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2002/06/12 薬事・食品衛生審議会薬事分科会 議事録

(平成14年6月12日開催分)
イレッサ承認に関する部分

会議情報

1.日時及び場所

 平成14年6月12日(水) 15:00〜

 厚生労働省専用第22会議室

2.出席委員(19名)五十音順

 青柳 俊、 赤松 功也、 池田 康夫、 板倉 ゆか子、
 井村 伸正、 岩田 誠、○上田 慶二、◎内山 充、
 岡本 彰、 神山 美智子、首藤 紘一、 杉村 民子、
 長尾 拓、 広津 千尋、 松本 和則、 溝口 秀昭、
 溝口 昌子、 吉倉 廣、 吉田 仁夫
 (注) ◎部会長  ○部会長代理

 欠席委員(7名)五十音順

 河村 信夫、 木下 眞男、 桜井 靖久、 南部 鶴彦、
 望月 眞弓、 吉永 祐介、 渡辺 俊介

3.行政機関出席者

 宮島 彰(医薬局長)  、 田坂 治(総務課長)、
 池谷 壮一(審査管理課長)、 北條 泰輔(医療機器審査管理室長)、
 松田 勉(化学物質安全対策室長)、
 黒川 達夫(安全対策課長)、 鈴木 英明(血液対策課長)、
 栗本 まさ子(農林水産省畜産部薬事室長)、
 豊島 聰(審査センター長)、姫野 孝雄(企画調整部長)、
 平山 佳伸(審査第一部長)、 橋爪 章(審査第三部長) 他

4.備考

 本部会は、非公開で開催された。

議事

○内山分科会長
 それでは定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会薬事分科会を始めます。まず委員の異動がございましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。 事務局の人事異動も一緒にどうぞ。

○総務課長
 昨日付けで総務課長に着任いたしました田坂でございます。よろしくお願いいたします。それでは私の方から委員の異動について御紹介させていただきます。糸氏委員が御退任されまして、新たに青柳委員に当分科会に御参加いただくことになりました。

○青柳委員 よろしくお願いします。

○総務課長
 続きまして事務局の異動でございますが、5月1日付けで化学物質安全対策室長に松田が着任しております。
○化学物質安全対策室長 よろしくお願いします。
○総務課長 以上でございます。

○内山分科会長
 それでは最初に資料の確認を事務局からお願いいたします。

○事務局
 それでは資料の確認をさせていただきます。資料1〜20までがあらかじめ御送付している資料でございます。本日は資料21につきまして配付させていただいております。そのほかに議事次第、座席表、それから名簿を配付させていただいておりますので、御確認のほどお願いいたします。

○内山分科会長
 当日配付は一番最後の資料21というものだけだそうです。よろしいですね。それでは議題に入りたいと思います。最初に資料1ですが、医薬品イレッサ錠の輸入承認の可否等につきまして、池田先生から何かお話ありますか。よろしゅうございますか。

○池田委員 それで結構でございます。

○内山分科会長
 では事務局に説明してもらいましょう。

○事務局

 それでは事務局の方から本剤の審査の概略について、御説明させていただきます。

 本剤の規格及び試験方法、毒性、薬理、吸収・分布・代謝・排泄に関して提出された資料の内容は妥当であると判断いたしましたが、申請準備を進めていた当初の申請予定製剤に問題があることが判明し、急遽治験で使用した製剤での申請に切り替えたという事情から、安定性試験につきましては、規定のロット数での成績は提出されておりませんでした。しかし、「審査報告書」の53ページに記載しておりますように、申請後規定のロット数での安定性が確認されている当初申請予定であった製剤と、今回申請された製剤との相対比較安定性試験が実施されており、医薬品第二部会開催後にその結果が提出され、今回申請された製剤の安定性を確認しております。また、本剤はpHが6.8以上の溶液中では溶出しないことが示されており、実際ラニチジンとの併用による薬物動態への影響を検討した臨床試験において、胃内pHの上昇に起因すると思われるCmax及びAUCの低下が確認されていることから、添付文書の「重要な基本的注意」、「相互作用」の項及び「有効成分に関する理化学的知見」の項で情報提供を行うとともに、日本人高齢者において多いと報告されている無酸症への対策として、「用法・用量に関連する使用上の注意」において、食後投与が望ましい旨記載いたしました。

