クロイツフェルト・ヤコブ病に関する消え去らない疑問 : 伝達様式

ショート・タイトル : クロイツフェルト・ヤコブ病

Harash K. Narang


・ ケン・ベル・インターナショナル
・ 22-40 ブレントウッド アベニュー ニューカッスル・アポン・タイン NE2 3DH
・ 電話: (44) 191 2815311
・ ファックス (44) 191 2810611
・ 電子メール Harash@compuserve.com
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この研究は、ケン・ベル・インターナショナルによって資金提供された

要約(Abstract):

 クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は臨床的及び病理学的に3つのグループに分類されている:(1) Familial(家族性)(2) Iatrogenic (医原性)(3)Sporadic(孤発性)。

狂牛病(BSE)の存在があきらかになってまもなく、CJDが若い患者に確認される様になってきたが、CJDは通常高齢の患者に見られる病気である。今では全年齢層でBSE感染による死亡例が認められている。古典的なCJDと新変異型のvCJDの際立った違いは:a)痴呆症状が初期に現れる。b)融合性のスポンジ状の変化は小脳においては極めて例外的である。c)プリオン蛋白(PrP)のプラーク(班)を認めることは極めてまれである。

 vCJDにおいては:a)初期に平衡、及び、運動失調障害が現れる。b)融合性のスポンジ状の変化が小脳において認められる。c)多数のPrPのプラークが認められる。
 血液、人間の脳下垂体由来成長ホルモン(hGH)、及び、 BSE に汚染(感染)された人の小脳は広範囲に気泡(空泡)化し、その中には多数のPrP陽性のプラークを伴う。しかしながら、血液、及び、hGHを受けた人々のPrPのプラークは、はるかに小さく、分布範囲は同様であり、そして、BSE感染源の病原(種類・汚染源の因子)により感染している患者(のプラーク)とは異なる。PrPのプラークの大きさ、その分布の異同により感染ルートが解明される。組織移植、電極、及び、手術によって感染したCJD症例の多数の脳は、PrPの検査は行なわれてこなかった、なぜならば、過去に免疫染色方法が無かったからである。人から人への感染経路を確認する為には患者の脳のPrPのプラークの大きさ、及び、その分布が再検査される事が重要である。PrPのプラークの分布と形状(パターン)は感染経路と感染源の病原を決定するガイドとして使われるべきである。CJD症例の若年層の増加は、更に組織移植、手術、血液、及び、血液製剤を介する人から人への感染のリスク(危険)を増大させた。人間、及び、動物における無症状の時期を非感染であると見なすことができないことは明らかである。人間の食物連鎖にかかわる全ての動物を早急に検査する必要がある。そしてまた、血液、及び、臓器提供者もCJDの検査が必要である。患者に使用後の外科用、及び、歯科用器具を再使用する前に浸透方法で洗う必要性がある。

 臨床上2種類の羊スポンジ状脳症(scrapieスクレイピー)がある:タイプIの"かゆみ"とタイプIIの"運動失調・震え"の2種類である。羊のタイプIIスクレイピーの運動失調はBSE 、 vCJD 、及び、クールー(Kuru)において見られる臨床症状と同様である。その事実は、 Type II が BSE 、 vCJD 、及び、 クールーの原因であることを示唆する。BSEの母子感染に関する明瞭な証拠がある。畜牛、または、ミンクはタイプIの感染源の病原(種類)を接種されると、数匹のみが悪化し、 BSEにおいて見られるのと異なる臨床症状を示す。畜牛、猫、または、ミンクはタイプIの感染源の病原(種類)に感染された羊の脳を食物として与えられたとき、今までのところ、臨床的に病気を発症した例は無かった。対照的に、BSEの感染源の病原(種類)を食物として与え、及び、接種すると、100%の畜牛、猫、及び、ミンクが臨床的に病気を発症した。BSEの絶滅のために、また人間に対する感染のリスク(危険)を減少させるためにBSE に対するワクチンの開発が提案される。そのような可能性は、十分に検討されるべきである。

序文(Introduction):

全ての人間の、そして、動物が感染する中枢神経系のスポンジ状脳症(TSEs)は一般に脳における気泡の分布により確認できる。TSEsは同じ感染源の病原を持ち、20種類以上の病原体があり、その中には特徴的な性質を持つ病原体もある。

