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薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会議事録
(タルセバ部分 抄)

会議情報

1.日時及び場所

 2007(平成19)年 7月25日(水)  14:00〜
 厚生労働省共用第8会議室

2.出席委員(12名)五十音順

 新井 洋由、飯沼 雅朗、◎池田 康夫、庵原 俊昭、
 守殿 貞夫、竹内 正弘、 田村 友秀、早川 堯夫、
○堀内 龍也、三瀬 勝利、 溝口 昌子、山口 一成
 (注)◎部会長 ○部会長代理
 他 参考人2名
 欠席委員(4名)
 上原 至雅、岡 慎一、土屋 文人、前崎 繁文

3.行政機関出席者

 黒川 達夫(大臣官房審議官)
 中垣 俊郎(審査管理課長)
 豊島  聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
 川原  章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
 森  和彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
 佐藤 岳幸(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長)
 坂本  純(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第二部長)
 望月  靖(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長)
 山田 博章(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第四部長)
 田中 克平(独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査部長)
 三澤  馨(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全部長)  他

4.備考

 本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

議事録

○審査管理課長 それでは、薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会を開催いたします。  本日は、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。当部会委員数16名のうち、12名の委員に御出席をいただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。なお、本日は上原委員、岡委員、土屋委員、前崎委員から御欠席の連絡をいただいております。
 本日の審議事項に関して、参考人の先生に御出席いただくことにしております。議題1の「rHSA原液」等について、高橋孝喜 東京大学医学部付属病院輸血部教授に御出席いただくことにしておりますが、先生は後ほどいらっしゃる予定です。議題2の「タルセバ」について、藤原康弘 国立がんセンター中央病院臨床検査部長に御出席いただいております。
 加えて、事務局の異動について御報告します。医薬食品局安全対策課の松田課長、医薬品医療機器総合機構の新薬審査第四部の山田部長、安全部の三澤部長が出席しております。
 それでは、本日の議事進行をお願いします。なお、カメラ撮りはここまででよろしいでしょうか。

○池田部会長 皆さん、お暑いところお集まりいただきましてありがとうございます。
 それでは、事務局から配付資料の確認と、資料作成に関与された委員及び利益相反に関する申出状況について報告をお願いします。
○事務局 資料の確認をいたします。本日席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配付しております。議事次第に記載されている資料1〜7は、あらかじめお送りしております。このほか、資料1-2として議題1に関する「添付文書案」、資料8「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料9「専門委員リスト」を配付しております。 続きまして、平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づく、資料作成に関係された委員の確認です。議題2の「タルセバ」について、田村委員が資料作成に関係されているとの御報告をいただいております。
 本年4月23日の薬事分科会申合せに基づく、利益相反に関する申出については、議題1「rHSA原液」について退室委員が池田委員、議決には参加しない委員なし、議題2の「タルセバ」については退室委員なし、議決には参加しない委員は、池田委員、堀内委員です。
 したがって、議題1は部会長代理の堀内先生に、議題2は薬事分科会規程第5条第1項において、部会長及びその職務を代理する者のないときは、当該部会員のうちから選任された者が、仮に議長として会議を開くことができるとされておりますので、御選任をお願いします。

○池田部会長 委員の皆様には大変御迷惑をおかけして申し訳ありませんが、ただ今の説明にもありましたように、自薦あるいは他薦で、どなたか議長として会議を開いてくださる方はいらっしゃいますか。どなたか御推薦いただけますか。事務局から何か案はありますか。
○審査管理課長 事務局としては、今までの知識と経験から、早川委員にお願いしたらどうかと考えます。
○池田部会長 ありがとうございました。ただ今、事務局から早川委員にお願いしてはどうかというお話がありましたが、委員の皆様よろしいでしょうか。
 御異議がありませんので、早川委員には議題2の議事進行をお願いします。よろしくお願いいたします。ほかに、事務局から何かありますか。
○事務局 本日の議題1「rHSA原液」については、参考人の高橋先生が3時ころに到着されることから、審議事項の議題2、報告事項の終了後に御審議いただきたいと考えております。よろしくお願いします。

○池田部会長 本日は、いつもと少し違った形になるかと思いますが、審議事項は2議題、報告事項が2議題となっております。
 それでは、議題2から始めます。議題2の審議については、早川委員に進行をお願いします。
○早川委員 御指名ですので、僭越ではございますが進行係を務めさせていただきます。なお、田村委員は本議題に関与されておりますので、本議題の審議の間、別室で待機いただくことといたします。
── 田村委員退室 ──

