財団法人データベース振興センター 平成6年度委託課題
1995年3月
協立医師協同組合
ソリブジン薬禍のように、医薬品情報の不適切な伝達により、不幸な事件の発生が続くことは、日本の医療・医薬品業界にとって第一に改善せねばならないことである。現在、日本で使用される医療用医薬品は14,000品目をこえている。薬事法によってメーカーに対して義務づけられている医薬品添付文書による情報提供は、こまぎれで画一的な内容のため、情報の洪水に拍車をかける状態である。また、有効性を宣伝する情報は繰り返し大量に伝えられても、製品の販売にとって不利益となるとみなされる安全性情報は、メーカーから積極的に提供されることは少ない。
医療の現場で求めている正確で迅速な安全性情報は、行政と医薬品業界・関連学会に抜本的に整備を求めていきたい。しかし社会的整備を待つだけでなく、医療現場でも自主的に情報を整備することが、国民の信託に応える社会的責任として要求されている。
協立医師協同組合は、複数の医療機関によって作られた共同事業として医薬品の共同購入を行なってきたが、医薬品の適正使用につながる情報整備にも努めてきた。これまでも、医薬品情報室を整備してメーカーから提供される情報の整理供給と、医療機関からの使用後評価の収集と行政・メーカーへのフィードバックを実践してきた。特に、副作用モニター情報の収集では、厚生省のモニター活動とは別に独自の活動を続けてきた。情報活動の結果は、ニュースと医薬品情報誌の発行と、電話・FAXでの質疑応答活動として、組合員に返してきた。
近年、パソコンを始めとする情報機器の医療機関への普及にともなって、医薬品情報を印刷物ではなくコンピュータで利用できる形態で供給することを求められるようになってきた。また情報交換と分析の効率化をはかる目的で、副作用モニター情報をパソコンのデータベースで整理することが、医療機関からの自発的活動として開始された。
このような分散的な情報活動を協同組合全体の利益につなげるために、統一的整備が必要とされていた。副作用症例データベースの構築と運用を協同組合内の事業として検討し、十分な仕様がかたまった時点で、他の医療関係の施設と個人の間で利用と普及をはかることをめざしてきた。
今回、機会を得て副作用データベース構築調査の活動を行なうことができたので、その成果を報告する。
データベース構築の過程で、今回は以下の3点について明らかにすることをめざして、調査研究を行なった。
以下に、その内容を概説する。
副作用情報を入手するためのデータベースとしては、現時点でも複数のものがある。しかし、医療現場では文書の形態での情報収集と交換がいまだに主流のままである。普及の遅れの原因を探り、診察室や薬局で求められている実用的なデータベースのあり方を検討した。
現在、当組合に加盟している医療機関のうち副作用モニター契約を行なっている124施設から集中する副作用の症例件数は、年間2000件をこえている。
信頼できるデータベースをつくるために、情報の質を保ちながらさらに量の拡大をはかる必要がある。副作用情報が発生する各医療機関での的確な情報収集、十分な訓練をうけた専門化グループによる情報評価、確実な情報の選択と登録をするために要求される業務規範の作成を検討した。
将来にわたりデータベースを維持するために、機器やコード体系などを保守し続ける必要がある。その費用をいかに少なくするかは、民間医療機関での情報活動にとって重要な課題である。また、組合員が分散している中で通信コストの節減も重要である。今回は特に、データ内容の整備だけでなく、低コストで運用できるデータベースの設計を試みた。
図1 医療と情報の結合
調査は、現状の問題点を明らかにすることから始め、今回改善に手をつけられる点を目的にあわせてしぼり込んでいった。さらに調査結果を実務の中で検証し、実用システムに仕上げるために、プロトタイプを作りながら設計を進めていった。
医療現場でのニーズを把握するため、組合員や協力関係のある医療機関の薬剤師の中からワーキンググループを作り、現状の問題点や要求をだしてもらって検討材料とした。
以下の方々にお願いして、ご意見をいただいた。
浦辺 律 (千葉・薬剤共同センター)
生沼 信恵 (埼玉協同病院)
関 さゆみ (みさと健和病院)
立岡 雅子 (谷中調剤薬局)
長岡 秀樹 (三崎薬局)
中村 建 (たくみ外苑薬局)
藤竿 伊知郎 (わかば薬局)
古川 広志 (立川相互病院)
医薬品業界や医療関係で広く使われているコード表や、調査票と報告書の類を収集し分析した。市販の書籍や見学訪問時に入手した資料以外に、(財)医療情報システム開発センター、厚生省保険局医療課から資料を送付していただいた。
安全性情報の面で先進的な情報活動を行なっている機関と施設への見学・訪問を行ない、資料を提供いただくとともに意見の交換をした。
1994年 8月26日 (株)スズケンの薬剤情報活動の訪問調査
1994年 9月 1日 (株)小田島情報室の訪問調査
1994年 9月 6日 データベースショー見学
1994年 9月20日 厚生省薬務局安全課医薬品適正使用推進室の訪問調査
1994年11月14日 名城大学医薬情報センター訪問調査
1994年12月12日 (株)医薬情報研究所にコード体系の訪問調査