 次に臨床試験について述べさせていただきます。プラチナ系抗悪性腫瘍剤による治療歴のある非小細胞肺癌患者を対象とした第II相国際共同試験において、250mg1日1回投与と500mg1日1回投与での比較が検討されており、欧米人250mg群では52例中PR5例を認め奏効率は9.6%、欧米人500mg群では55例中PR5例を認め奏効率は9.1%であったのに対し、日本人250mg群では51例中PR14例を認め奏効率は27.5%、日本人500mg 群では51例中CR1例、PR13例を認め奏効率は27.5%と、日本人において高い有効性が示されております。国内外での奏効率の差に関しては、海外症例での前治療期間の中央値が日本人症例での前治療期間の倍以上であり、本剤投与開始時におけるPerformance Statusに差があったためではないかと考えられています。なお、申請用量は250mg群と 500mg群において有効性に差が認められないことより、安全性の観点から250mgが選択されております。また、「審査報告書」の33ページになりますが、プラチナ系及びタキサン系抗悪性腫瘍剤による治療歴のある非小細胞肺癌患者を対象とした米国第II相試験において、250mg投与群で102例中PR12例を認め奏効率11.8%であり、非小細胞肺癌に対する第三次治療における本剤の有効性も示されております。以上の臨床試験成績を踏まえて、化学療法歴のある非小細胞肺癌患者に対する本剤の有効性は認められると判断いたしました。

 次に本剤の安全性に関してですけれども、添付文書の「副作用」の項を御覧いただきたいと思いますが、本申請の効能及び用法・用量によって実施された臨床試験での日本人副作用評価症例51例中98%に副作用が認められ、主な副作用は発疹、下痢、そう痒症、皮膚乾燥等でありましたが、適切な処置を施すことで対応可能であると判断いたしました。

 なお、5月24日に開催された医薬品第二部会におきましては、本剤の臨床効果とEGFRチロシンキナーゼ阻害作用との関連性について、現時点において明確ではないことが指摘され、審議の結果、作用機序解明の更なる検討を承認条件とすべきと結論されております。

 以上のとおり、審査センターでの審査結果及び医薬品第二部会での審議結果を踏まえ、化学療法歴のある非小細胞肺癌患者に対する本剤の有用性は認められ、「効能・効果に関連する使用上の注意」において、化学療法未治療例及び術後補助療法における有効性及び安全性は確立していない旨記載した上で、効能・効果を非小細胞肺癌(手術不能又は再発例)と設定し、さらに本効能に対する本薬の有効性及び安全性の更なる明確化を目的とした十分なサンプルサイズを持つ無作為化比較試験を国内で実施すること、及び本薬の作用機序の更なる明確化を目的とした検討を行うとともに、本薬の薬理作用と臨床での有効性及び安全性との関連性について検討することを条件に承認して差し支えないと判断し、薬事分科会で審議することが妥当と判断いたしました。なお、本剤は再審査期間6年、原薬、製剤共に劇薬に該当すると判断しております。御審議のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。

○内山分科会長
 ありがとうございました。よろしゅうございますか。池田委員、特に御追加ございますか。

○池田委員
 特に追加することはないのですけれども、世界に先駆けて我が国で承認するという状況であるわけですが、悪性腫瘍、特に非常に死亡率の高い難治性の疾患であるということで、それに対する効果がはっきり認められていると。基礎実験、そして臨床試験からもそれが認められているということで、安全性がある程度担保できるようであれば承認条件を付けた上で承認しても差し支えないのではないかというのが医薬品第二部会での先生方の御意見であったように思います。先ほどもお話がありましたように、幾つか作用機序の問題、あるいは国内外での成績、日本人の方がややいいという説明ができない部分も確かにあるわけでありますが、患者の治療の緊急性ということにかんがみて、分科会で御審議いただくのが適切であろうということでございます。よろしくお願いします。

○内山分科会長
 ありがとうございました。概要の6ページに書いてある絵にあるように、新しい癌治療の標的分子の一つだということで、EGFRを含むシグナル伝達によってこれが活性化されて、増殖に働くところのチロシンキナーゼを阻害するということで、分子標的薬剤としてかなり注目されてはいるようです。もっとも1,500もある候補の中からスクリーニングで選んできたということは間違いありませんので、そういった方法とそれから分子標的という新しい考え方の両方が融合したような感じだと思いながら見ておりました。ただいまの事務局からの説明、それから池田先生のお話等について御質問等がありましたら、どうぞお願いいたします。溝口先生、どうぞ。

○溝口(秀)委員
 グリベックに続いて大変ユニークな分子標的療法を目指した薬だと思いますが、一つお聞きしたいのは、一般に抗腫瘍剤の有効性を単剤で見る場合に、何%くらいの有効性があれば有効と考えるのでしょうか。