○早川委員 議題2について、医薬品医療機器総合機構から概要の御説明をお願いします。
○機構 議題2、資料番号2、タルセバ錠25mg、同100mg及び150mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
 タルセバの有効成分であるエルロチニブ塩酸塩は、腫瘍の増殖に関与すると考えられるEGFRチロシンキナーゼを阻害する抗悪性腫瘍剤です。本剤と同様の作用機序を有する抗悪性腫瘍剤として、国内ではゲフィチニブが承認されております。
 非小細胞肺癌の罹患者数は、約7万人です。このうち、切除不能の進行・再発の非小細胞肺癌の患者には、延命効果を期待して、白金製剤を含む化学療法が標準治療として実施されており、標準治療が無効な患者では主にドセタキセルが用いられています。本剤は、標準的な化学療法が無効であった患者に使用した場合に、延命効果を示す薬剤として申請されました。
 なお、本剤は優先審査の対象とされ、海外においては非小細胞肺癌患者を適応として、米国、欧州等83か国で承認されております。
 本剤タルセバの海外での承認時期は米国では2004年11月、欧州では2005年9月であり、また、類薬のゲフィチニブは米国では2003年5月、日本では2002年7月に承認されているところです。
 本品目の専門協議に御参加くださいました専門委員は、資料にございますとおり、14名の委員です。
 品質、毒性、薬理、ADMEについて大きな問題は認められませんでした。
 主な臨床試験成績としては、海外で実施された三つの第III相試験及び、国内で実施された第I相試験と二つの第II相試験が提出されました。
 海外第III相試験のうち、一つの臨床試験結果からは、標準的な癌化学療法が無効であった患者に本剤を単剤で用いた場合に、プラセボ投与群と比較して全生存期間の延長が認められました。一方、他の二つの海外第III相試験では、標準的な化学療法への本剤の併用が、全生存期間を指標として検討されましたが、いずれの試験結果においても、本剤の上乗せ効果は認められませんでしたので、機構はこの点が明確となるような効能・効果を設定いたしました。
 安全性については、間質性肺炎をはじめとする間質性肺疾患、皮疹、出血、肝機能障害及び眼障害等の副作用が生じており、これらの副作用について十分に注意する必要があると考えております。
 機構は、これらの副作用については専門医による慎重な観察と適切な対応が必要であると判断しております。また、本剤の延命効果が示された海外第III相試験での本剤群における間質性肺疾患の発現頻度は2.7%であったのに対して、本剤の国内臨床試験での間質性肺疾患の発現頻度は123例中6例、すなわち約5%であり、製造販売後における安全性に関する最も重要な事項と考えております。
 したがいまして、機構は、本剤の承認に際して、十分な製造販売後の対応を行うことが必要であると考え、治療開始初期に患者を入院又は入院に準じた環境下において慎重な観察を実施すること、適正使用の推進、全例調査による間質性肺疾患等の重篤な有害事象の収集及び迅速な情報提供が必要と判断し、申請者に指示を行っております。
 以上の審査の結果、機構は、「切除不能な再発・進行性で、癌化学療法施行後に増悪した非小細胞肺癌」の適応について、本剤を承認することは可能と判断いたしました。
 本剤は、新有効成分含有医薬品であり、再審査期間を8年とすることが適当であり、原体及び製剤は劇薬に該当すると判断しました。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しました。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○早川委員 ありがとうございました。本剤は、EGFRチロシンキナーゼを阻害することにより、EGFRの自己リン酸化を抑制する、下流の細胞内シグナル伝達を阻害することで腫瘍の増殖を抑制するというコンセプトで開発された医薬品です。
 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○堀内部会長代理 本剤は、基本的にはゲフィチニブとほとんど同様な作用機構と有効性を持っている薬剤だと判断をしておりますが、ゲフィチニブとの差異があるとすればどういうところにあるかということと、この間のゲフィチニブの間質性肺炎等の副作用についての検討で、すでに本剤も同じように間質性肺炎が起こる可能性が治験の段階でも現れているので、その点については十分な注意が必要だと思います。
 もう一つお尋ねしたいのは、EGFレセプターの遺伝子変異の問題です。出ているデータの一番中心になっているBR.21においても、変異のある患者には有効性が高いというデータが出ていると思います。審査の中では、変異があるかどうかで必ずしもそれを区別する必要はないという結論になっていると思いますが、私自身はある程度縛りをつけたらどうかと考えます。その点については、いかがでしょうか。要するに、変異のある患者に使う、あるいは極力変異があるかどうかを確認してから使うと。専門委員の議論の中では、不要な変異のチェックはやらないようにというような議論がされているようにも思われますが、その点についてはいかがでしょうか。
○早川委員 ただ今の御質問は3点あったと思いますが、一つはゲフィチニブとの差異、次に副作用、中心的には間質性肺疾患様事象発現等の安全性の問題を今後どのように取り扱っていくか、それからEGFRの遺伝子変異との関係で本薬をどのように適応していくのかです。一つひとつお答えをお願いします。
○機構 1点目ですが、ゲフィチニブとの薬理的な作用機序の差異です。審査報告書の20ページ以降に、この点については、申請者の見解とそれに対する機構の見解を記載しております。まだ不明な部分も多々ありますが、20ページの下の表が、ある程度簡潔にサマリーされたものかと思います。臨床面では、こういったゲフィチニブとエルロチニブとの比較を行った検討がありませんので、ヒトでの臨床効果についてはお答えすることはできませんが、薬理学的な検討については、この20ページの表にサマリーされているというのが答えになるかと思います。
○堀内部会長代理 基本的には、あまり差がないと考えてよろしいですね。
○機構 基本的にメカニズムに違いはないのですが。