また、訪問はできなかったが、帝京大学医薬情報室、関東逓信病院などからは電話や手紙でご指導いただいた。
出された問題点の中から、今年度中に改善できる点を整理していった。
厚生省の副作用モニター報告用紙の改善を主な題材としながら、データベース収載項目の設計を進めていった。
検討の結果まとめられたデータベース収載項目へのデータ収集上の留意点を、「副作用モニター報告規定」として文書化する活動を行なった。
また、成果の中間的な結果は、前出のワーキンググループに示して意見を求め、修正を加えていった。
医療機関での入力、センターでの集積と分析、結果の登録・利用にあたり、パソコンでのリレーショナル型データベースを使ってプロトタイプを構築した。また、データベース管理プログラムのメニューの中から起動できる、パソコン通信でのデータ報告と結果の取り込みについての、自動化プログラムを作成した。
製薬企業からの緊急安全性情報や、学会誌の情報は散発的で、重要な情報をあらかじめ伝えられていても、臨床判断が必要なときにはなかなか見つけることができない。コマーシャルを含む大量の記事の中に埋もれて、重要な情報が隠されてしまいやすい。系統的に整理された速報誌がほしい。
また、索引が整備された文献は発行間隔が長く、速報性がない。さらに発行部数が少ないせいか、高価で小規模な施設では購入できない。
一方、医療関係で利用できるデータベースとしては、MEDLINEやEMBASEのように古くからある文献データベースが代表的なものである。また、近年になって医薬品卸が中心になって整備されてきているARISのようなオンラインの副作用情報や、これから公開する方法を調査している厚生省の公的情報など選択肢は増えていっている。
安全性情報への要求は高いが、医療現場でのデータベース利用の普及は進まず、製薬メーカーに資料請求して処理する場合が多い。その理由を次のように整理してみた。
文献等を利用した副作用データベースについては、すでにいくつも公開されている。しかし、編集ルールが長年の経験で確立されているため情報の質は高くても、情報伝達の速報性の面は欠けている。その原因は、学会誌等に掲載されるまでに時間がかかる上、抄録誌に掲載されるまでにさらに長い時間が必要なためである。
オンラインデータベースの利用料金は未だに高価で、検索操作も熟練が必要なため、サーチャーとしての訓練をうけていない臨床医や薬剤師が利用するには敷居が高くなっている。
臨床の場では、副作用を疑わせる症状があったときは原因の確定とともに、投与の中止や減量・代替治療法の選択などの処置がただちに必要となる。過去症例の具体的な臨床経過がわかれば対処法の決定が容易になる。しかし現在までのデータベースでは、文献サマリーのように抽象化が進んだデータは検索できても、処方医への支援となる情報がたりない。
また、既製のカテゴリーに当てはまらない形で副作用症状を分析するには、より一次情報に近い情報を直接操作できる事が必要となってくる。この点で、症例のファクトデータベースが求められる。
以上の事から私たちは、既存の文献データベースに不足する速報性と事実伝達の中立性を重視した、症例ファクトデータベースの構築をめざすことにした。文献データベースと症例ファクトデータベースは、それぞれ補足しあって情報の完全性を保障するものと考える。
本システムも厚生省のモニター制度と同様に、副作用モニター報告が医療現場の職員の自発性にもとづいて行なわれることから、疫学的研究に使うデータの集積には向かず、副作用情報のトピックスの検出に効果をあげると考える。しかし、十分な件数の症例を集めれば、国内に例のない副作用症例のファクトデータベースとして、副作用発生傾向やメカニズムの分析用資料の供給源になると考えている。
しかし、データベース構築を仕事とする業者が作成したデータを検索するのではなく、医療現場にいる多数の職員がデータを作成し、その者たちが検索も行なうことにしたため、登録するデータの水準を保つための教育と訓練の体制を作る必要性が生じた。
表1 文献データベースと症例ファクトデータベースとの比較
文献データベース | 症例ファクトデータベース | |
---|---|---|
情報の質 | 公表されるまでに充分な検討 がされるため正確。 | 検討不十分なものも途中経過 で登録される。 |
情報の偏り | 著者の感心ある範囲で情報が 取捨選択され、加工されてし まう。 | 比較的偏り無く広く集まるが 、調査計画を事前に設計しな い限り調査対象の実態を反映 しない。 |
情報数 | 比較的少ない。 | 多い。 |
タイムラグ | 投稿されてから審査編集を受 け出版され、なおかつその後 に登録されるので遅い。 | 出版の過程がなく、事実経過 が簡単なチェックだけでその まま登録されるため早い。 |
公開の有無 | 種々の媒体において公開中。 | 現在は組織内で公開され、対 外的には非公開。 |
利用方法 | 教訓や対応、処置方法をまと めた資料とする。 | 速報的に副作用発現のシグナ ルを検出する。発表者と違っ た視点で分析する。 |
アメリカFDA、スウェーデン、イギリスの副作用報告用紙および日本のいくつかの施設で使用している用紙を厚生省の用紙と比較検討した。
