副作用の重篤度を示す尺度の一つ。米国国立がん研究所(National Cancer Institute :NCI)が定めた共通毒性規準。
Grade 0: 正常、正常/基準値範囲内( WNL)、有害事象なし
Grade 1: 軽症/軽度の有害事象
Grade 2: 中等症/中等度の有害事象
Grade 3: 重症/高度の有害事象
Grade 4: 生命を脅かす又は活動不能にいたる有害事象
Grade 5: 有害事象による死亡( 因果関係あり)
びまん性肺胞損傷(diffuse alveolar damage)。肺全体にわたり肺胞毛細血管内皮、肺胞上皮細胞が傷つけられる、重い肺障害。
上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor)。皮膚、腸管、肺胞など上皮細胞の表面にあり、成長・分化をコントロールする。傷の修復などに役立つが、がんの成長・転移にも関与する。
イレッサは、EGF受容体の遺伝子に変異がある患者には効果がある可能性が提唱されている。
パフォーマンス・ステータス。病気による活動制限の程度をあらわす。
PS:
0:無症状
1:軽度の症状、歩行や軽い作業に支障なし
2:日中の50%以上は動ける
3:日中の50%以上は横になっている
4:終日、横になっている
EGFR(上皮成長因子受容体)阻害剤。米国は2004年承認され、販売名「タルセバ」。日本では2007年10月、アメリカから3年遅れで承認。
イレッサの教訓を配慮し、全症例調査と「肺癌の診断、化学療法に精通し、本剤のリスク等についても十分に管理できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局」でのみ扱えるという制限がつけられた。
医薬品を使って病気を治療することである。普通は、他の治療法、例えば外科手術と対比する場合につかわれる用語である。 今日、単に化学療法といった場合はがんの化学療法をさす場合が多い。
肺は柔らかい小さな袋(肺胞:はいほう)の集まりで、その中に空気をたっぷり含んでいます。小さな袋の壁は大変薄いのですが、その中にいろいろな細胞とともに血液を含む血管が含まれています。私たちは、無意識のうちに肺の中に空気を出したり入れたりしていますが、肺の中では肺胞の薄い膜を通して、空気から血液中に酸素が入り、逆に老廃物である二酸化炭素が空気中に放出されています(いわゆる肺呼吸)。
"間質性肺炎"は何らかの原因(関節リウマチ、皮膚筋炎、全身性強皮症などの膠原病、なんらかの物質の吸入、薬剤など)で肺胞の壁の中や周辺に"炎症" (皮膚で言えばやけど、肝臓で言えば肝炎のようなもの)が起こり、細胞やコラーゲンなどが増加し壁が厚くなる病気です。そのため咳が出た り、酸素がうまく取り込めなくなり息苦しくなります。一過性の場合もありますが、"炎症"が治った後も傷が残り肺が固くなる場合があり、更に不可逆的に増悪し、肺がどんどん固くなり膨らみにくくなり、呼吸が維持出来なくなる場合もあります("肺線維症"と言われますが、皮膚で言えばケロイド、肝臓で言えば肝硬変のようなもの)。
http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/076.htm
がんの病状進行程度を表す。ステージIは肺内に癌が限局しておりリンパ節に転移がないこと。ステージIIは肺内に癌が限局し肺内のリンパ節にのみ転移があるか、リンパ節に転移ないが癌が直接肺外の切除できる周囲に拡がっていること。ステージIIIは他の臓器に転移はしていないが、ステージIIより進んだ状態と言えます。ステージIVは他の臓器に転移している場合。
炎症反応が強い疾患に対して、副腎皮質ホルモン製剤を大量・間歇的に投与することで救命をはかること。
植物成分由来の注射剤。非小細胞肺癌治療の標準薬。
肺がんは2つの型に分類できます:小細胞(しょうさいぼう)肺がんと非(ひ)小細胞肺がんです.各型のがん細胞は異なった様式で成長して広がり、異なった治療をされます.多くの非小細胞肺がんは以前の喫煙や受動喫煙そしてラドン(放射性気体元素)暴露に関連しています.非小細胞肺がんの主な種類はがんの細胞の型によって命名されています:扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん、腺(せん)がん、大細胞(だいさいぼう)がん、腺扁平上皮がん、そして未分化(みぶんか)がんです.非小細胞肺がんはよくある病気です.通常外科療法(手術でがんを取り除く)あるいは放射線療法(がん細胞を殺すために高照射量のレントゲン線を用いる)で治療します.しかし、化学療法(抗がん剤)が用いられる患者さんもいます.