○堀内部会長代理 EGFレセプターに対するアフィニティ等についても、あまり差異がないと捉えていいですね。
○機構 22ページの審査報告書の2)の上に、こちらの見解として記載していますが、現時点ではゲフィチニブとの腫瘍抑制効果の違いについて十分な考察・結論ができないと考えます。ただ、薬理試験における本薬とゲフィチニブの腫瘍増殖抑制強度の違いについて検討した細胞株における本薬の細胞増殖抑制活性はゲフィチニブに劣るものではないところを確認したという状況です。
 2点目、ILDの現状と今後の対応ですが、ILDについては、先ほど申し上げたとおり現時点で123例中6例が出ています。臨床的な危険因子の検討結果は、現時点では海外でも国内でもなされていないというか、まだ不明といった状況です。
 臨床的な患者背景因子等の危険因子があるかどうかについては、国内では製造販売後に全例調査の形で全例患者の情報を収集していくのですが、その中でILDの発現状況を見て、必要な段階ですぐに臨床的な危険因子の同定をできるような、違う調査若しくは試験をやっていくことを考えており、会社にはそのように指示を行っております。
 具体的なところは、現時点は危険因子が明確でない中、添付文書の警告2番では間質性肺疾患に関する注意事項を記載しましたが、投与初期は入院又は入院に準じた環境下で、患者を専門の先生にしっかり患者を診ていただくよう、注意喚起を行っております。

○堀内部会長代理 今の点について、年間予測が8,000例となっていますね。肺癌の患者で、新しく出てきて化学療法をやって効かなかった患者の大多数についてタルセバを投与するという想定になるのではないかと思いますが、それを今のような形でやろうということで大丈夫でしょうか。要するに入院をして投与をすることが可能かどうか、そして、かなり多様な医療機関で投与をすることになるのではないかと危惧されますが、いかがでしょうか。
○機構 製造販売後に関しては、流通管理という言葉が適切かということがありますが、かなり厳密な流通管理を行っていく予定にしています。医療機関を、こういった肺癌の治療を専門としている先生方がいらっしゃる施設に限定していく形で、施設限定をかけていくところはもちろんなのですが、この薬は経口剤であることもあって、名称は変わるかもしれませんが患者確認カードを導入することを、現在会社としては考えています。
 具体的には、主治医が全例調査に登録している場合には、会社から患者確認カードを先生に渡し、先生がその患者に患者確認カードを渡すと、患者は院外で処方を受ける場合でも、その確認カードを持って薬局に行くことになります。そこで薬局の薬剤師が、患者確認カードを持っているということで全例調査に登録していることが分かる仕組みを作って、本当の意味での全例を網羅することを考えています。
 ちなみに、患者確認カードを持っていない患者が来た場合には、処方した主治医が分かるので、薬剤師の方から会社にそこの医療機関等を伝えて、全例調査に協力してもらうといったところまでの段取りを会社は計画している状況です。
○池田部会長 今の説明なのですが、患者確認カードというのを、実際どういう施設にどの医師に配るかということですね。普通は全例調査というと、施設を限定して、その施設にしか薬剤がいかないので、100%近く把握できる状況ができると思うのです。この場合だと、患者確認カードを、施設に限って言えばその施設の医師しか出せないので、ほかの薬局はそれを持っていない患者には院外処方も切れない状況になると思うのです。その辺りはどのように担保されるのか、そこは少し難しいのかと思うのです。
○審査管理課長 審査報告書の93ページ、「(2)安全監視対策について」を御覧ください。中ほどに三つあって、主な医療機関は大体このような所で、すなわち癌診療連携拠点病院や日本臨床腫瘍学会認定施設、日本呼吸器外科学会認定施設、日本呼吸器学会認定施設等を考えていることが書かれております。実際上は、全例調査を義務づけるわけですから、当然のことながらこれを納入する医療機関というのは、ある面で申し上げますとこのようなことを基準に選定をして情報提供し、その上で納入をしていくということで、そこは確実に押さえられるだろうと考えております。
 また、使用上の注意の警告を見るとお分かりのように、基本的には入院をするということで考えていますので、そういう意味では、大方は入院で処理されるのだろうと思います。ただ、一定期間入院したあとの外来、特殊な状況下の外来をどう考えるのか。外来と言ったとたんに、院外調剤薬局とのことを考えなければならない。すなわち、院外処方箋が書かれて、それによって投薬されるケースが出てくるのです。あまりこれが通常の投与の仕方になるとは考えておりませんが、その点についても十分な配慮が必要だろうと思います。
 どのような配慮をしていくかですが、院外処方箋を書くときには、それを処方する医師に患者確認カードを出してもらい、それを調剤薬局で確認してもらう。院外処方箋を持ってきたけれども、患者確認カードを持たない人が持ってきたときには、製造販売企業に薬局から連絡をしてもらって、製造販売企業から調査をしてもらうという一連のルートを構築しようということです。もちろん、これを構築するためには、一つには関係する学会の方々に御協力をいただかないといけません。また、院外処方箋を調剤する方々にも御協力をいただかなければいけないし、製薬企業にはそれを義務づけなければなりません。したがって、大体そのような方針で臨みたいと考えておりますが、そのようなことを前提とした上で御審議いただき、それが承認になるときには、我々の方から通知等をもって必要なお願い、企業への指示をしたいと思っております。