○内山分科会長
 要するにこれが10%前後だからということですか。

○溝口(秀)委員
 抗悪性腫瘍剤調査会に参加をさせていただいたときは、血液腫瘍などの場合ですと大体20%超すということが一つの要件になっていたと思います。ほかの腫瘍ですとそこまでいかないかもしれませんが、先ほど池田先生が御指摘された、国内では20%を超しているけれども国外では9%と低いということがありますけれども、それは市販後の調査条件に入っていましたが、最近有効とする条件はどうなっているのか。あるいは血液腫瘍以外の使用ではどうなっているかちょっとお聞きしたいと思っております。

○内山分科会長
 今事務局担当者から何か意見があるかもしれないので聞いてみますが、池田先生からお話がありましたように、結局治療薬がないものだということがまず一つ条件になること。それから用法・用量ですが、条件的に必ずほかのもので治療した後で使いなさいというのがありましたね。そういった条件を付けたのは、確かに今先生がお話しされたようにほかのものでは効かないけれども、その上に上乗せしてこれだけ効くという意味ではないかという気がしますが、事務局から何かございますか。

○事務局
 審査センターからお答えいたします。通常の非小細胞肺癌でありましたら、単剤での抗腫瘍効果というのは、最近承認された薬の塩酸ゲムシタビンやタキソール、パクリタキセルとかドセタキセルなど、未治療例であれば25〜30%ということが標準でございます。しかし、本剤のように二次治療あるいは三次治療、1回目の治療をfailureした、あるいは2回目の治療をfailureしたケースに対しましては10%行けば非常にいいであろうと。私どもが審査する場合には、単純に奏効率では審査しておりませんで、その中身、前治療の強度とかサバイバル・ベネフィット、これは比較試験ではございませんので何とも言えませんが、一応過去の事例に比べてMSTの延長がどのくらいあるか、それから1年生存率がどのくらいかというのを総合的に判断して見ます。先ほど内山分科会長もおっしゃったように、本剤の場合は三次治療、0039試験ということで、非常にヘビーな前治療が入った非小細胞肺癌というのは通常4か月くらいで亡くなるのですが、その方々の生存が7か月ほどまで延びる可能性が高いということで、非常に有望な薬であると判断したという経緯がございます。

○内山分科会長 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

○上田分科会長代理

 まれではありますが、本薬は心電図中のQTを延長して重篤な不整脈の発生もみられますので、添付文書の注意の記載について再度御検討をお願いしたいと思います。その不整脈についてですが、これは非臨床試験でIkr、カリウムチャンネルの阻害をするということは明らかであります。

 それからイヌの心電図のテレメータで、投与後2時間でQTcを延長したイヌが出ております。また、ヒトにおきましても1例か2例の延長例があります。そういうことから考えますと、非常に優れた薬でありますが、副作用によって使用が障害されることがあってウィズドローアルされることがあっても困りますので、「使用上の注意」のところで心電図の検査が望ましいという記載をお願いしたいと思います。

○事務局

 事務局より補足します。添付文書の「その他の注意」のところにイヌを用いた試験において、「QT間隔の延長は認められなかった」という記載がありますが、これは先生の御指摘のとおり不正確な表示でございますので、試験結果に忠実な記載に改めたいと思います。

 また臨床におけるQT延長に関しましては、安全性情報の更新された情報も踏まえた上で、再度検討させていただきます。

○上田分科会長代理
 その添付文書の「その他の注意」というところは余り医師が関心を持たないところです。ですから、医師がよく注意して読むところへきちんと書いていただきたいです。やはり前の方の注意のところへお書きいただいた方がいいのではないかと思います。それからイヌの成績を書きましても、臨床医がどれくらいこれがヒトとつながるかというのが分からないことがあるのです。ですから、そこを考慮していただいて、危険のないようにお願いいたします。

○事務局
 一応添付文書の記載方法としまして、「その他の注意」といいますのは、要するに臨床の方では明確ではないのだけれども、動物試験等の結果より今後可能性がある場合に記載するということで、現状では申請者は臨床での危険性はないものと判断しておりますが、この辺の情報も再度検討させていただきます。

○上田分科会長代理
 臨床例でも出ているのですよね。ただ、分母の対象例の数がよく分からないのです。何例のうち何例かというのがよく分からないのですが、とにかくQT延長症例が2例あることは間違いありませんので、十分御検討をお願いいたします。

○事務局 了解いたしました。

○上田分科会長代理
 「重要な基本的注意」のところに、肝臓の検査を1か月ないし2か月に1回することが望ましいという記載があったと思うのですが、それに似たような表現で心電図検査の実施が望ましいという記載があったらいいのではないかと思います。これは御検討ください。

○事務局 検討させていただきます。

○内山分科会長
 記載の案につきましては、上田委員とよく御相談ください。ほかにどなたかいらっしゃいませんか。どうぞ。

○松本委員
 本剤の適応症例につきまして、事務局のお考えをお伺いしたいと思います。「審査報告書」の37ページには、EBMに基づいた判断を尊重するという意向のことが書いてあるわけですが、この薬剤の適応症例は手術不能、又は再発の非小細胞肺癌に限るということを意味するわけでしょうか。