諸外国のものは、厚生省の報告用紙に比べ簡素であり、自発モニターとしてイベントを出来るだけ集めることに主眼を置いたものとなっている。 共通する項目としては、以下の8項目がある。
イギリスでは、その医薬品使用中に出現した症状を、副作用か否かの判定なしにすべて収集するシステムを取っており、そのため報告用紙への記載項目も更に簡素になっている。
国内の医療機関で使用されている報告用紙では、副作用確定度の記入欄を設けて工夫している施設があり参考とした。
図1 厚生省の副作用モニター用紙
図2 FDAの副作用モニター用紙
図3 スウェーデンの副作用モニター用紙
図4 イギリスの副作用モニター用紙
図5 みどり病院(岐阜市)の副作用モニター用紙
医療現場で利用に必要と要望された事項の中から検討の上、副作用報告用紙に記載するもの、その中での必須項目、データベースに登録する項目、データベースの運用上で事務局が使用する項目の4種類に整理した。
94項目中、報告書に入れたものが64件、データベースに登録するものが58件、入力必須項目が30件であった。
原則として、同じ内容を厚生省薬務局安全課にも報告するようにしたため、厚生省の報告用紙と同等の項目内容を本データベースにも収集することとした。
検討結果の代表例を以下に紹介する。
1)記入項目からも削除したもの
併用の有無:他の被疑薬の有無があれば必要ない。
企業名:商品名で代用可。 副作用症状別に追跡検討:副作用モニターには厳密すぎて馴染まない。
処置の適否:記入者には判定困難。
2)記入項目では細かく分かれていたが、データ入力時に一括したもの
主治医の意見:報告者の意見もここに一括入力する。
備考:腎・肝機能など問題となる患者背景、その他参考になるエピソード・コメント等はすべてここに入力する。
3)集計や通信に必要な項目の新設
薬名CD(コード)その他のコード。事務局集計欄。抽出・回収の項目。
表中の「書類」欄に「報」とあるものはモニター報告用紙に収載したもの、「DB」欄に「DB」とあるものはデータベースに登録する項目、「必須」欄は入力データの省略の可否を段階的に区分したもの。「NO. 」欄に同じ番号が続くものは同一の項目に統合したものである。
可変長のデータベースを使用したので、1レコード2,000文字まで収容可能であり、文字列項目の項目長は設定していない。
表2 副作用症例データベース収載項目 (表中の桁数は表示桁数)
No | 項目名 | データ型 | 桁数 | 値条件 | 内容説明 | 書類 | DB | 必須 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 報告No. | 数値 | 6 | 院所,報告者の分類用番号 | 報 | DB | ◎ | |
2 | カルテ番号 | 数値 | 6 | DB上は無し | 報 | |||
3 | 副作用名 | 文字列 | 6 | 報 | DB | ◎ | ||
4 | 副作用CD | 文字列 | 2 | 字種{半角,数字} | HYTARDコード | 報 | DB | △ |
5 | 症状分類No | 文字列 | 2 | 字種{半角} | 別紙症状分類Noコード表 | 報 | DB | △ |
6 | 重症度 | 文字列 | 3 | 厚生省分類表 | 報 | DB | ◎ | |
7 | 添文記載 | 文字列 | 1 | 集合{1:有,2:無,3:} | 報 | DB | ◎ | |
8 | 添付文書未記載時の報告 | 文字列 | 1 | 集合{1:有,2:無,3:} | DB上は備考へ | 報 | △ | |
9 | 発現期間 | 文字列 | 3 | 副作用発現までの期間 | 報 | DB | ◎ | |
10 | 時間的な因果関係 | 文字列 | 2 | 集合{1:有,2:無,3:} | 薬剤の体内動態と症状発現の因果関係の有無 | DB | △ | |
10 | 評価判定基準 | 文字列 | 2 | 薬剤の体内動態と症状発現の因果関係の有無 | 報 | △ | ||
11 | 回復までの期間 | 文字列 | 3 | DB上は備考へ、症状発現から何らかの対応をとり回復までに要した期間 | 報 | ◎ | ||
12 | 被疑薬名 | 文字列 | 6 | 商品名、保険薬事典参照 | 報 | DB | ◎ | |
13 | 企業名 | 文字列 | 4 | 薬品名が代行 | ||||
14 | 薬名CD | 文字列 | 3 | 字種{半角,英字,数字} | 協立医師協薬品コード | 報 | DB | △ |
15 | 薬効CD | 文字列 | 3 | 字種{半角,英字,数字} | 87分類、保険薬事典参照 | 報 | DB | ◎ |
16 | 成分名 | 文字列 | 6 | 報 | DB | ◎ | ||
17 | 成分CD | 文字列 | 3 | 字種{半角,英字,数字} | 小田島コード | 報 | DB | △ |
18 | 経路 | 文字列 | 1 | 集合{1:内,2:注,3:外,4:} | 報 | DB | ◎ | |
19 | 剤型 | 文字列 | 2 | 厳密には商品名でカバーできるが補足 | 報 | DB | ◎ | |
20 | 薬剤の体内動態の特徴 | 文字列 | 3 | DB上は備考へ、特徴的な代謝経路 | △ | |||
