(協)医療と福祉・協同組合報 連載記事
藤竿伊知郎 (薬剤師・協同組合 医療と福祉 情報室)
グラフィカルな入門書だけに頼っていると、仕事の目的を達成することと、プログラムのテクニックを駆使することとが逆転してしまいがちです。
本講座では、基本的な考え方、目的とヒントを示し、後は自分で見つけられるようにガイドしています。細かい操作は、すでに たくさん発行されている解説書をご覧ください。
2006年6月から2008年5月まで24回、連載しました。
― 第1回の導入部分から ―
コンピュータは、仕事をする上で無くてはならない道具です。それにもかかわらず、基本的な使い方を教えてもらえず、自己流で使い方を覚えていることが多いのではないでしょうか。
コンピュータが凍り付いて操作できなくなり、時間をかけて作った文書が消えてしまった、以前作った表が見つからないなど、腹が立つ経験がつきないのではないでしょうか。そんなトラブルを避ける方法は、ちゃんとあります。みなさんに、その技術をお伝えしたいと思います
書店にいくと画面の図版が載りカラフルなソフトウエア解説書がたくさん売られています。しかし、ファイルを複写して控えを保存するという、きわめて基本的な操作についてはよい教科書が見あたりません。また、入門書を超えて自分の仕事を効率化するために応用の利く知識も少ないようです。入門書の不足している基本的考え方とルールを解説します。
コンピュータは、「単純作業を繰り返す」という人間にとっていやな仕事を軽減するために作られた道具です。
コンピュータの利用で、レセプト作成・患者予約管理など決まった仕事の専用機として使うことが大きな比重を占めます。しかし、この講座では、文書を作成する、表を作成する、インターネットで調べる、メールを使う、チームメンバーでデータを共有するといった利用場面を想定して解説をします。
コンピュータは、仕事をする上で無くてはならない道具です。それにもかかわらず、基本的な使い方を教えてもらえず、自己流で使い方を覚えていることが多いのではないでしょうか。
コンピュータが凍り付いて操作できなくなり、時間をかけて作った文書が消えてしまった、以前作った表が見つからないなど、腹が立つ経験が尽きないのではないでしょうか。そんなトラブルを避ける方法は、ちゃんとあります。みなさんに、その技術をお伝えしたいと思います。
ワープロは文書づくりの基本ツールです。20年前までは、タイプライターを使って迅速に文書が作れる欧米の人たちをうらやましく思っていました。しかし、今では誰もがワープロを使える状況になり、仕事でいちばん時間を費やしているのがワープロ作業です。
ワープロはワード・プロセッサー(言葉の処理装置)という名前からわかるように、清書だけでなく文書入力・再利用の3つの面から文書の取り扱いに貢献するプログラムです。
ローマ字やひらがなを打ち込んで漢字交じり文へ変換する機能は、当たり前のように使っています。しかし、効率の悪い使い方をしている方を見かけます。入門書では簡単にしか書かれていませんが、便利な技がいくつかあります。
WordなどWindowsのソフトは、文字列の移動で操作対象をまず選ぶことから始まったように、操作する対象を決めてから操作を指示します。
文字の大きさや書体を設定したり、行頭の字下げをおこなう場合も、必要な文章はすべて入力し、その文章に対して体裁を整えていくことを想定してプログラムが作られています。
タイトルの書体やサイズを最初に指定するのは年賀状やチラシをつくるときには良いのですが、ある程度の文字数を記載する仕事の文書入力にはむいていません。
タイトルの文字をはじめに大きく指定して書きはじめると、続けて入力する本文も大きな字にされ、いらだつことになります。これは、Wordのお節介機能です。
仕事で作った文章が、印刷して終わりとなることはありません。完成版ができるまでは、何回か手直しが必要なはずです。自分で訂正しなくても上司や同僚が手を入れています。他人が修正しやすい文書を作ることは大切なマナーです。
自分の文章でも1年たつと、別人のものです。人に優しいことは、自分にとっても便利なものです。
月報のように決まったスタイルの報告書は、前月の文書を基にして作成します。議事録は会議レジュメに加筆して作成します。前年の文書を参照することもよくあります。
