤 薬、アルコール相互に作用が強くなります。眠気が強くでたり、悪酔いしたりします。併用はしない方がよいでしょう。
糖尿病の薬 糖尿用の飲み薬は、アルコールの酔いが強くなります。注意して下さい。又、アルコールによりカロリーオーバーになる事も考えられます。
疾風の薬 アルコールと一緒に飲むと尿酸の値を高めると考えられます。とくにビールがよくないと言われています。
安定剤・睡眠剤 どの薬も作用が強くなります。原則的に禁酒が必要です。寝る前に晩酌して安定剤・睡眠剤を飲むというのはよくありません。順番が逆でもだめです。中枢(脳)に働きかける薬は作用が強く現れ危険です(逆に普段から飲酒量が多い場合、薬の効き目が悪くなる場合もあります)。足元からふらついて転倒したり階段から落ちることなど危険が一杯です。

参考文献
公益社団法人アルコール健康医学協会HP http://www.arukenkyo.or.jp/
医薬品の情報サイト おくすり110番 http://www.jah.ne.jp/~kako/
KIRIN キリンビールHP
薬の総合辞書「薬辞苑」
薬の相互作用としくみ 杉山正康 編著 日経BP社 2012年10月
日本大学 古沢紗綾香  昭和薬科大学 蒲田侑加子

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