○池田部会長 実際的に、調剤薬局に卸すというか、それを全部把握することは、企業としてはできるのでしょうか。あるいは、それをある程度確認させるという指導はできるのですか。そこまでしないと、なかなか難しいと思います。
○審査管理課長 調剤薬局の方々、すなわち日本薬剤師会とは内々にお話を進めております。従来から全数調査を義務づけたものではアラバなどがあるわけですが、そういうときにも確認をして企業へ連絡するということで、御協力を願っております。
 今回は、それよりももう一段引き締めた形で、患者確認カードの厳格なチェックと、患者確認カードを持ってこなかった患者がいた場合に、それを処方した医療機関の名前と処方医の名前を、患者を確認するために企業に連絡する態勢を取っていただく。それを取っていただくことが、院外処方によってこれを供給できる態勢として必須ではないかということを確認しており、今のところ基本的な御了解を得ている状況です。
○池田部会長 ありがとうございました。おそらく、経口でこのように強力で、かつ、ある程度リスクがある薬剤が、これからたくさん出てくる可能性があると思うのです。今までは、抗腫瘍剤というと注射でやっていたものが多いわけですが、これからの方向としては、経口でもかなり強力、しかしリスクも否定できない薬剤がたくさん出てくる可能性があると思うので、今の傾向から言うと、調剤薬局なり薬局の方にも、その点をしっかり指導していくことがものすごく大事だと思います。あるいは、企業がそういう認識をしていただかないといけないのかと思って発言しました。
○早川委員 ありがとうございました。実際に薬を供給するのは企業ですから、まず、所定の病院にそこをしっかりさせる。また、薬局に院外処方が回っても、最終的には企業がそこに薬を供給する形になるので、そこの道筋をしっかり企業として態勢をとっておくということかと思います。行政的には、薬剤師会等いろいろな所に、今おっしゃったような方策を徹底していただくといった形で、このような注意深く扱わなければいけない薬に対する対応を取っていくという理解でよろしいかと思います。
○機構 先ほどの堀内部会長代理の3点目の質問で、EGFRに関連する遺伝子変異や、その蛋白発現と、本剤の有効性の話ですが、審査報告書の67ページ以降に、この点についての検討結果などを記載しております。ゲフィチニブについては、公表論文等がたくさん出ていますが、EGFR遺伝子変異の有無及び遺伝子コピー数が、有効性として腫瘍縮小効果や生存期間に影響を与えるという報告が確かにあります。
 本剤については、ピボタルな試験であったBR.21試験の結果を68〜69ページに記載しております。御質問のあったEGFRの遺伝子変異についてですが、確かにNew EnglandJournal of Medicineで公表論文になっているところもあるのですが、まだ検討している症例数も少なく、現段階で患者をEGFR遺伝子変異のありなしなどで制限することができるまでのエビデンスは、現在は得られていないと機構は判断しております。ただ、興味深い結果であることは事実なので、もちろんEGFRの遺伝子変異、若しくは蛋白発現、コピー数といった点に着目して検討を継続していく必要があり、その点は申請者にも指示を行っております。