21 | 一日量 | 文字列 | 3 | 字種{半角,全角} | 一回量と回数の積で表示 | 報 | DB | ◎ |
22 | 開始 | 文字列 | 5 | 字種{半角,全角} | 開始日 | 報 | DB | ◎ |
23 | 終了 | 文字列 | 5 | 字種{半角,全角} | 終了日 | 報 | DB | ◎ |
24 | 他被疑薬名 | 文字列 | 4 | 報 | DB | ◎ | ||
25 | 併用薬の有無 | 文字列 | 1 | 集合{1:有,2:無,3:} | 報 | △ | ||
26 | 併用薬 | 文字列 | 6 | 副作用や患者を見る上で主たる併用薬 | 報 | DB | ◎ | |
27 | 処置 | 文字列 | 2 | 集合{1:中止,2:減量,3:継続,4:無し,5:} | 報 | DB | ◎ | |
28 | 処置の適否 | 文字列 | 1 | 集合{1:適,2:非} | DB上は備考へ、レトロスペクティブに適切な対応が取られたか否かの判断 | △ | ||
29 | 治療 | 文字列 | 1 | 集合{1:無,2:有} | 重症度を間接的に説明する内容 | 報 | DB | ◎ |
30 | 症状処置など | 文字列 | 5 | DB上は備考へ | 報 | △ | ||
31 | 転帰 | 文字列 | 2 | 集合{1:回復,2:軽快,3:未回復,4:後遺症,5:死亡,6:} | 報 | DB | ◎ | |
32 | 備考(経過) | 文字列 | 5 | 報告書を第三者へ説明する際のポイントの要約 | 報 | DB | ◎ | |
33 | 経過詳細 | 文字列 | 5 | DB上は備考へ | 報 | △ | ||
34 | 別紙症例の有無 | 文字列 | 1 | 集合{1:無,2:有} | DB上は備考へ、報告書裏面 | △ | ||
35 | 発現機序 | 文字列 | 5 | DB上は備考へ | 報 | △ | ||
36 | 相互作用の可能性 | 文字列 | 5 | DB上は備考へ | △ | |||
37 | 添加剤の影響 | 文字列 | 5 | DB上は備考へ | △ | |||
38 | 文献的裏付 | 文字列 | 5 | DB上は備考へ | △ | |||
39 | 既存資料の発生頻度 | 文字列 | 5 | DB上は備考へ | △ | |||
40 | 患者ID | 文字列 | 2 | 報告者の分類利用覧 | 報 | △ | ||
41 | 性別 | 文字列 | 1 | 集合{1:男,2:女} | 報 | DB | ◎ | |
42 | 年齢 | 整数 | 4 | 報 | DB | ◎ | ||
43 | 身長 | 文字列 | 2 | DB上は備考へ | 報 | △ | ||
44 | 体重 | 文字列 | 2 | DB上は備考へ | 報 | △ | ||
45 | 体表面積 | 文字列 | 3 | DB上は備考へ | 報 | △ | ||
46 | 被疑薬使用疾患 | 文字列 | 4 | 被疑薬使用目的の疾患名 | 報 | DB | ◎ | |
47 | 基礎疾患 | 文字列 | 3 | 個々の患者を説明する際に重要な疾患名 | 報 | DB | △ | |
48 | 既往歴 | 文字列 | 3 | 個々の患者を説明する際に重要な既往歴名(DB上は備考へ) | 報 | △ | ||
49 | 医薬品副作用歴 | 文字列 | 3 | DB上は備考へ | 報 | △ | ||
50 | 副作用歴(からの交差反応性) | 文字列 | 3 | DB上は備考へ | 報 | △ | ||
51 | 病態の影響 | 文字列 | 3 | DB上は備考へ | △ | |||
51 | 肝障害 | 文字列 | 3 | DB上は備考へ | 報 | △ | ||
51 | 腎障害 | 文字列 | 3 | DB上は備考へ | 報 | △ | ||
52 | 患者背景 | 文字列 | 5 | 報 | DB | △ | ||
53 | 妊娠の有無 | 文字列 | 1 | 集合{1:無,2:有} | DB上は患者背景へ | 報 | △ | |
54 | 職業 | 文字列 | 3 | DB上は患者背景へ | 報 | △ | ||
55 | 常用薬や嗜好 | 文字列 | 3 | DB上は患者背景へ | 報 | △ | ||
56 | アレルギー歴 | 文字列 | 3 | DB上は患者背景へ | 報 | △ | ||
57 | 家族歴 | 文字列 | 3 | DB上は患者背景へ | 報 | △ | ||
58 | その他の背景 | 文字列 | 3 | DB上は患者背景へ | 報 | △ | ||
59 | 陽性試験(副作用の確定試験) | 文字列 | 3 | 集合{1:LST,2:パッチテスト,3:チャレンジテスト,4:} | 確定試験を実施されている場合の陽性となった試験名 | 報 | DB | △ |
60 | 再発の有無 | 文字列 | 2 | 集合{1:有,2:無,3:} | 作為・無作為にかかわらず再投与の際の再現性の有無 | 報 | DB | △ |
61 | 因果関係(評価判定基準) | 文字列 | 5 | 集合{1:確実,2:ほぼ確実,3:可能性あり,4:不明,5:} | 一定の基準(別紙)に照した因果関係 | 報 | DB | ◎ |