http://www.akiba.gr.jp/tcp/nsclc-pt.htm
診断後、初めておこなう治療。標準的な治療技術と認められたものと、同等以上でない投薬は実施すべきではない。他の治療をおこなった後おこなう治療を、セカンドライン、サードラインとよぶ。
白金を含む化合物で、一般名ではシスプラチン、パラプラチン、ネダプラチンの3つが該当。注射剤。非小細胞肺癌治療の標準薬。
細胞の中の特定の分子を働かなくするように(つまり標的に)に設計された薬。がん細胞で特異的に変化または変動している分子を標的にすれば、抗がん作用が期待できる。学術的な定義ではなくマーケティング用語。
使用する化学療法剤の種類・組み合わせと、使用方法(投与量や投与スケジュール)をセットにした考えかた。
症例報告書。臨床試験のデータ収集では、試験毎にCRF(Case Report Form)と呼ばれる試験を受けた患者の情報を記載する記録用紙が作成される。
2000年から2001年に国際共同試験としておこなわれた、2つの第二相臨床試験。試験全体として、延命効果が証明できなかったが、サブグループ解析で東洋人・女性・腺がんに効果がある可能性を示した。
2000年から2001年に、標準治療薬に上乗せした時の延命効果を調べた臨床試験。ゲムシタビン・シスプラチン・パクリタキセル・カルボプラチンに追加したが、延命効果がみられなかった
アメリカの承認条件を受けて2003年から2004年におこなわれた国際的な第三相試験。この試験で延命効果が認められなかったため、アメリカでは新規患者への投与が認められなくなった。
放射線化学療法後の維持療法としての効果を調べた、アメリカの第三相試験。延命効果が証明されなかっただけでなく、プラセボ(偽薬)投与群と比較してイレッサ投与群の生存期間が著しく短いという結果が出た。
2002年にイレッサが日本で承認された時、承認要件とされた市販後第三相試験。2003年から2006年におこなわれた。対照とした標準治療薬ドセタキセルに対する非劣性を証明できなかった。
2008年に報告されたイレッサの市販後第三相試験。アジアでおこなわれたが、対象患者のうち日本人は20%。全生存期間ではなく無増悪生存期間で判定をしており、臨床的有用性の証明には不十分なもの。
プルーフ・オブ・プリンシプル、「原理の証明」。実際にヒトの体内で、その薬が標的とする分子に対して、本当に正しく作用しているかどうか。
動物実験の一つ。「単回投与毒性試験」と「反復投与毒性試験」の2種類がある。
事柄。副作用の発生や治癒など、治療にともなって起きたこと。
原因と結果との関係。病気が治ったことが薬を投与したために起きたことか、別の治療法によって治ったり、自然治癒でないかどうかを臨床試験で明らかにする。
医薬品の効果を評価するための項目。延命効果など治療にもっとも大切なものがプライマリーエンド・ポイント(真のエンドポイント)。腫瘍の縮小効果などは代理エンドポイント。
比較対照の薬と比べて生存期間が長くなること。
疫学的研究において、薬を投与された人の集団と、投与されてない人の集団を分けて比較するが、その集団を「コホート」とよぶ。両方の集団がともに偏りがなく、もとの患者集団を代表していることが大切。
臨床試験の試験計画によらず、後から追加の解釈をすること。全体で効果がみられなくても、被験者を小グループに分けると統計的に優位な差があると主張すること。探索的な研究としては価値があるが、その仮説を実証する新しい臨床試験を実施しなければ、医療現場に持ち出すことは適切でない。
委託者から経費の提供を受け、大学や研究機関が共同研究をおこなう。研究結果の報告は義務。
大学が学術研究症例の目的で企業から研究費を受け取ること。研究結果の報告は任意。
人間に対して試験をおこなう前に、動物を使って安全性と有効性の試験をおこなう。前臨床試験ともいう。一般毒性試験、生殖発生毒性試験、遺伝毒性試験などがある。
比較対照薬と比べて同等であることを証明する臨床試験。非劣性が証明されないということは、比較対照薬より有効性が低いことを意味する。
医薬品の試験をおこなうとき比較対象として投与する薬剤。薬効のないものを投与することが本来だが、倫理上の問題で治療効果が証明されている薬剤を対照薬とすることも多い。