○堀内部会長代理 極めて類似した医薬品ですので、イレッサの教訓をできるだけ活かした形で承認審査をしていくことが大事かと思います。イレッサの場合もそうですが、今回のBR.21の論文を見ても、遺伝子変異がある場合には16%くらい有効性があり、ない場合には7%くらいとなっていて、かなり明確に違いがあると思います。確かに、変異がなくても有効な場合がある事は、イレッサでも同じように議論をされてきましたが、数パーセント有効であればそれを医薬品として承認するかどうかという議論もあると思います。20%くらい有効であれば、今の抗癌薬の状況から言うと承認されることは十分価値があると思うのですが、数パーセントの場合どう評価するかは、いろいろ議論のあるところだと思います。
 そういった観点から、少なくとも今はEGFレセプターの遺伝子変異のアッセイについても、SMAP法というものがあって、感度も癌細胞が100分の1くらい入っていれば、1時間くらいでアッセイできるようなシステムが確立しているので、イレッサが議論されていた状況とはかなり変わってきております。できれば、変異を調べてから投与をする方向性が取れないかどうかをお尋ねしたいと思います。
○機構 残念ながら、EGFRの遺伝子変異について、本剤の有効性を検討したデータがない状況です。New England Journal of Medicineでも出ているのですが、これは奏効例数がこの程度だったというデータしかないこともあって、生存に関する検討結果というわけでもありません。また、遺伝子変異についても、もちろん研究が進んで、最新の状況ではということはあるとは思うのですが、バリデーションとされた標準化されたものが、現時点では全国でやられる状況でもありません。
 後半はプラクティカルな面の理由になってしまうのですが、機構の判断としては、現時点で得られているBR.21試験という生存期間についての有効性を示した試験において、EGFR遺伝子変異が調べられた検討症例数がこの表にあるような少ない数で、かつ、奏効に関するデータは、その表の数値しかない状況ですので、EGFR遺伝子変異のありなしで対象を制限するだけの材料がないと判断しています。ただ、もちろん今後海外でもタルセバを用いた試験が、EGFRの遺伝子変異ではないですが、蛋白発現の有無に着目した第III相試験なども行われていますし、そういったデータも見ながら、将来的にはどうなるか分かりませんが、現時点では制限するだけのエビデンスはないと考えております。
○堀内部会長代理 先ほどからお話しているように、ゲフィチニブの教訓をできるだけ活かしたらいかがかと申し上げていますが、そのためにどのくらいの類似性があるかをお聞きしました。その結果、構造から言っても作用メカニズムから言っても、極めて類似していると言えるだろうと思います。
 確かに、BR.21試験は症例数から言うと十分ではありません。しかし、これが全く差がないのであれば、かなり違うだろうと言えると思いますが、同じような傾向が出ているということですし、ゲフィチニブの場合は変異のある患者の方がはるかに有効である事は明らかです。特に、東洋人で女性で変異のある患者は極めて有効率が高いというデータも出ているわけなので、そういうデータも評価に入れたらいかがかということをお聞きしたいと思います。
○早川委員 将来に向けての課題の話かと思いますが。
○審査管理課長 御指摘のとおり、先行する類薬の経験を活かすことは、承認審査をする立場にとって当然のことだろうと考えております。そういう意味では、今回の機構における審査についても、ILDの関係や臨床試験成績の評価の仕方等は、私としてはそれらの経験を踏まえたものではないかと考えております。そういう観点から、先ほど来御説明しましたように、全数調査をする、さらには全数調査をするときの院外調剤のやり方等々についても、ディスカッションを積み重ねてきたところです。
 今、委員から御指摘があったのは、審査報告書68ページで申し上げますと、端的に言うとEGFRの変異を検査することを、この指標の前提条件とするかですね。○堀内部会長代理 前提というか、義務づけるのがいいかどうか分かりません。ただ、できるだけそれを行ってから投与をする。要するに、患者には有効であることがかなり推定できるわけです。我々の病院では、イレッサの場合はすべての患者に対して行っていて、変異のある患者には、効く可能性があるからしてみませんかと説明しています。
○審査管理課長 言い方を変えると、承認にあたってEGFRの検査をできるだけやるようにと言うことは、基本的には義務づけることとそれほどの差異はないのだろうと思います。実際上、できるだけやるようにというのは、かなり強く受け止められるとすると、それは義務的にも捉えられるわけですが、いずれにしても、先生の御主張は、EGFRの検査をリコメンドするようにということだと思います。リコメンドする限りにおいては、EGFRが不明な状態にあるのかどうかは分かりませんが、陽性の患者に投与を絞ることと同義なのだろうと考えます。
 私が存じ上げている限りでは、カナダ等いくつかの国でEGFRが陽性、または不明の患者に投与することを明確にしている国があったと思います。それにおいても、不明というところがあるということは、検査をリコメンドする、あるいは義務づけるところまで行っていないのではないかと考えます。この点について、藤原参考人、臨床の現場としてEGFR変異の検査をリコメンドする、または投与の対象を今回のデータから見て、EGFR陽性に限定することについて御意見をいただければと思います。
○藤原参考人 がんセンターの藤原です。今の御意見ですが、審査報告書の69ページの表を見ると、EGFRのミューテーションのありなしで、生存のHazard Ratioはそんなには変わっていません。それから、海外の、例えばNCCN(National ComprehensiveCancer Network)のガイドラインが今年出ていますが、非小細胞肺癌の治療法に関するガイドラインを見ても、必ずしもEGFRミューテーションの有無で投与しなさいと書いてあるわけでもありません。総合的に、今承認の段階で、ミューテーションの有無で投与機会を患者から奪ってしまうのは、私ども現場でたくさんの患者さんの声を聞いていると、厳しいかという印象を持ちます。むしろ、市販後のところでしっかりその辺りの情報を収集していただく。
 ただし、先ほど機構の方がおっしゃったように、ミューテーションをチェックするシステム、機器や試薬のバリデーションは非常に大事で、その辺りがしっかりバリデートされたもので検査をして、例えばGLPの対応で検査したデータなどが大事で、その辺があまりはっきりしない段階で市販の検査でやって、その結果で、患者には投与しないという判断をしてしまうことに、今は困った話になってしまうと思うので、全例調査の段階あるいは再審査期間の段階で、その辺をしっかり情報収集した上で見直しをかける、あるいは早いうちに見直しをかける方が、私どもとしては助かると思います。
 もう一点は、この審査報告書はNew England Journal of Medicineの公表論文からのデータで、実際にファイナルスタディレポートのような、企業が解析した結果でどのように記載されているのか、不明なところも気になります。というのは、後半、いろいろ審査報告書を見ましたが、QOL評価などもNew England Journal of Medicineのペーパーでは、QOLはポジティブとたしか出ていたと記憶するのですが、興味を持ってFDAの審査報告書の方を見ると、実際に企業がFDAに提出している資料ではQOLの差がなかったり、公表論文と実際のGCP等を踏まえた申請資料との齟齬があって、必ずしも闇雲に公表論文のデータだけを信頼するのも危険なところがあるという印象を持ちました。審査の際の添付資料としてちゃんとついているものでの議論のほうが無難かと考えました。
○庵原委員 25ページの上のデータですが、この薬の機序として、EGFRが必ずしも関係していない機序があると記載されています。118〜119ページに、長期生存のデータがあるのですが、119ページのデータはEGFR発現の陰性、陽性で長期生存に有意差が出ていないデータです。単変量で0.749で、多変量で0.520という結果ですが、これは、この薬の作用機序はEGFRディペンデントではないというデータを逆に表しているのではないかという印象を受けるのです。
 そうすると、今の御指摘の事項は、逆にないほうがいいのではないかと読めるのですが、この点はいかがでしょうか。ないしは、あまり制限しなくてもいいのではないかということを指示するデータと解釈していいのではないかと思うのです。この点の御検討をお願いします。
○早川委員 機構の報告書によると、まず、この薬剤は必要とされていると。それはよろしいですね。これは、たぶん否定的ではないと思います。EGFRの変異との関係においては、実際のデータから見ると、必ずしも明確な関係付けはなされていないと。ただ、こういう条件でやれば有効性があるというデータはあると。したがって、そのデータの上に乗って承認の方向にいこうという趣旨で、この薬剤自体は、チロシンキナーゼ阻害剤というコンセプトはそうなのですが、実態のデータを見ると、そのメカニズムは働いているかもしれないけれど、それ以外のファクターもあるかもしれない。そのような状況の中での判断のように見受けられるのです。
○機構 おっしゃるとおりで、まだ解明されていない部分も多々あり、それはこの薬に限った話でもないといったところもあります。御指摘をいただいた審査報告書の25ページより前に、いくつかこのような検討事項を書いていますが、EGFRチロシンキナーゼ阻害以外の経路を介する機序も、もちろん可能性はあると思います。ただ、現時点でヒトで得られているデータでは、標準治療が無効であった患者という臨床的な対象患者にプラセボと比較してきたときに、この患者層で生存の延長が得られたというデータが貴重であることは間違いないと、そこまでに情報は限られています。
 EGFRに関する検討はもちろん大事で、イレッサのときにいろいろ文献で出てきたものを活かしながら、それと似たようなものなのか、あるいは全然別個なのかという検討が今後必要なことは重々分かっているのですが、現段階で得られているデータであっても、この患者層にこの薬を承認するメリットはあるのではないかと判断しました。
○堀内部会長代理 結構ですが、是非、市販後でその辺りを明確にしていただければと思います。
○早川委員 ただ今の件に関しては、こういう議論があったことを十分メーカーにもお伝えいただいて、これからのこの部会でのアドバイスということで、よろしくお願いします。