○事務局
 審査センターからお答えします。「効能・効果」で一応「(手術不能又は再発例)」と書いてありますのは、そのような症例に限るという意図で効能・効果の設定をいたしております。

○松本委員
 そういうことになりますと、この「添付文書(案)」を見させていただきますと、「非小細胞肺癌(手術不能又は再発例)」と括弧を付けてありますし、その下の「効能・効果に関連する使用上の注意」の(1)、(2)でやはりこういう注意書きをされているということは、本剤は場合によっては非小細胞肺癌全体に使われる、第一選択として使われるということを予想している書きぶりではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○事務局

 予想というよりも、これは確認済みではございませんが、むしろ従来のこういう経口剤の場合、比較的安易に術後の補助化学療法でありますとか、単剤での低用量での治療というのが一般医科で行われる事例もこれまで割と多くございました。その辺もこの薬の毒性、特に角膜に対する毒性とか、先ほど上田委員がおっしゃいましたQT延長、長期投与した場合の本剤の安全性なども依然確認しておりません。余り広い対象患者さんに使うことがあってはいけないので少しくどくなったのですが、「効能・効果」でまず手術後のアジュバントには使わないでくださいとして「手術不能」、又は「再発」というのはきちんとした化学療法を受けた後の患者さんを対象にしてほしいということで「再発」という言葉を入れました。これは従前の抗癌剤でも、種々の抗癌剤の「効能・効果」でこういう表現で括弧をして、「手術不能又は再発」ということで使ってきた事例がございますので、それを踏襲してそのような記載にして、更に「効能・効果に関連する使用上の注意」の中で使用に関してなるべくこういうところに注意してくださいという記載をさせていただきました。

 従前は「重要な基本的注意」のところでこのような表現をしておりましたが、先ほど上田先生もおっしゃいましたように、なるべく医師の目に触れるところの方がいいだろうということで、「効能・効果に関連する使用上の注意」のところまで持ってきて、いろいろな情報提供という意味で書かせていただいた次第です。

○松本委員
 私は単純にすべての非小細胞肺癌に場合によっては使うかもしれない、使っていいか使って悪いかは問題あるとは思うのですが、本当に使わせたくないという意味であれば、「手術不能又は再発の非小細胞肺癌」とすればすべて済むことなのですが…。

○内山分科会長
 括弧の中に入れておくのはかえって良くないというお話ですね。

○松本委員
 そういうふうに書けば、こういう例もありますが、非小細胞肺癌全体でも場合によっては使えるという解釈が成り立つのですね。

○内山分科会長
 括弧の中に入れますと、例えばという意味にとられるのではないかと。

○松本委員
 しかも(1)、(2)にこういうことが書いてあれば、こういうことになっても必要性があるから使いますということになるものですから、その辺はやはり統一した考えで書かれた方がいいと思います。

○内山分科会長
 そのとおりだと思います。ですから、「使用上の注意」のところはこれでいいのですが、その前の本文を括弧の中に例示したと思われる内容にもっと限定して、その限定した中身を文章でそのまま書いてほしいと。

○松本委員
 こういう特殊な作用の薬の場合、いろいろなデータを集めたいという暗黙の意図がある、患者さんとの間のいわゆるインフォームド・コンセントで場合によっては使っていろいろなデータを集めたいという意図があるのであれば話は別かとは思うのです。しかし、本当の意味で有効性、安全性からいってまず最初はこういうことでデータをとりましょう、その後やりましょうと言うのであればはっきりした方がいいですし、そうでなければこれでもよろしいと思うのですけれども。

○内山分科会長
 先ほどの事務局の説明では、効能・効果は限定するという意思がありましたから…。はい、どうぞ。

○池田委員
 実はただいまの松本委員のお話と同様の議論が第二部会でもございまして、これは現時点では手術不能、又は再発例の非小細胞肺癌に用いるという格好で、それを更にはっきりするために未治療例では有効性も安全性も確立していないと理解していただくことがいいのだろうと私は理解しました。書きぶりについては、ある意味では松本委員がおっしゃるような書きぶりの方が誤解がないということであれば、どうでしょうか。第二部会ではそういう議論になったと思いますけれども。

○事務局
 松本委員の御指摘に従いまして、松本委員がおっしゃるような例示的な書きぶりに変えさせていただきたいと思います。

○内山分科会長
 ではそのようにお願いします。ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは御審議いただきましたこの資料1については、御承認いただいたことにさせていただきます。

【 以下略 】


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