クロイツフェルト・ヤコブ病

 クロイツフェルト・ヤコブ病はスロー・ウイルス感染に起因した致死的な神経の病気である。潜伏期は数年にも及ぶ場合がある。通常、CJD は、進行性の知能障害が現れ、アルツハイマー病 (AD)の場合に見られる症状と類似している。更に高齢の患者においてその患者が生きているとき、2つの病気が常に区別されることができるとは限らないことを強調することは、重要である。アルツハイマー病と比較すると、 CJD は、4から7か月の間に急速に悪化し(変化し)、様々な神経的異常が現れる、とりわけ視覚的、小脳、及び、錐体外路の障害をほとんど必ず伴う。多くの著者によって使われている言葉として、CJD があり、広範囲の臨床の徴候学、及び、神経病理学的特徴の意味を現すが、症例により異なることがあり、自分もその違いに関して述べる。

 CJD の重要な臨床の診断徴候は、以下である:ミオクローヌス(痙攣)、知的能力退行、及び、脳波検査(EEG)上での徐波。EEGは、頭蓋骨を経て脳の電気活性を記録する技術である。CJD症例の約50%において、EEG の特定の(特徴的な)パターン変化が、重要な診断兆候(sign)である。しかしながら、25%の孤発性CJD、及び、ほぼ全例のvCJD(新変異型)では、EEGの異常波形は病気の進行期にのみ現れるが、その時期には患者はもはや立つことも、歩くこともできない。その他のEEG異常波形は2種類のグループのみに観察される:亜急性(subacute)スポンジ状脳症(SSPE)とヘルペス脳症である。多くのCJD症例は、3-6ケ月以内に死亡するが、10年後の死亡例も報告されている。これらの特徴が1項目以上ないとき、特に長期化した臨床経過を伴う症例に対して、CJDの診断は、あまり確かでない。

3種類のCJD症例(Three Groups of CJD Cases)

 CJDの世界的な発生についての疫学的研究は、3種類の(疾患)群の存在を明らかにした:(1)家族性(Familial):これらの症例は、同一家系の中で発生する。(2)医原性(iatrogenic):発症頻度は低く、偶然の接種(汚染された機器を経て)によって引き起こされる、さらに、汚染されたヒト成長ホルモン(hGH)による症例もある。(3)孤発性(Sporadic): CJD症例の大多数を形成するが発生はまれである。しかし、世界中に存在する。
 初期の臨床症状、及び、病理学的所見がどうであろうと、伝達可能な感染源の病原体は全群に共通であり、他の全SEs症例と同様である。

(1)家族性のCJD(The Familial form of CJD)

 家族性のCJDは症例の約5-15%をなす。家族性のCJDの主の特徴は、発病が比較的若く、病状が長く持続する事である。家族性のCJDの問題点は、家族内で症例が発見された時、その症例の関係が結婚によるものである場合に起こる。概して、家族性のCJD患者は、それらの臨床、そして神経病理学的特徴において孤発性CJDと異ならない。母親が父親より高頻度に影響を受けるという証拠はない。系図の証拠が示すのは、CJDは隔世遺伝での非発症、一世代での発生、結婚に関係した、及び双子で(優勢の対)での発症、母方または父方の系統に優位に関係した発症の事実などである。これらの全てにより、理解を困難にしてきた。

(2)医原性のCJD(Iatrogenic CJD)

 この感染は事故や不注意の偶然の接種によって引き起こされた、新たに、予知できない情況での出現が続いた。本来は汚染された機器、及び、移植に起因する。この病気は、成長ホルモン(hGH)治療を受けた一群の患者において最近発症した。CJDは人から人に伝染性を有する材料の直接接種によって急速に伝染する事が知られており、その潜伏期間は2-5年である。この場合観察された病気の潜伏期の差異は一部、接種方法、感性性の材料の服用量、及び、感染源に起因するかもしれない。
1985年以来、65例を超える CJD症例が、脳下垂体由来のhGH投与者で認められた。これらの症例は、米国、英国、及び、フランスで報告された。これらのhGH投与者のCJDの臨床症状は、特に下肢において重度の運動失調を伴う小脳の機能劣化(低下) で始まり、知能障害は、遅く出現する。これらのhGH投与者において認められた症状(徴候)は、クールー病においても典型的に見られる。EEGはび漫性脳症(の所見)と一致していたが、周期的放電波形はなかった。これらのhGH(投与)患者の臨床症状はこの論文で述べた新しい形のvCJDと類似することに注目することは興味深い。

人間の組織移植によるCJD伝達(Transmission of CJD from Human Tissue Graft)