○守殿委員 もう少し易しい話ですが、錠剤が25mg、100mgと150mgがありますが、これはどういう使い分けをするのですか。小児に使うわけでもないと思いますし。というのは、抗癌剤は、一般的に適正量とされている量を減量した場合には、かえって副作用だけで効果が得られないものが結構多いかと思うのです。この薬の投与量は150mgになっていますが、100mgでも効果がどれくらい得られるのか、そういうデータはあるのでしょうか。
○機構 この薬の使い方としては、ピボタルの試験で行っていたやり方では、副作用の程度に応じて50mgずつ減量する形になっています。先生の御質問に直接のお答えになっていないかもしれないのですが、そういった減量の仕方でやった試験の結果が、先ほどの第III相試験だったということです。
○守殿委員 最後の方で、1年、2年経った状態で、50mgでもステイブルで効果が得られていたと、そのような症例があるということでしょうか。
○機構 ありました。最低投与量についての考察は、審査報告書の90ページに記載しておりまして、委員から御指摘いただいた内容については確認を行っております。
○守殿委員 50mgでも、継続投与してもいいわけですね。一応効果ありと考えると、そういうデータがあるということですね。
○機構 そのような患者がいたという状況にはとどまるのですが。
○守殿委員 一般的に考えると、投薬量を80%にするだけで相当奏効率は落ちるわけですが、これは高価な薬だと思うので、場合により効かない量を無駄に使うのはもったいない感じがします。
○審査第一部長 補足をします。審査報告書の90ページに、今担当の方から御説明しました1日最低投与量の図表があります。この中で、実際にBR.21の試験群では、50mgに減量後の投与日数、25mgの投与日数を含めるということですが、中央値でも87日、範囲としては2〜459日という状況が出ております。この結果等を踏まえて、私どもとしては、有害事象により1日50mgまで減量した場合でも有効性が見られないことはないと、非常に持って回った言い方ではありますが、一応有効性は否定しておりません。これが先ほどの御説明の趣旨です。
○守殿委員 添付文書の性状の絵なのですが、実物を見ても明らかな大きさの違いがあるのです。これは同じ大きさになっていて、何か誤解を与えそうなので、それなりの大きさに訂正したほうがいいのではないかと思います。
○審査第一部長 ありがとうございました。御指摘のとおり、我々も気づきませんでした。見かけ、同じ直径で書いていますので、区別するように指示したいと思います。
○守殿委員 用法・用量のところでは、「食事の1時間以上前又は食後2時間以降に」と書いてあるのですが、その下の用法・用量に関連する使用上の注意では、「食事の1時間前から2時間後の間の服用は避けること」となっていて、これを「食事」というものを抜いて頭で計算すると、食後1時間になるのです。同じ書き方のほうがいいのではないかと思うのです。食前1時間から2時間となると、食後1時間と考える人がいるのではないかと思います。こういう書き方をすると、いろいろな読み方があると思うのです。
○審査第一部長 その点については、誤解のないように変えたいと思います。
○守殿委員 食後空腹時でないと、薬剤の曝露時間が上がるわけです。副作用に関係してくるので、その辺りは使用する際に、明確に空腹時を狙った書き方をされたほうがいいのではないかと思うのです。
○審査第一部長 ありがとうございました。私どもは、ここはそういうつもりで読んでいなかったのですが、確かにそういう読み方もできるので、間違いのないような記載にしたいと思います。