62 | 被疑薬確定の為の矛盾点 | 文字列 | 5 | DB上は備考へ | △ | |||
63 | 併用薬による発生の否定 | 文字列 | 5 | DB上は備考へ | △ | |||
64 | 主治医の意見 | 文字列 | 5 | 主治医の総合的な判断の基準となった点の要約 | 報 | DB | △ | |
65 | 報告者の意見 | 文字列 | 5 | 報告者の総合的な判断の基準となった点の要約 | 報 | △ | ||
66 | 企業報告 | 文字列 | 1 | 集合{1:済,2:予,3:無} | 報 | DB | ◎ | |
67 | 厚生省報告 | 文字列 | 1 | 集合{1:済,2:予,3:無} | 報 | DB | ◎ | |
68 | 発生年月 | 数値 | 6 | 副作用発現の時期 | 報 | DB | ◎ | |
69 | 報告年月 | 数値 | 6 | 報告書作成の時期 | 報 | DB | △ | |
70 | 県名 | 文字列 | 2 | 報 | DB | ◎ | ||
71 | 県CD | 整数 | 2 | DB | △ | |||
72 | 院所名 | 文字列 | 4 | 報 | DB | ◎ | ||
73 | 院所CD | 整数 | 4 | DB | △ | |||
74 | 企業名 | 文字列 | 3 | △ | ||||
75 | キーワード | 文字列 | 2 | DB検索用の要約 | DB | △ | ||
76 | 報告者名 | 文字列 | 3 | 報 | DB | ◎ |
決定した項目を入れて、副作用報告用紙とそれに対応したパソコンでの入力フォームの画面を作成した。その中で、以下のような設計方針をとった。
具体的な工夫のいくつかを紹介する。
(1)レイアウトについて
各記入項目を「副作用症状関係」、「薬剤関係」、「患者背景関係」、「副作用確定度」に大分類し、それぞれがまとまるように配列した。
(2)これまで小さくて困っていた欄を大きくするとともに、あまり問題にならない項目は一括して一つの欄とし、見た目をスッキリさせた。
(3)副作用確定度欄を設けることにより、報告者が再度内容を検討して客観化できるようにした。また、患者背景では副作用発生でたびたび問題となる腎機能・肝機能の評価を記入してもらうようにした。
(4)用紙の大きさは、いままでから使用してきた書架とファイルサイズとの関係で、A系列でなく現行のB4版とした。
以上の検討結果より、図7のように新モニター報告用紙を作成した。また、薬歴形式の詳細症例報告用紙を、図8のように作成した。また、用紙への記入とデータベースへの入力の方法を具体的に記載した報告規定を作成した。(付属資料1参照)
図6 パソコン入力画面ハードコピー
図7 新たに作成した副作用報告用紙
図8 新たに作成した副作用報告用紙(薬歴形式)
今回、データベース構築にあたってコードの利用を検討したのは、医薬品(商品名・一般名)、薬効分類、副作用名、病名についてである。
報告医療機関名とそのコードについては、単純に協立医師協同組合の販売管理システムのコードを使用した。また、製薬企業名とそのコードについては、企業別の副作用データの集計を今回のデータベースではしないことから、検討を省略した。
WHO・厚生省・学会で標準化がされている用語・コードを使用する。コード化、標準化がすぐにできないものは規格化を急がず、まず自由文で入力・蓄積して、ある程度の情報が蓄積された段階で基準化を行なうこととする。
コード表が、どこの医療機関でも安価に入手でき、しかも簡単な訓練でコード引きができるようなわかりやすいものを求める。既製のコード体系に良いものがない場合は、将来の整備に備えて、比較的問題のないコードを仮に選択することにした。
この観点で医療現場で使用できるコード体系のあり方を調査した。
具体的なコード作成の過程には、索引辞書のなかでの標準名称の選択と体系化といった準備過程と、番号をふるなどの狭義のコード化の両面があるが、今回は、コード化の対象となる用語・概念の整理を中心にコード表の検討を行なった。
1)製薬協統一商品コード
日本製薬工業協会(製薬協)が医薬品の流通コードとして作成している。医薬品の販売単位ごとにコード化され、製品のパッケージにバーコードとともに印刷されている。製品変更があると随時変更される。
9桁のコードで、頭に4987をつけて13桁にするとJANコードになるようになっている。頭の3桁はメーカーコードで、あとアイテムコードが5桁とチェックディジット1桁でで構成されている。
2)厚生省薬価収載医薬品コード(薬価コード)
厚生省薬務局経済課作成。12桁からなるコードで、健康保険の薬価基準収載医薬品に対してつけられている。医薬品の市場価格調査のときに使用される。
3)厚生省再審査コード
厚生省薬務局安全課監修、医薬情報研究所発行。固有の名前はなく、「医療用医薬品名データファイル(コード表)」の名前であるが、ほかのコードと区別するため「再審査コード」と通称で呼ばれている。医薬品製造承認にかかわる再審査資料のなかで、製薬メーカーからの副作用モニター報告の整理に使用される。
4)レセプト電算処理システム医薬品コード