標準治療計画のことで、薬品名、基本投与量、投与間隔が示された治療の設計図
プロスペクティブ=前向き、アウトカム=成果。プロスペクティブ試験は、被験薬と対象薬と比較検討するために登録した被検者に対して期間を決めて観察し、有効性と安全性を評価すること。
病気の増悪がない生存期間のこと。全生存期間を見る試験と比較して、小さいサンプルサイズで短期間に結果が出る利点がある。しかし、正確に測定されず臨床医の恣意が入りやすい欠点をもっている。
有効性と安全性のバランスを総合的に評価すること。実際には経済性も判断基準に影響を与えている。
人の集団における薬物の使用とその効果や影響を研究する学問。
被験者を無作為(ランダム)に処置群(治験薬群)と比較対照群(治療薬群、プラセボ群など)に割り付けて実施し、評価を行う試験。
通常、言いにくいので、RCT と略すことが多いようです。
評価したい薬物または治療法が最も適正に評価される方法として、現在最もよく採用される試験方法であり、現在、医療現場で使用されている薬剤のほとんどはRCTでその有効性が証明されたものです 。
http://www.chikennavi.net/word/rct.htm
医薬品の承認審査や私用ガイドライン作成に関わる専門家が、企業から資金提供を受けていることで、規制内容にゆがみが出ることを避けるように規制をしている。
承認までに第1〜3相の人に対する試験をおこなう。第1相は健常な成人で体内における薬の吸収・分布・代謝・排泄を調べる。第2相は人における至適投与量をさぐる。第3相は、比較対象薬と効果や安全性が優れていることを検証する。
EAP(Expanded Access Program)は、未承認の医薬品を希望する患者に供給するシステム。イレッサは承認に向けて臨床試験をおこなっている間に、臨床試験対象者より多くの患者に投与した。その中で間質性肺炎の死亡例もあったが、承認審査の時には軽視された。
アメリカの食品医薬品局(Food and Drug Administration))。アメリカの医薬品規制当局。
厚生労働省で以下の業務を担当する。
1. 医薬品等の安全性の確保に関する企画及び立案に関すること厚生労働省で以下の業務を担当する。
1. 医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具の製造業及び輸入販売業の許可並びに製造及び輸入の承認や生産に関する技術上の指導監督。
2. 医薬品・医療用具の再審査及び再評価に関すること。希少疾病用医薬品及び希少疾病用医療用具の指定。
承認直後の副作用死多発を受けて、2002年12月から厚労省が招集して安全対策を検討した会。また、ISEL試験の結果を受けて2005年には、ゲフィチニブ検討会が開催され、安全対策を検討した。
ISEL試験の結果を受け、2005年1月から4回にわたり、イレッサ使用に対する対応策を検討した医薬食品局安全対策課の検討会。日本肺癌学会の「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」に従って、臨床使用を続けることを容認した。
厚生労働省の承認審査で、発売を遅らせるまでもないが市販後に解明することを義務として、条件づきで認めること。イレッサは、市販後第三相試験が条件であったがその結果がまとまったのは、承認後4年もかかるなど、実施確認が弱い。
イレッサ承認当時、国立医薬品食品研究所に置かれていた、申請資料の調査と審議会に出す報告書作成を担当していた施設。専門的知識を持つ職員がチームで審査していた。
現在は、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構が、その仕事を担っている。
市販後に、使用する全患者を登録し、副作用の発生状況をメーカーが集約して厚労省に報告すること。承認条件として指示される場合と、企業が自主的におこなう場合がある。1995年に臨床試験中の死者が多かったことから抗がん剤の塩酸イリノテカンに承認条件が付けられたのが初めて。
医薬品は承認申請資料にもとづき、臨床試験で有効性と安全性が認められた疾病に対して適応範囲が決められる。健康保険で使う薬剤もこの適応制限のもとに使う