○守殿委員 本剤は、患者さんには服用について非常に丁寧に説明しなさいとなっておりますが、本剤は、日本では治験中に3名の関連ありの死亡例があるのですね。ゲフィチニブの場合は、国内治験では何例くらいの死亡例があって、間質性肺炎が何例くらいあったのでしょうか。本剤では、3例中1例だけですか。治験というのは慎重に投薬されての結果だと思うので、市販された場合にどんどん多数例に使われ出すと、いろいろな階層や知識の医師が使うので、このようなことを守らなければ余計に間質性肺炎等の危険性が出てくると思うのです。投薬については更に厳しく指導していただくことを、メーカーにもお願いしなければいけないのではないかと思います。
○審査管理課長 その点は、御指摘のとおりだと思っております。この中でも、警告で、まず医療施設、あるいはそれに携わる医師を、十分な知識と経験のある方々に絞るということで、先ほど御説明した学会認定施設等を考えております。さらには、患者特定カードというのも考えています。
 さらには、効能・効果の書き方ですが、ファーストラインではないのだということを明確に読めるように効能・効果を書くとともに、念には念を入れて、使用上の注意にファーストラインでの有効性・安全性は確立していないことを書いて、セカンドラインとしてお使いいただくということで進めようとしております。もちろん、厚生労働省としても、関係学会や関係医療団体に、これの適正使用について特段の御注意をお願いしたいと思います。その上で、全数調査をやっていき、適宜報告をしていただき、仮に不幸にもILDの発症が多発するようであれば、先生方の御意見もお聞きしながら、必要な対策を講じていくことになっていくのだろうと思います。
 今の時点では、できうる限り、あるいは類薬の経験も踏まえて、あるべき姿を我々としては考えてきたところだろうと思っております。これを、今申し上げたような通知や医療現場の御協力をどのように得るのか、企業に厳格な指示を送るということで実施していこうと考えております。
○早川委員 よろしくお願いします。先ほどのゲフィチニブの国内治験での間質性肺炎の発現率、死亡の件ですが、今分からなければ、後日調査していただいて御報告いただくのでもいいと思います。
○機構 正確な数値かどうかを確認したいと思います。

○庵原委員 二つ確認したいのですが、1点は118〜119ページのHazard Ratioの多変量解析のCox回帰のデータの読みについてです。白金製剤を含む先行化学療法の有無で、ないほうが生存期間が伸びているわけです。このデータですと、スタンダードの白金治療をしたあとでこれを使うと、生存期間が延びないと読めるのです。このデータの読みと添付文書の説明との整合をどう説明されるのかが1点です。
 2点目は、現在、間質性肺炎が話題になっていますが、この薬と、先ほどから問題になっているゲフィチニブと、同じ投与をしたときの血中濃度に差があるのかです。
 更に追加の質問ですが、間質性肺炎の発症メカニズムが、血中濃度ないしは蓄積された投与量によって起こっているのか、それとも、ほかのメカニズムが起こっているのか、その辺りが分かっていたらお願いします。
○機構 1点目の白金製剤のことですが、効能・効果というか、位置づけとしては標準的な治療が無効な、ということで考えているのですが、BR.21試験では、審査報告書の87ページの効能・効果の欄で記載しております。BR.21試験の組み入れられた患者集団も、標準的な治療が無効であった患者ということで、そうなると、ほとんどの場合は白金が入るという状況で、実際、結果的に白金製剤の前治療歴を有しない患者は、本薬群では488例中34例、プラセボ群では243例中19例ということで、何らかの事情で白金が入らない場合もあり得るのですが、このようなパーセンテージの患者さんは白金が入っていないことになります。そういうわけで、数字が多い、少ないという話はできないのですが、白金製剤のデータがなった理由は、一つは症例数が白金製剤入りの人とない人では極端に違っているので、データの解釈に注意が必要な部分であろうかと考えました。
 とは言え、白金製剤が入らない患者も1割弱います。試験でも、その患者を含めて試験していますので、必ずしも白金製剤の入った人に限定することはできないと考えて、効能・効果では「癌化学療法施行後に」というような表現にいたしました。
 2点目ですが、ILDとPK若しくは蓄積性との関係なのですが、国内でも6例というところもありまして、お答えからすると、現時点ではっきりしたデータはありません。
○庵原委員 この薬とゲフィチニブと、同じように150mgを投与したときの血中濃度の差というのはあるわけですか。
○機構 比較したデータはございません。
○早川委員 動物のレベルでもないということですね。
○機構 現時点ではないと思います。
○早川委員 これから進めていく過程で、そういうことを測っていく計画は、特にはないですか、今のところ。両方を比較してというのはないのですね。
○機構 はい、ありません。現時点では見ておりませんのと、製造販売後の方に、そういったゲフィチニブも念頭に置いた上での血中濃度とか、薬物動態の話というのは、指示はしていません。
○早川委員 一般論として、ゲフィチニブの間質性肺炎、それのメカニズムは、まだ十分には解明されていないということですね。
○機構 さようでございます。
○早川委員 そういう答えですが、よろしゅうございますか。他に何かございますか。

