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サプリメントを考える 5

くらしと健康 連載コラム

藤竿伊知郎 (薬剤師・外苑企画商事 薬剤情報室)

(21)漠然とした健康イメージで売る「ローヤルゼリー」

2004年11月

 ローヤルゼリーは、老化防止・免疫力の強化など、多彩な効果を期待させて売られています。古くから、大衆薬にも配合されていることで「滋養強壮」というイメージがあります。
 ローヤルゼリーは、ミツバチが女王バチの食料として、花粉などを消化して作ったものです。水分を除いた固形成分はタンパク質(45%)と糖分(40%)が主で、15%ほどの脂質を含んでいます。また、ビタミンを豊富に含んでいます。

 最近になって、成分のタンパク質や、脂質の生理効果を、動物実験で確かめられるようになってきました。高脂血症・糖尿病に対する検査値の改善効果、マウスにおける腫瘍抑制効果などの報告が見られます。医薬品として開発できる成分が見つかる可能性はあります。しかし、人間に対する効能は、科学的データが乏しい状態です。

 7月30日からコンビニでも販売できるようになった「安全上とくに問題がないものに選定された製品」にローヤルゼリーは入っています。比較的安全と考えられますが、国立健康・栄養研究所のデータベースでは、アレルギー体質の患者には喘息などの症状を引き起こすことがあると、危険性情報が示されています。タンパク質を多く含むため、アレルギーにはご注意ください。
 日本で使用されるローヤルゼリーは年間600トンあまり、99%が輸入で、9割以上は中国から入っています。生産量が少なく高価なものであるため、製品の中には少量しか入っていないものが多く見られます。

 健康効果を発揮する使用量についてのデータは、見つけられません。また、天然物なので産地・収穫時期によって成分含量が変動するにもかかわらず、品質をチェックする基準はできていません。
 使う目的があいまいなこともあり、長期に使いがちですが、研究が進むまでは深入りしないことがよいでしょう。

(22) 魔法のことば「抗酸化作用」

2004年12月

  サプリメントでいちばん多いキャッチフレーズは、「抗酸化作用がある」です。活性酸素による酸化ストレスからくる、動脈硬化などの老化・発癌を防ぐことに役立つとしています。科学的説明をつかって、いかにも効きそうにみえる情報があふれています。
 ビタミンC・E、カロチン、カテキンなどが強い抗酸化作用をもつとされ、他の物質もそれを基準として活性酸素除去効果の強さを競っています。

 培養細胞やネズミを使った動物実験では、腫瘍細胞の増殖を抑えることが確認されています。また、疫学調査では血液中の抗酸化物質の量が多い人で、成人病の発生が少ないとの報告があります。
 しかし、抗酸化ビタミンをサプリメントとして与えることで病気を予防しようとした大規模臨床試験では、よい成績が得られていないことが、はっきりしてきました。
 臨床試験のメタ分析で、カロチン・ビタミンEでは心血管死亡を予防する効果がないことが示されました。カロチンでは、逆に総死亡率の増加がみられています。
 心血管死を減らそうとする臨床試験で、スタチン系の抗コレステロール薬に抗酸化ビタミンを併用したところ、単独治療群より成績が悪くなった例もあります。

 活性酸素は、細胞内でエネルギーを作り出すときに、たくさんできますが、人間の体はそれを安全に処理する仕組みを備えています。外から、酸化還元の受け皿になる物質を大量に取り込んだ場合、健康効果がないばかりか、寿命を縮めてしまうこともあります。抗酸化作用の強い物質を余分にとることは危ないことです。活性酸素の役割もよくわからないのに、単純な仮説で対応していることが問題です。
 疫学調査でよいとされたビタミンCなどが多い状態とは、野菜・果物を多く食べるバランスのよい食生活をおくっていることです。一部の成分による健康効果ではありません。この点でも、食事の充実が健康管理の基本です。