医薬品に付属する文書。効能・効果、用法・用量、使用上の注意が記載されている。メーカーが勝手に記載内容を決めるのでなく、製造承認時の情報や使用後調査の結果に基づき、厚労省の指導のもとに作られている。安全性情報のうち重要なものは、文書の先頭にワクつきで記載し、注意をひくようになっている。
イレッサ承認当時は、がんなど難病の薬については、第三相試験まで実施せず、第二相試験までで承認し、市販後に第三相試験をおこなうことが広く認められていた。いわば、仮免許で発売されている状態。
観察すること。
健康保険で使うことができる薬品の表に公定価格を決めて収載すること。この表にのっていない薬品は製造承認がされていても保険診療において使えない。また、この表にのっている価格で使用した医療機関は保険請求できる。
新薬は、この審議会の部会で承認申請書、審査報告書を審議して製造承認される。外部の医学・薬学の専門家が委員として任命されている。
治療薬が少ない分野の薬などの審査を優先して進めること。この方式で、イレッサは5カ月間という、前例のない短期間で承認となった。
「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行う」ことを目的とした法律。医薬品を製造販売する者が規制対象となる。
この法律により、医薬品は有効性があり安全であることが証明できなければ、製造・販売を行えない。また、国は販売承認審査、市販後の安全管理により国民の健康を守る責任がある。
明治以来、品質の不良な医薬品の取り締まりから始まり、「万病に効く」といった誇大な効能表示の制限、効果が強くて危険な毒薬・劇薬の規制といった面で役割を果たしてきた。
サリドマイド薬害の教訓から、承認資料の充実と審査の厳格化にむけて整備がはかられた。スモンの闘いにより、1979年には「安全性の確保」が目的にくわえられるとともに、関連法案として「医薬品副作用被害救済基金法」がつくられた。
近年は、医薬品の研究開発振興を目的とする改定が増えている。薬害エイズのあと、製薬企業の振興をはかる部門と、安全管理をおこなう部門とが分けられた。しかし、実務をおこなう部隊を外郭団体に任せるなど、国の管理責任が弱まっている。
新薬の開発では、バイオ技術の発展などで今までにない作用機序の薬が開発されるようになっている。また、がんなど難病に効く薬の開発では、効果と有害作用のバランス判断が難しい場合が出ている。
規制緩和の動きにあわせ、薬剤師でなくても販売できる薬をつくるなど、消費者の自己責任に任せる方向に進んでいる。
訴訟によらず迅速に副作用被害者を救済するために給付金を支給する仕組み。「医薬品副作用被害救済制度」「生物由来製品感染等被害救済制度」の2つの制度を、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(総合機構)が運用している。賠償責任によらず、企業が社会的責任でお金を拠出し、給付する保険制度のような位置づけ。
入院を必要とする程度の副作用や、障害を残すような健康被害を受けた者は、診断書を添えて総合機構に請求する。申請をうけると厚生労働省の薬事・食品衛生審議会が、医療機関の過失による健康障害など医薬品が適正に使用されなかったためではないかを判定する。
2005年度の請求数は760件、給付は836件、15億8,757万円である。医薬品製造業者が負担する拠出金は、前年出荷額の1000分の0.3。国に報告された副作用報告数と比べ、制度の利用が少ない。
被害発生から20年以上をかけて解決したスモンの解決にあたり、西ドイツの制度を参考として1979年、医薬品副作用被害救済基金が創設された。薬害エイズとヤコブの解決をうけて、2004年生物由来製品感染等被害救済制度が同様な仕組みとしてつくられた。
制度が患者・医療従事者に知られていないこと、被害者本人が申請する方式なので書類の準備など敷居が高い、医療機関の責任事故を判定しようとするため医師の協力が得にくいなど、利用が進まない問題の改善が望まれる。また、抗がん剤など適用除外薬品の制限をはずすべきである。健康被害を受けたのは患者の責任でないのに手間をかけさせる制度は改善する時期に来ている。