肝炎対策における総合的施策の推進に関する決議 平成二十年一月十日 参議院厚生労働委員会  我が国では、国民があまねく近代的な医療の恩恵を享受し得るよう社会環境の整備が進められ、これまで先端技術に基づく医薬品・医療機器によって多くの患者の生命が救われ、また予後の改善がもたらされてきた。  その一方で、サリドマイド、スモン、薬害HIV感染、医原性クロイツフェルト・ヤコブ病感染という医薬品・医療機器による悲惨な事件も経験し、そのたびに薬害根絶及び被害防止が訴えられ、これを受けて感染症予防医療法をはじめ諸施策が実施されてきた。それにもかかわらず、B型肝炎ウイルス感染・C型肝炎ウイルス感染という重大な事件に直面することになった。多数のウイルス性肝炎患者・感染者は、多様な症状に苦しみあるいは症状の重篤化に対する不安を抱えながらの生活を余儀なくされている。  我々は、血液製剤フィブリノゲン等によりC型肝炎ウイルスに感染した被害者やその家族の肉体的・精神的苦痛を取り除くために、一日も早く対応策を講ずるとともに、これらを含めたウイルス性肝炎患者・感染者の健康回復等の対策に最善の努力を行う必要があると考える。  今般、いわゆる薬害C型肝炎訴訟については、「特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第K因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法」を制定することによって一応の解決をみることができるが、これはウイルス性肝炎被害のすべてを対象にするものではなく、本法の施行によって肝炎問題が終了するわけではない。  政府においては、これまでの薬事行政の反省に立って、速やかに次の事項について措置を講ずるべきである。 一、薬害C型肝炎訴訟の全面解決に向け、血液製剤に起因するウイルス性肝炎患者・感染者を含め、すべてのウイルス性肝炎患者等に対する総合的な肝炎対策に政府を挙げて取り組むこと。 二、過去における血液製剤に対する調査を速やかに実施するとともに、投与事実の証明に関するカルテその他の記録確保等のために必要な措置を実施すること。 三、肝炎ウイルス検査の質の向上と普及を促進するとともに、肝炎医療に係る専門知識・技能を有する医師等の育成及び専門的な肝炎医療を提供する医療機関の整備・拡充を図ること。 四、約三百五十万人と推計されているウイルス性肝炎患者・感染者が最良の治療体制と安心して暮らせる環境を確保するため、医療費助成措置等の早期実現を図ること。 五、肝炎に関する治療方法の充実・普及を図るとともに、治療薬等の研究開発の促進を図ること。 六、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の体制の点検を行い、健康被害救済、審査、安全対策等のための整備・強化に努めること。 七、特別措置法の施行の日から五年に限られている給付金の支給の請求については、施行後における請求状況を勘案し、必要があると認めるときは、その期限の延長を検討すること。 八、先天性の傷病の治療に際して血液製剤を投与されウイルス性肝炎に感染した者への必要な措置について、早急に検討すること。 九、特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第K因子製剤以外の血液製剤の投与によるウイルス性肝炎の症例報告等を調査し、その結果を踏まえて受診勧奨等必要な措置について、早急に検討すること。 十、肝炎に関する総合的な対策を推進するため、早急に「肝炎対策推進協議会」(仮称)を設立すること。  右決議する。 元の文書は  http://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/168/i069_011001.pdf