(23)「天然物」なら安全なのか

2005年1月

 化学物質でつくった医薬品は危険だが、サプリメントは天然食品なので効き目がやわらかく、副作用もない。このように信じている方がたくさんいますが、本当でしょうか。

 サプリメントの安全性を考えるには2つの注意点があります。品質が変わりやすいことと、通常の食べ方より大量にとってしまうことです。

 今年の秋、「スギヒラタケ」を食べ急性脳症で死亡した者が多数あり、11月には厚労省が食べるのを控えるように注意をよびかけました。ずっと食べてきたキノコでしたが、今年は日本海側の地方で毒性物質が含まれるようになったようです。

 2003年8月、「アマメシバ」の乾燥粉末をのんだ人に重い気管支炎が発生する事件がありました。9月12日に厚労省が粉末と錠剤形態の商品を販売禁止にするまで、12名の被害者があり、肺移植をおこなった者もでました。1990年代に台湾でおきた死亡事故の経験が生かされていない事件でした。

 今年6月厚労省は、肝障害の海外情報により、「コンフリー」製品を販売自粛するよう指示しました。また、10月には「ウコン」による肝障害が報道され、厚労省は対応を検討しています。

 濃縮した成分をつめた錠剤・カプセルが普及し、自然の状態ではとても食べない量をとってしまうことで、健康被害がおきています。

 11月、アメリカの学会で1日400IU(267mg)以上のビタミンEは偽薬より約10%死亡率が高く、有害のおそれがあると報告されました。日本における、ビタミンEの推奨摂取量は男性で10mg(約15IU)です。東京都の栄養調査で85〜98%の人がその基準を満たしている中で、余分なビタミン摂取は控えた方がよいようです。

 100%安全なものなんて、ありません。体に影響をあたえるものは、有益な作用だけでなく、有害な作用を併せ持っています。大量に長期間服用することは、人体実験をおこなっている状態だと思った方がよいでしょう。

(24) 危ない広告から逃げる道

2005年2月

 テレビ放送や新聞・雑誌の紙面で、サプリメントの広告は連載の開始時点と比べてずっと目立つようになりました。2004年のCoQ10のように、毎年、新しいものがブームとなっています。販売される場所も、健康食品の専門店からドラッグストアやコンビニなど身近なところに広がっています。

 広告を聞いていると、現代人は不健康であり、健康のために何か飲まないといけないように、不安がかき立てられます。しかし、現在のサプリメントは玉石混淆で、何を選んでいいのか悩む状態です。

 そこで、あやしいサプリメントを見分ける3つのポイントを紹介します。

(1) 誰にでも効くとしている
 重病の人から疲労がたまっただけの人に対してまで、すべてに万能の物質はありません。体質や年齢・性別によってクスリの作用には違いがでます。サプリメントだけ例外とはいえません。
(2) 副作用が無く安全といいきる
 クスリは、効果と副作用のバランスを納得のうえで使っています。ここでも例外の物質はありません。また、一つのものを偏ってとることにより食品でも健康に悪い影響がでます。
(3) 「〜とされる」と責任をぼかした表現
 あやしい宣伝にたくさん登場するのは「〜に効くといわれる」といった、伝え聞きの形です。責任ある専門家が人にすすめるときは、根拠にもとづいて、はっきりとした表現を使うものです。

 将来、健康改善に有用と評価されるものもあるでしょう。しかし、一時的なブームで終わった健康食品はたくさんあります。宣伝に踊らされず、じっくりと評価していきたいですね。

 サプリメントを購入するとき、支出の限度は嗜好食品と同じ程度にし、家計に影響がでない範囲でつきあうことをおすすめします。

 この連載は、ここで終わりますが、いままでの記事は外苑企画商事のホームページ(http://www.gaiki.net)で読めるようにしています。また、消費者にとって伝えていきたいことがありましたら、随時解説していきたいと思っています。

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