参照する文書を上書きして消さないように、編集を開始する前に[ファイル(O)]―[名前を付けて保存(A)]でファイル名を新しくしましょう。私は何度も失敗の経験があります。
つくった文章は使い捨てにしないようにしましょう。
Excelは表計算ソフトの代表です。しかし、その利用分野は計算に限らず、数値の分析、グラフ作成まで幅広いものです。また、日報など文字主体の書類作成にも活用されています。集計用紙や方眼紙を使っていた事務作業はすべてExcelでおこなえます。
このように機能が豊富なため、解説書もたくさんあります。しかし、関数やマクロなど高度な説明が多く、初心者を遠ざけています。
考え方さえわかれば、普通に使うために学ぶことは少なく、Wordよりも簡単なソフトです。敬遠せずに使ってみましょう。
今回の、説明図もExcelで作成しています。
作成した表は、印刷して配布することになります。入力がすんだ表を印刷してみると、右端の部分が別ページにはみ出ることがあります。
Excelは編集途中でページ単位を意識しない分だけ、めざしていた結果とかけ離れたものができやすくなっています。
Excelは、人に見せたり報告する表をつくるだけでなく、データの分析にも利用します。分析といっても統計処理など高度なことでなく、簡単な操作で実用的な結果が得られることがあります。
「データの並べ替え」は、あまり知られていない機能ですが、実務の分析にあたってなくてはならないものです。逆に統計で有名な平均値は、前回の講座で示したようにウソをつくときに使われやすい物です。
インターネットは、無料で利用できる情報の宝庫です。企業、政府、大学が質・量ともに充実した情報を提供するようになりました。個人による情報発信も、マスコミに取り上げられない出来事を知るために役立ちます。しかし、全体としては玉石混淆の状態です。
辞書・地図・乗り換え経路などは、専用のソフトを使わなくても検索サイトで調べられるようになっています。
ともすると、ゴミの山のなかに大切な情報を見失いそうになります。検索機能の進化はすごく早いのに、賢い使い方はなかなか知られていません。その入り口になるヒントを紹介します。
インターネット上にある情報は、新聞・雑誌のように編集者が選んだものでないため、質が低いのが問題です。特にこまるのは、販売業者が商品を販売するために作成した情報で、偏った情報が大量に存在します。
インターネットの利用者を対象とした調査でも、その情報が信頼されていないことが知られています。インチキ情報にだまされない方法を紹介します。
インターネットのメールは、仕事に欠かすことのできない道具となりました。
スピーディーに情報発信ができる。相手の都合を気にせずに情報を送れる。引用や転送が簡単で、情報の共有に役立つ。このような特徴が忙しい現代人に支持されました。
残念ながら、迷惑メールがあふれ、メールを受け取る数が増えたことから、送ったメールを読んでもらうには工夫がいるようになりました。
チームで仕事を進めるときや、仲間内で情報を共有する場合にメールは有益な道具です。時間や場所の制約をうけずに情報が届けられます。また、必要になったときに検索して利用できます。
大勢の人にメールを届けるには、あて先を併記する、メーリングリストを利用する、という2つの方法があります。
私たちは、患者さんの病気に関する重要な情報を取り扱っています。コンピュータを利用した業務は、目に見えないところで進むため、気づかないうちに外部へ流出をさせる可能性があります。
セキュリティー確保は専門家にまかせておけばできることではありません。私たちは大変危険な道具を使って仕事をしていることを認識してください。
コンピュータで取り扱うデータやプログラムは、「ファイル」とよばれています。どんなファイルかを意識して文書を閲覧・編集することが大切です。
メールに添付されたファイルについて、基本的な知識を待たないと危険です。
仕組みを理解していないソフトを使って仕事をしていると、無駄な時間を費やして仕事の効率低下を招くことがあります。
個人で使うソフトでなく、仕事で使うコンピュータシステムの導入にあたって、現場で意見を求められることがあります。業者の売り込みを信じ込むと思わぬ落とし穴にはまります。