○溝口委員 この薬の作用機序から当然かもしれませんが、副作用で発疹が96.7%と非常に高くなっております。幸い重症例は少ないようで、軟膏を塗るなどの対症療法とか、本剤の減量で対応していて、中止例が少ないようです。
 そこでお願いなのですが、市販後、副作用も全例調査されると思うのですが、ただ「発疹」と書いてあると、何のことだか分かりませんので、例えば角膜潰瘍が起こっていますので、皮膚の潰瘍も起こる可能性もありますし、全身に紅斑が起こることもあるのではないかと思います。せめて、投与してから何日頃、どこに何ができたと調べていただけると、そのデータを集積し、この薬でどのような副作用が出るかというのが分かって、早めに対応できます。全身が痒くなったり、痛くなったりする前に対応できて、減量後改善すれば、増量もまた可能であるのではないかと思いますので、皮疹の詳しい調査を、できればお願いしたいと思います。
 一番いいのは、添付文書の案の2ページに、「目の異常が現れた場合には、直ちに眼科的検査を行い、適切な処置を行うこと」と書いてあるのですが、ここに「皮膚科的検査」というのも加えていただけると、皮疹ではどのようなものができるのかというのが分かるのではないかと思います。抗癌剤の中では、ほとんどが非常に薬剤に特徴的な発疹を出すことがあります。それが分かっていると、すぐに対応できるのです。私、今癌研有明病院に非常勤で診療していますので、この薬ではこういう皮疹が出るということが分かり、しかも非アレルギー性でしたら、薬の効果があるときは、患者に話しますと、命に危険がないなら我慢してもらって治療を続けられるということにもなります。本薬剤での治療そのものにも役立つと思いますので、可能でしたらお願いしたいと思います。
○機構 御指摘を踏まえて、対応させていただきたいと思います。ありがとうございました。
○早川委員 ほかにいかがでしょうか。藤原先生には参考人として来ていただいているのですが、追加的に何かございますか。
○藤原参考人 先ほども委員から御指摘のあったこの薬ですが、フェイズIで、国内で死亡例が間質性肺炎で出ているということは、非常に注目すべきかと見ておりまして、海外のポスターでそれを発表されていたと思うのですが、イレッサのときはそれがなかったので。
 添付文書で縛れない場合、私ども実際の医療現場の医師がこれを処方するときに、それをきちんと捉えて、闇雲に処方をしないというところを、いかに企業と各種学会、行政にフォローしていただいて、指導していくかが大事だと思っていまして、企業と行政の方々には、そこを闇雲にマーケットに走らせないというところが、この薬を育てる上では非常に大事かと思っています。
 私ども専門医としては、非常に対象を考えて、Performance statusを考えて処方するのが通常なのですが、そうではない先生方もいらっしゃるところを、どう捉えていくかが大事なので、工夫を是非お願いしたいと思います。
○早川委員 課長からございますか。
○審査管理課長 心に止めてやっていきたいと思います。ありがとうございました。

○早川委員 ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。有効性の作用機構、あるいは副作用の発現の作用機構についても、まだいろいろと不明な点がありますが、本剤が現時点で、医療の現場に必要とされている薬であるかどうかを、これから御判断いただきたいと思います。議決に入りたいと思います。なお、池田部会長、堀内委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 それでは、本剤の承認を可とするということに関して、御同意、御賛同いただけますか。よろしいですか。では、本剤の承認可、といたしまして薬事分科会に報告することとさせていただきます。

【中略】

○池田部会長 少し長くなりましたが、本日はこれで終了させていただきます。先生方、お暑い中どうもありがとうございました。

( 了 )

連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 河野(内線2734)


全文は: www.mhlw.go.jp/shingi/2007/07/txt/s0725-4.txt

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