トップページ > 業務紹介 > 患者さん向け医薬品情報 > 東葛の健康 「クスリあれこれ」

クスリあれこれ

 「東葛の健康」連載コラム 2003年7月〜12月
表題をクリックすると、その記事の場所に飛びます。

No. 表題 執筆者
54 11月 鼻炎の薬で脳出血!? PPAに要注意 !! 矢島 かおり
53 9月 睡眠改善剤 槇野 和文
52 7月 サリドマイドをめぐって 林 雅子

鼻炎の薬で脳出血!? PPAに要注意 !!

クスリあれこれ No.54 2003年11月
矢島 かおり

 日々寒さが増し、風邪を引きやすい季節になってきました。「くしゃみ、鼻水、鼻づまり」程度で病院に行くのも面倒だし……というわけで、市販の薬を買われる方もいらっしゃるかと思います。しかし、そんな手軽に買った薬で脳出血という重い副作用が起きたことをご存じですか?

 問題となった成分は「塩酸フェニルプロパノールアミン」(略してPPA)というものです。鼻の充血を取り除き、気管支の緊張を緩める作用があるため、多くの鼻炎薬や一部の咳止め・風邪薬などにも配合されています。しかし、心臓刺激や血管収縮による血圧上昇作用も合わせ持っているので、頭痛・動悸・吐き気・めまいなどを引き起こすことがあります。服用前後にワインやチーズを飲食すると、その作用が強まる可能性があります。高血圧や心臓病のある方には症状を悪化させる危険もあるのです。アメリカではダイエット用に食欲抑制剤として使用されていたことがあり、大量服用による脳出血の危険性がいわれていました。

 アメリカでは、大規模調査で「PPAの服用で脳出血を起こす確率が高くなる」との結果が出たことから、3年前に販売中止となりました。しかし日本では使用量が少ないとの理由で「高血圧や心臓病の人は服用しないこと」「過量投与しないこと」と注意書きが追加になっただけで、販売は続けられてきました。

 しかし、この3年間で日本でも脳出血の報告が7例ありました。一度に2回分飲んでしまった例もありましたが、大量に服用しなくても脳出血の副作用は起きています。

 今年8月の時点で、PPAを含む製品は厚生労働省が発表している主要医薬品リストだけでも170品目あります。

 まだお店で売っていたり、家に残っているものがあるかもしれません。脳出血から身を守るため、薬を飲む前に「塩酸フェニルプロパノールアミン」(ノルエフェドリンも同じものです)が入ってないか、ちょっと確認してみて下さい。

睡眠改善剤

クスリあれこれ No.53 2003年9月
槇野 和文

買うときには、医師・薬剤師に相談を

 寝苦しい季節がやってきましたが、そんな季節に関係なく不眠に悩んでいる人はもうご存知でしょうか? 今年4月から、一般用医薬品(処方箋をもらわずに買える薬)としては初となる睡眠改善剤「ドリエル」が発売され、大変な売れ行きとなっているようです。

 現在、日本では5人に1人が不眠に悩まされているといわれています。そんな社会情勢に合った薬が発売されたと言えるのかもしれません。

 ドリエルの成分名はジフェンヒドラミン。今まではかゆみ・アレルギー用として市販されていたもので、眠気等の副作用がありました。みなさんもかゆみやくしゃみ・鼻水などの時、薬を飲んで眠くなったことがあるのではないでしょうか? ドリエルはその副作用を逆手にとり、睡眠改善剤として発売されました。

 良い薬が手軽に買えるようになったと思うかもしれませんが、問題もあります。

 ドリエルとしてのジフェンヒドラミンは25mg6錠入り、1回2錠が通常量ですので3回分で千円。かゆみ・アレルギー用として市販されているジフェンヒドラミンは10mg80錠が500円程度ですので、同じ成分なのに適応症表示の違いだけで10倍以上高くなっているのです。一般用医薬品の価格は、メーカーが自由に決められるため、こういう事態を生んでいます。

 また、ジフェンヒドラミンは抗ヒスタミン剤といわれています。この抗ヒスタミン作用は市販で買える多くのかぜ薬、解熱鎮痛剤、鎮咳薬にも含まれるので、併用すると作用が増強される危険があります。さらに前立腺肥大症、緑内障との診断を受けた方がこの薬を飲むと、症状が悪化する恐れがあります。病院にかかる時や、薬局で薬を買うときは、必ず自分が飲んでいる薬や病気について医師、薬剤師に伝えるようにしましょう。

 最後に、ドリエルは一時的な不眠に対して用いられるものなので、不眠状態が一週間以上続く場合は、自分で解決しようとせず、医師に診察してもらうようにしていただきたいと思います。

サリドマイドをめぐって

クスリあれこれ No.52 2003年7月
林 雅子

 最近、日本国内で未承認の催眠鎮静薬サリドマイドががんの一種である「多発性骨髄腫」の治療に有効であるとされ、医師の個人輸入という形で臨床使用しているという報道がされています。
 このサリドマイドという薬の名前を耳にして、どれだけの方が日本初の深刻な薬害事件を思い出されるでしょうか!!

サリドマイドの薬害

 サリドマイドは副作用もなく、安全な睡眠薬として1958年に日本でも販売され、妊娠初期の妊婦が服用した場合に手指に奇形をもつ新生児が生まれることや、他にも聴力障害、内臓障害を認め、1962年に販売停止となりました。これはサリドマイドの開発国である西ドイツでの販売中止から9ヶ月後のことです。

 全世界で8000名にも及ぶ薬害が発生し、その後の医薬品安全対策に大きな影響を与えました。日本では1963年に、新薬承認にあたっての催奇形性試験が義務づけられました。

多発性骨髄腫への使用

 多発性骨髄腫は骨髄のなかでがん化した細胞が増える病気で、化学療法等による延命・QOL維持という治療効果はあるものの、進行した場合、強い痛みが必発します。日本では毎年4000人程度がこの病気の診断を受けているといわれています。

 この多発性骨髄腫にサリドマイドを用いた治療は5年前にアメリカで始められたもので、患者の30%以上に有効という報告が多数発表されている一方、信頼性のある統計調査がないとする意見もでています。しかし、現実に今この薬を必要とする患者様が多くいるなかで、個人輸入で統一した使用基準もなく使用されることは薬の安全な使用を望むことはできないでしょう。

 今後サリドマイドの使用実態や副作用の情報を国がきちんと把握し、使用基準をまとめることが求められます。また、サリドマイドの毒性を改善した新薬の開発にも期待していきたいと考えています。

ページ先頭へ

トップページ > 業務紹介 > 患者さん向け医薬品情報 > 東葛の健康 「クスリあれこれ」