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2001年4月18日(水) 京都新聞
薬害ヤコブ病訴訟
中島弁護団長に英国事情を聞く
1985年以降 死亡16人 国が過失認める
政府・民間 整う支援
追跡調査で危険伝達
硬膜移植が原因で治療法のないクロイツフェルト・ヤコブ(CJD)に感染した薬害ヤコブ病問題で、薬害ヤコブ病大津訴訟の原告側弁護団長を務める中島晃弁護士(京都弁護士会)がこのほど英国を訪問、同国の薬害ヤコブ病の患者遺族や患者支援団体と交流した。16人が発症し死亡した同国では、訴訟で国の過失が認定されて患者側が勝訴しており、患者らへの支援も充実しているという。現地の事情や、日本の患者への支援態勢などの問題点について聞いた。
(滋賀本社 岡本晃明)
−日本では脳手術で硬膜移植を受けた70人がヤコブ病を発症し、ほとんどが1-2年で死亡した。英国のヤコブ病の現状は。
「英国では、小人症治療で用いられたヒト成長ホルモン投与から、ヤコブ病感染者が出た。硬膜と同じく、ヒト成長ホルモンも死体から採取したヒト組織です。英国では約1,900人が投与を受け1985年以降、16人がヤコブ病を発症し死亡している」
−患者の遺族は。
「薬害ヤコブ病で息子を亡くされたボールドウィンさん夫婦とお会いし、大津訴訟の原告谷三一さんの手紙を渡した。ボールドウィンさんの息子は、15歳の時に成長ホルモンの投与を受け、91年に発症し無言無動となり、1年後に30歳で亡くなったそうです。遺族の悲しみは英国でもいささかも変わらない」
−日本では薬害の被害者が大津、東京両地裁で提訴したが、国は「96年まで危険を予測できなかった」と主張し、責任を認めていない。
「ボールドウィンさん夫婦は英政府保健省の責任を追及して提訴し、その後、他の患者家族も裁判に加わった。英国高等法院の判決は、科学誌の論文で危険を指摘された77年以降は被害を予見でき、国に製品を回収しなかったなどの過失があると認定し、患者側が勝訴した」
−英国では、ヤコブ病患者・家族を支援する民間団体があり、幅広く活動しているそうだが。
「ヤコブ病患者を支援するNPO『CJDサポートネットワーク』を訪問した。国が基金を出し、薬害の患者家族だけでなく、他の原因で発症した患者も対象とし、相談や心のケア、経済的援助に取り組んでいる。患者の立場から医療機関に対し勧告も行っている。治療法のないこの悲惨な病に、政府も民間も手厚く援助している」
−日本での取り組みとの大きな違いは。
「英国では、成長ホルモン投与を受けた人を追跡調査し、約1,900人全員に感染の危険を伝えている。将来発症するのではないか、との不安には、ネットワークの心理療法士が精神的ケアを行っている。日本では、だれに硬膜移植したのか調査もされず、病院も答えてくれない。日本では国が腰を上げなけれぱ、民間の支援組織をつくってサポートしなくてはならないでしょう」
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