サプリメントに頼らない生活

No.75:睡眠補助サプリメントの危険性

藤竿伊知郎(外苑企画商事、薬剤師)

前回トリプトファンで健康障害が起きたことを紹介しました。売上ランキング上位に入る睡眠補助サプリメントの中には、トリプトファンを含んでいるものがあります。普通に使われ、体を構成するタンパク質の部品にすぎないアミノ酸に、いったいどんな毒性があるのでしょうか。

トリプトファンは、ヒトの体内では合成できず、食物から摂取しなければいけない必須アミノ酸です。その役割は、単なる構成部品でなく、「しあわせホルモン」と呼ばれ重要な役割を持つ神経伝達物質「セロトニン」の原料物質です。また、その代謝経路の流れの末尾には、入眠のリズムを司るホルモン「メラトニン」が位置しています。さらに、エネルギー産出・脂肪酸やステロイドホルモンの整合性などに重要な役割を持つ補酵素「ナイアシン」も代謝産物です。そのため単なる栄養素として扱えず、過剰摂取が自己免疫性疾患などきつい健康障害を起こす物質と考えてください。

アメリカで問題が起きたとき、患者の1日あたり摂取量は0.5~6gと幅がありました。4gを超えると50%の人が発症しており、過量服用の危険性がわかります。一方で、少量でも被害が出ていることから、代謝能力の差に注目する必要があります。この差は、事前に予測できないことから、服用にあたって医薬品なみの注意が必要と考えます。

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