前回、「単純」をすすめました。しかし、ムダをそぎ落としたつもりが、余裕をなくしていることはないでしょうか。コンピュータシステムの利用は、総合的に見ないと弱点を抱えることになります。
コンピュータを使う上で一番困るのは、今までできていたことが突然できなくなることです。自分の操作が悪くて壊したのではないかと、責任を感じたことはなかったでしょうか。
現在のパソコンはかなり不完全な商品です。買ったときは快適に使えていたものが、ソフトを追加したりアップデートをおこなうことで、次第に動作が遅く不安定になることは避けられません。
トラブルへの対処はコンピュータを使いこなすための学校です。困難を克服するには標準的な方法があります。コンピュータ自体は簡単に壊れません。トラブルの解決に取り組んでみましょう。
コンピュータの利用に、ネットワークは欠かせません。この便利な環境も、ひとたびトラブルを起こすと仕事に差し障りが出ます。
問題となるポイントについて基本的知識を解説します。
ネットワーク上で情報を共有するときに問題になるのは、大きすぎる文書ファイルです。最近のデジタルカメラでは、写真ファイルが1枚で2MBytes近くのサイズになっています。多くの人に見てもらいたいニュースは、たくさんの写真を入れて作成し、サイズが大きくなりがちです。
高速回線で接続できない方では、受信にとても時間がかかってしまいます。メールを常時見られない方では、メールボックスがあふれて、大切なメールを取り逃す原因となります。ニュースは同報で多くの方に送られます。このようなメールは、迷惑メールでしかありません。
メールで大きなファイルを送らない方法を紹介します。
前回、文書・画像のサイズを縮小する方法を紹介しました。快適なファイル操作には、書庫を作成するソフトを使えるようになることが、大切です。
インターネットからダウンロードし、無料で使えるソフトのパッケージも書庫になっています。
圧縮解凍ソフトを前回紹介しました。これ以外にも、インターネットからダウンロードして使える有用なソフトがたくさんあります。
無料で使えるものをフリーソフトとよんでいます。利用するのにお金を払うことが必要なソフトは、シェアウエアとよばれています。配布形態から、これらをオンラインソフトとよびます。
ソフトを入手するには、Vectorなどたくさんのソフトをライブラリとして整理しているサイトを利用することが便利です。
誰もが便利だと感じるフリーソフトはPDF作成ソフトです。今までアドビ・システムズ社の高価なソフトを使わなければできなかったことが、無料になったのです。
PDFは電子文書の規格で、Windows、Mac、UNIXなどの違いをこえて、文書のレイアウトを再現できるものです。ファイルの拡張子はpdfです。
ネット上では、厚生労働省が発表する報告書や、企業の製品カタログなどがPDF形式で公開されています。
自分で作成した文書や、入手したデータがたまってきたとき、どうしていますか。不要なファイルを削除し、残すものはフォルダーを分けて保存していることと思います。
マイコンピュータの中でファイルを移動するのに、マウス操作を失敗したことはないでしょうか。Windowsに標準で備わっているファイラーは中途半端な機能でユーザーを悩ませています。フリーソフトで環境を改善しましょう。
インターネットで公開された資料をもとにして、簡単に文書が作成できる時代になりました。そのため、人の文章を無断で丸写しして作成した文書が増えています。一方、肖像権やプライバシーの保護での過剰な反応も見られます。
発表された文書や画像は、社会にとっても貴重な財産です。むやみな制限や野放図なコピーは許されませんが、すでにある知見をもとに新しい著作物を作成することを制限しては困ります。
知的所有権に関する新しいルールがつくられる時期です。著者の権利を侵害しない最低限のルールを知っておくことが大切です。
コンピュータの利用で気をつけたいことを、2年間にわたって連載しました。新しいことがいろいろでてきていますが、基本を考えて取り組めば問題ないことが大半です。気後れせずに取り組んでみましょう。2008年5月21日
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