厚生省保険局監修。9桁からなるコードで、健康保険の薬価基準収載医薬品に対してつけられている。健康保険の給付にかかわる計算処理に使用する目的で作られた。1994年からパイロットスタディを行なっている。
5)保健医療カードシステム医薬品コード
厚生省健康政策局総務課医療技術開発室が監修し、(財)医療情報システム開発センターが管理している。ICカードを利用した地域レベルでの保健医療情報システムの構築をめざしている。ただし、現時点ではデータ項目名までの標準化で、データのコード体系はアプリケーションのシステムにまかせているので、病名や医薬品について保健医療カードシステムとしての標準コードはない。
6)CA Registry Numbers
アメリカ化学会が作成している科学文献抄録データベースChemical Abstracts(CA)で使用している薬品コード。1965年に発足し、化合物に連番をふっている。
7)薬効コード
薬業研究会編集、薬業時報社発行の保険薬事典で日本標準商品分類を拡張したコードが使われ、医療機関での薬効コードとして広く使用されている。元の分類の欠点をそのまま引き継いでいる。
8)日本標準商品分類コード
工業生産統計を作成するために使われている。医薬品分野では、大分類と中分類は対象疾患の臓器別分類をもとにし、小分類は薬効と成分の化学構造との両方を混在させた分類となっている。このため、「βブロッカー」のような繁用される薬効群の薬品が複数のコードに分散されて収容されてしまっている。
新しい分野の製品が増えるため、10年に1回程度の頻度で改定され、前回は1990年に改定された。
9)医薬品副作用用語集
厚生省薬務局安全課監修、医薬情報研究所発行。厚生省副作用用語研究班(1985年度〜1993年度班長:伊藤宗元)が編集を担当し、実務面では中央薬事審議会の副作用調査会のメンバーと製薬協・医薬品評価委員会PMS部会が協力している。1976年に前身となる副作用用語集が作られ、同研究班で編集しなおして1985年に初版を発行している。その後、1989年と1993年の2回改定されている。
WHOの国際医薬品副作用モニター制度への情報提供のため、同制度で使用しているART(Adverse Reaction Terminology)を対訳したものに、国内で繁用される用語を追加している。
WHOの基本語 1,364(初版時 1,046)に日本で追加した基本語が 212(初版時 115)、それに慣用語が両者合計で 2,668(初版時 2,701)の総計 4,244(初版時 3,862)件が収載されている。
基本語には4桁の数字をコードとしてふり、慣用語は2桁の枝番をつけ6桁としている。
10)HYTARD(Hyper Thesaurus for Adverse Reaction Database)
小田島(株)がデータベースの検索を目的として作成。厚生省監修の医薬品副作用用語集を元にしてコード体系の変更と用語の整理を行なっている。シソーラスの階層構造の整理を中心に整備されている。(付属資料2参照)
1991年に作成し、現在まで大きな改定はしていない。
11)国際疾病分類(ICD,International Classification of Diseases),WHO
国連世界保険機構(WHO)が疾病統計の集約に使用している。1977年の9版に続いて1992年に10版(ICD -10)が決まっているが、まだ日本語に翻訳されたものが供給されていない。
12)NARD(National Adverse Drug Reaction Directory),USA
アメリカ合衆国食品医薬品省(FDA)のCOSTART(Coding Symbols for Thesaurus of Adverse Reacion Terms)第3版(1989年)に含まれる。
13)ART(Adverse Reaction Terminology),WHO
国際的な副作用モニターデータの集約のためにWHOで作成している。最新版は1992年に発行。
14)MEDIS病名コード
厚生省と通産省が所管する財団法人、医療情報システム開発センター(MEDIS)が使用している。
15)MEDRA(Medical Dictionary for Drug Regulatory Affairs)
ヨーロッパ共同体(EU)で医薬品の製造承認にあたる規制当局が標準として1995年1月から使用をはじめた用語集。副作用用語だけでなく病名も含まれる。ICHの3極協議のなかでアメリカと日本の政府も使用を検討しはじめている。
調べた範囲では満足できるコード集をみいだせなかった。結果として、一般に使用されているコード表に関して、以下のような基本的問題点が存在した。
具体的な評価は以下のとおりである。
容易に入手できるコードは、厚生省関係でも薬務局経済課・安全課・保険局医療課が管掌する別々のコード表が使用している。しかも、それぞれが別項のような欠点をもっているが、それを統一的に整備する動きが遅い。日本保健情報システム工業会が1994年に発足したが、関係各社に聞いても現時点までには標準化への構想が進んでいるようにはみえなかった。
また、オンラインデータベースには日本語のシソーラスも整備されているが、広く公開されたものでなく利用契約者に限って使用できるものになっている。安価に実務の現場で入手できない。
