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外苑企画商事 調剤過誤防止マニュアル

2003年9月1日
外苑企画商事安全性委員会

 この防止マニュアルは、福岡の各県立病院薬剤科「調剤過誤防止マニュアル」を基本に、外苑企画商事各薬局での医療過誤防止のための方策を取りまとめ明文化することとした。

 実際の医療現場での場面は多種多様であるが、本文は基本的な考え方を提起している。
 新人研修を含め、研修、業務の点検に大いに利用していただきたい。

 また、実際に自分たちの現場で発生したヒヤリハットを教訓化し、このマニュアルに追補することで、さらなる過誤防止に努めてゆきたいと考える。

1. 目的

 このマニュアルは、薬剤師が適正な調剤を行い、調剤過誤を防止することを目的とする。

2. 調剤業務全般に関する基本事項

(原則としての考え方である)

(1) 業務の標準化を心がけ、調剤手順を飛ばさないこと。
(2) 業務中は私語を慎み、担当の業務に専念し、集中力維持を努めること。
(3) 一旦やりかけた業務は、最後まで行うこと。途中で引き継ぐ場合は一から確認すること
(4) 処方内容に疑わしい点がある場合は、必ず処方医に疑義照会を行う。確認後処方箋に日時、照会相手、照会者名、回答内容を明確に記載すること。
(5) 時間切迫(タイム・プレッシャー)に気をとられないようにすること。同時進行の業務はできるだけ行わない。
(6) 業務中のヒヤリとした出来事をインシデント・レポートに記録すること。
(7) 作業中、特に監査中は電話に出ない。
(8) 業務中に気づいたことは速やかに対処する(欠品、充填等)

3. 業務にあたっての心構え

(1) 自己の健康管理に留意すること。
(2) 医薬品の情報収集に努め、日々研鑽を積むこと。
(3) 整理・整頓・清潔を心がけること。
(4) 薬剤師相互及び他の医療従事者との連絡事項の周知徹底を図ること。
(5) 調剤台、監査台は常に整理、整頓し作業場所を十分確保すること

4. 調剤各業務段階における基本的な留意事項

(1) 調剤準備について

 調剤を行うまでの準備にあたっては、次の事項に留意すること。

薬品の有効期限、変質・変敗に注意し、適正なものであることを確認しておくこと。
薬品の棚、容器の表示を明確にしておくこと。散剤の内袋にも薬品名を明記すること
薬品の補充は薬品の棚、容器の表示を他者にも確認してもらい行うこと。
名称、色、形状、包装、用量の類似した薬品は、取り違えないように保管場所を工夫して配置すること。
調剤に使用する器具器械、資材等の清潔の保持に努めること。

(2) 処方箋の受理について

 処方箋の受理にあたっては、次の事項に留意すること。

記載事項のもれはないか。
薬品名の記載は明確か。
複数科の受診による重複、併用禁忌、併用注意の薬品はないか。
用量が承認された量に比して過多または過少ではないか。
倍散、原末の区別と分量は明確か。
単位、含有量、剤形の指定は明確か。
名称、字体の類似した品名はないか。
処方の変更事項はないか。
配合変化の恐れはないか。
保険情報の変更はないか。
複数診療科受診の場合の保健情報違いがないか。
処方箋交付年月日まちがい、記載漏れ、有効期限切れはないか.

(3) 薬袋、ラベルの作成について

 薬袋、ラベルの作成にあたっては、次の事項に留意すること。

患者名の記載を明確に行うこと。
用法・用量・使用上の注意などの記載を明確に行うこと。
用法(内用・外用)に応じた薬袋、ラベルの選択を行うこと。

(4) 調剤業務について

 調剤にあたっては、次の事項に留意すること。

処方箋は必ず手元に置き、調剤を行うこと。
薬品の読み違え、取り違えをしないこと。特に名称、色、形状、用量の類した薬品を取り出すときは、呼称して確認すること。
不明確な文字を判読しないこと。
用法、用量が適正であるか注意すること。
倍散、倍液、含量に注意すること。
濃度、1日分×日数、ヒートシール1枚当たりの錠剤・カプセル数、又は包数カウント、1包装中の数量に注意すること。
複数科の受診による重複処方、併用禁忌、併用注意に注意すること。
散剤の調剤にあたっては、混合不良、分包誤差に注意すること。また、包装を完全にすること。
異物混入に注意すること。
処方箋への記名押印、又は署名を確実に行うこと。

(5) 監査について

 調剤薬の監査にあたっては、次の事項に留意すること。

調剤者の経験を問わず、「エラーはある確率で人間一般に起きる」ということを念頭に置き、監査を行うこと。
原則として調剤者は監査を行わないこと。
自己監査せざるをえない場合には、調剤後一呼吸おく、視点を変える、場所を変えるなどして対応すること。
処方と薬袋、ラベルの表示は一致しているか確認すること。
薬品名、薬品の形状、識別コード、重量、用量、包数、個数に注意し薬剤を呼称、またはチェックをし、処方内容と照合すること。
複数科の受診による重複処方薬、併用禁忌薬、併用注意薬に注意すること。
異物が混入していないか確認すること。
包装が完全かつ適正であるかを確認すること。
薬袋等の種類及び数を確認すること。
薬剤情報提供の用紙の表示は、処方内容と一致しているか確認すること。
処方箋への記名押印、又は署名を確実に行うこと。

(6) 薬剤の交付について

 薬剤の交付にあたっては、次の事項に留意すること。

患者一人一人フルネームで確認の上、薬歴をチェックし交付すること。
薬袋の数を確認し、各薬剤の交付もれに注意すること。
用法、用量の複雑な薬品については特に丁寧に説明すること。
患者一人一人に応じた適切な薬剤情報の提供に努め、誤った情報を伝えないよう注意すること。
薬剤の質問に対し即答できない場合は、必ず文献・書籍による確認、または他の薬剤師への確認を行ってから返答すること。
処方変更内容を患者に確認すること。

5. インシデント・レポートの活用

 「人間はエラーを犯す」ということを前提に、予防の視点でインシデントの原因や状況の分析を行うこと。

(1) “ヒヤリ”としたり“ハッ”としたことを繰り返しているうちに重大事故が起こることがあるので、これらの出来事は躊躇せず必ず報告すること(調剤事故・インシデントレポート用紙、DocuWorks文書)。
(2) 報告に基づき、事例を整理、分析して対応策を検討し、事故の発生防止に活用すること。

6. 他部門との連携

 次の事項に留意し、他の医療従事者との連携を図ること。

(1) 処方内容に疑わしい点がある場合は、必ず処方医に疑義照会を行うこと。
(2) 他の医療従事者に対し、医薬品情報提供を適切に行うこと。
(3) 他の医療従事者に対し、医薬品の取扱い上問題がある場合は、改善を求めること。

7. マニュアルの実践と評価、修正

 「調剤過誤防止マニュアル」は各施設において独自に作成し、活用することに意義があり、職員の意見を汲み上げて随時修正していくようにしなければ、いずれ形骸化してしまうおそれがある。

 業務内容の全てを網羅したものではなく、事故防止のための組織的な取組の一つの手段であり、また、随時修正を行うことから流動的な要素も含む。

参考

  1. 県立柳川病院薬剤科調剤過誤予防マニュアル。
  2. 東京都衛生局病院事業部報告。
  3. 各県立病院業務報告、福岡県立病院における調剤防止マニュアル
 参考とさせて頂いたマニュアルをまとめ・公表された方々に、敬意を込めて感謝の言葉を差し上げます。

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