長期にわたって一貫して保守されている医薬品のIDコードがない。統一商品コードは、製品変更があると変更されてしまう。薬価コードも再審査コード、レセプト電算化の薬品コードもすべて薬効コードを内部にもっており、分類コードとして設計されているため、薬効分類が改訂されるとコードに変更が発生する。また、薬品の適応症が拡大され、主たる薬効が変ってしまうとコードが変更されるものもある。
前回、日本標準商品分類が改訂されたとき、新しいコードと古いコードとの読み換えが発生した。新しいコード表を入手してない施設もあって、一時期は副作用モニターの活動に混乱が生じた。
前項のように現時点の多くの薬品コード表は、個別の調査時点での一貫性しか考えてなく、データを蓄積して時系列的な分析を進めることには向いていない。
分析の方法と視点は、科学技術の進歩によって変化していくものであり、分析に用いる分類コードは変り得るものでなければならない。一方、薬品コードは薬品の識別ができるIDとしての登録番号だけにすべきである。そして、薬品マスターの中に別個の分析用コードをフィールドとしてもって管理するのが合理的である。しかし現実は、コード作成時点の知見での分類コードが薬品コードの中に作り込まれており、問題である。
そのような問題点はあっても、化合物や薬品の一般名についてはコード化が進められていた。一方、副作用情報の集中と分析には製品別評価が必要であるのに、製品のブランド別の統一的なコード体系はまったくみいだせなかった。
薬品コードでは、成分名(一般名)−薬品銘柄名(メーカー別のブランド)−商品コード(規格・容量・包装別)のような一貫した階層構造がほしい。
薬効コードでは、対象疾病別−治療メカニズム別と化学構造的分類の2つの分類を混同せずに、ハイパー構造として作ってほしい。
副作用用語集としては、小田島のHYTARDが階層構造を研究して、整理されていた。
全体に、日本語のシソーラスが少ない。英語では充実しているが、翻訳されていなければ、研究には使えても実務に利用できない。
医薬品コードとしては独自コードを使う。使用者にとって制御できないときに変更されるコードは使用できないため、独自の管理機構を構築する。業界標準の他のコードとは、自社の薬品マスター内部で変換表をもつことにする。
商品コードは協立医師協同組合のアイテムコードのうち代表品目のものを使用する。一般名コードは小田島の薬品コードを使用する。
一般名に対応するものとしては、CA Registry Numbersが汎用性が高い。しかし、医薬品としては、天然物由来で成分が単離されていないものや、血液製剤のように原料が献血由来とそれ以外で区別が必要なものがあるなど、化合物としての管理だけでは不足する面がある。また用語としても、日本語の一般名には化学会の国際一般名の翻訳と薬学会での名称や医学会や個別学会での独自名称など複数の呼び名があり(インシュリンとインスリンなど)、標準化はまったく不十分である。このため、先行して独自のコード表を作成・管理し、公開している小田島のコードを使用する。
商品名に対応するコードは、容易に入手できるものとしては満足できるコード表がないので、管理コストがかかるが、自社コードを使用することとした。商品名はメーカーが登録した名称を使うことを原則とするが、名寄せを行なうにあたって不便な点は最小限の変更を行なうこととした。
薬効コードは薬業時報社の保険薬事典のコードを使う。どこでも容易に入手できるために管理が楽である。現行の87分類が改定されたときは薬品マスターに変換テーブルをもって、過去のデータも更新する。
薬理学的分類に対応するコードの調達を引き続き検討する。
副作用名とコードは小田島のHYTARDを使用する。
病名の標準化は今回は見送る。現時点では、日本語で入手できる標準コードがない。
1990年版のJIS情報交換用漢字符号(JIS X 0208,1990)を使用する。外字は使用しない。JISの1978年版と字体の入れ替えがあった部分は、繁用されているNECのPC−98シリーズが旧JISを使用しているため、区別しない。これは、医療用データベースでは、字体の違いが内容の判断に影響を与えないためである。
データベース関係はリレーショナル型データベースソフト 桐Ver.5を使用して作成した。可変長の文字データを標準で扱えるため、データ設計は簡単であった。今回は、データベースの基本となる表の設計、データ送付と回収の一括処理プログラム、データ入力用のフォーム画面、最低限のプルーフリストの作成を行なった。
通信関係はコストの関係で、クライアント側は件数が多いためフリーソフトウエアを中心にシステムを構築した。通信ソフトのオートパイロットのマクロプログラムと、桐のチャイルドプロセスで起動する通信のバッチプログラムの作成を行ない、モニター施設に配布した。
標準のシステム構成は以下のとおりとした。
を必須に指定した。
図9 出力帳票例
データの流れの各段階でチェックがかかるようにし、事務局の負担が加重にならずに精度を保てるように工夫した。また、点検済みで加工されたデータのみを公開し、それまでのデータは非公開とした。
データの流れの管理は、協立医師協同組合の薬剤情報室の専任薬剤師が行なうこととした。
図10 組合員と協立医師協同組合との間のデータフロー
運用コストの低廉さと、守秘義務の面で安心できる独自の電子掲示板システム(BBS)を開設することとした。セキュリティーの面でまだ不安は残るが、一次情報を電子メールにすることで、加工済みのデータしか一般のユーザーはアクセスできないようにしたため、重要な問題は発生しないと考えている。
データのダウンロードなどは、通信ソフトの自動実行機能でユーザーに複雑な操作を要求しないで実行できるようにした。また、新規登録データのローカルでの併合操作を確実にするため、掲示板には桐のデータをそのまま圧縮して登録する。ただしマニュアル操作を行なう場合の事も考えて、バイナリーデータのダウンロード操作の難しさを避けるために、テキストデータに変換の上登録することとした。
さらにこのBBSの掲示板機能を用いて、医薬品情報の質疑応答結果や各施設の薬事委員会で行なった新薬の評価活動の成果などの交流も可能となった。
図11 パソコン通信画面
図12 副作用データ送信プログラム 基本フローチャート
図13 副作用データ受信プログラム 基本フローチャート
情報が欲しいときに、いつでもアクセスできるデータベースをめざしてきた。しかし、オンラインで検索まで行なうシステムの構築は、通信費用が高いことと検索ソフトの開発難易度が高くコストパフォーマンスが低いため、今回は見送った。新規登録のデータはユーザーの責任でダウンロードして、ローカルデータベースに追加して利用することとした。
これにより、通信費用を気にせず十分なデータ検索ができることが本システムのメリットとして特徴づけられた。
しかしこの方法では、登録済みのデータに変更が発生した場合、それ以前にダウンロードした施設ではセンターのデータベースとくいちがいが発生する。それを解消するために、変更データの差分を送付し各施設で更新することを考えているが、運用形態は今後の試験運用の中で具体的にしていく。
なお、今回開発したものは桐の会話型処理で検索するところまでで、検索語の入力から自動検索する一括処理プログラムの開発は、来年度の課題とした。
実用にたえるプロトタイプを作成することができた。アドバイザーグループの試用では、十分実用になるものができている。設計上の不備は、組合員の中での一定期間の試験的運用の中から洗いだして分析し、改善していきたい。
本システムの公開にはまだ検討の余地がある。プライバシーの保護のためどこまでデータを加工すればよいのかについて、今回は意見の一致が見られなかった。
また、外部に公開できるだけのデータ精度を確保するためには、今後の試験運用にあたって作業者の教育・研修が重要となる。
このシステムが稼働することで、データをパソコン通信で集約しすみやかにフィードバックできることから、副作用情報を必要なときに、必要な場所で利用できるようになる。
コンピュータで利用できるデータを、診察室や薬局の現場に返送することにより、重篤な副作用発生の防止のための処方設計の改善にも活用できる。
これから蓄積するデータを、だれでも利用できる、わかりやすい資料に加工する方法をこれから検討していきたい。
医薬品の製造承認前の評価の限界から市販後調査の充実が必要とされている。薬物療法を適正に進めていくためには、薬剤使用評価(DUE)が注目されている。本データベースが、そのための重要な資料の供給源となりえる。
しかし、疫学調査に使えるデータの要件をみたす内容にするためには、さらに検討と整備が必要である。
患者への医療内容、とりわけ医薬品の情報を医療機関と患者とが共有していくことが大切になっている。患者は様々な疾病を持ち、いろいろな医療機関で受診することがある。その場合でも患者自身が自己の投薬歴情報をもつことによって、医薬品の相互作用による副作用などを未然に防ぐこともできるようになる。
今回コード体系の整備をはじめたことで、いままで医療機関の中だけにあった薬歴を共同して利用する道を開くことができた。
患者の「知る権利」・カルテの公開など、医療をめぐって情報公開の要求が急速にたかまってきている。それに備える意味でも、医療機関の情報整備が必要となっている。患者本人へのデータ提供、地域に広がる医療連携の中で医療機関同士の情報交換などで、プライバシーを守りながらどこまで情報を深く広く公開できるか、議論を重ねていく必要がある。
今回の調査研究に取り組むことで、医薬品の安全な使用を進める活動の推進とともに、患者の人権にかかわる重要な動きを具体化するきっかけを与えられたことを感謝したい。
今回は薬品コードに独自コードを採用したため、管理運営にコストがかかるようになってしまった。
日本の保健医療分野で情報業務を充実するためには、コード整備の面がボトルネックとなっていることを、今回の調査研究で強く感じた。そこで、関係各機関に以下の事を要望したい。このことが実現すれば、医療情報の面での日本の遅れを取り戻す重要な基礎を築くことができるだろう。
コードの基本設計と保守には経済的保障が必要である。現在、各省庁で個別に行なわれているコード化を一本化して国民に共有の財産として公開できるようにしてほしい。
薬品のIDコードの標準化は、コードの付け方の理論はどうでもよいので、大至急実現してほしいものである。
1. 副作用モニター報告規定
2. HYTARD凡例