55歳の男性が、2ヶ月の経過の、協調障害、痴呆(物忘れ)、不随意運動、及び、ミオクローヌスの後亡くなった。CJD(の診断)は、脳の組織病理学的検査によって裏付けられた。彼の死後まもなく、彼からの提供で角膜移植が55歳の女性に行われた。約18ヵ月後、彼女は、無感覚、吐き気、及び、運動失調を発症した。次の8ヶ月間、神経的な劣化が進行し、歩行、及び、嚥下が困難になった。彼女は、病気の発病から8ヶ月で亡くなり、そして、CJD の診断が、脳の組織病理学的検査によって裏付けられた。
フランスにおいては、1992年から1994年の間に、4人の患者が亡くなった。彼ら全ては、CJDの発病の4-7年前に硬膜移植を受けた。
17歳の若い男性と23歳の女性の2人の患者は、内科的に治療困難なてんかんのために外科の切除を受けた。両者は、銀電極を使用したstereo tacticの脳波調査後2.5年から2.25年後にCJDを発病した。両者の症例において、使われた電極9本のうち2本は、CJDを発病していた69歳の女性の脳に以前埋め込まれていた物であった。使われた電極は、CJDウイルスを不活性化する為に70%アルコール、及び、ホルムアルデヒドによって殺菌されていた。

28歳女性の症例の場合は、商業上利用可能な硬膜を用いた脳外科手術19ヶ月後にCJDを発病した。他の症例としては、25歳のニュージーランド人の男性は、転倒による頭部外傷の脳外科手術31ヶ月後に急速に進行性の痴呆を発病したと報告された。硬膜の損傷は、商業用の輸入死体硬膜移植片により修復された。脳の組織病理学的検査後にCJDが確認された。その患者の家族歴には、退行性の神経病はなく、さらに、hGH治療も受けていなかった。さらに、数症例に(CJDの)疑いが生じた。そのことが人から人への偶発的な伝達の確証となった。他に28歳の女性は、右耳の切除術の際に、右側頭部に硬膜移植を受けた。この女性は妊娠中に、吐き気、嘔吐を訴え、次の4週間の間に不安定歩行、及び、言語障害を発病した。精神状態の退行が出現し、そして患者は歩く事が出来なくなった。定期的に繰り返されたEEG検査では、著明な徐波と鋭い周期的なCJDの波形を示した。その患者は、亡くなり、そして、その病気は、生検により確認された。

以上のような事の考えられ得る結果は、認識されていた。そして、1970年代に英国において医学研究審議会(MRC)のメンバーが、hGHのロットがCJDの病原体に汚染されている危険性についての調査をするために評価をすすめる計画が提案された。研究は、MRCから依頼された。エジンバラを本拠地として、神経病因論部門のスロー・ウイルス研究グループがhGH製造方法の有効性を監視することを引き受けた。この種の実験にはいくつかの欠点、及び、問題がある。これらの実験において、全材料のうち限られた量が接種され、それも、恐らくは、 1,2 回(の接種)のみである。従ってウイルスの量は感知できない状態かもしれない。これは、ウイルスの完全欠如を必ずしも意味しない。更に、ウイルスの活性度は遅い為に、病気は感知(診断・確認)されない。なぜならば、臨床症状(病状)が現れる前にそれらの動物は殺されるか、死んでしまうからである。寿命に到達した動物の組織を新たな動物のグループに与えられる場合がある。そのような実験においては、いつ実験を終了するか、そしてhGHと関連していることが明白なCJD症例の陰性結果(CJDではない症例)をどのように解釈するかが常に問題になる。

CJDと輸血(CJD and Blood Transfusion)

 持続的な血液中のウイルスの存在(viraemia)、及び、低密度リンパ細胞内におけるウイルスの優位な増幅は、1980年代に2つの異なるグループによって示された。立石(1985年)、及び、クライン(1993年)らは、それぞれCJDに感染した患者(とマウス)の血液検体により病気を伝達させる事が出来た。さらに、彼らは、その患者の脳、角膜、及び、処理していない脳脊髄液(CSF)、及び尿を、通常の生理食塩水中に10%粗懸濁させたもの20μlを接種した。上記の臓器によって感染した動物は、臨床症状、及び、一般の病理学的変化を示し、潜伏期も変化した。脳は、789±112日、角膜は、1037日、血液は、1080±69日、尿は、880±55日、そして、CSFを接種された動物のみが健康状態を維持した。血液接種によるマウスからマウスへの感染は成功しており、平均潜伏期は、365日であった。

輸血 : 発生率(Blood Transfusion: Incidence)

 1993年にエスモンデらは、英国で行なわれた疫学的調査(研究)において、202の確実例とほぼ確実例の内21人のCJD患者は、血液輸血を受け、29人(のCJD患者)は、血液を提供していた事を確認した。血液輸血の確実例と非輸血者の対照群を比較した場合には、有意差を認めなかった。血液輸血からCJDの臨床症状が現れるまでの期間は、平均値として174ヶ月、中央値114±18ヶ月、期間の範囲は2から588ヶ月と報告されている。輸血を受けたCJD患者の臨床の特徴は、孤発性で観察されたそれらと類似しており、従って、エスモンデらは、輸血がCJDの主要な危険要因ではないことを示唆した。しかしながら、彼は、疫学的な証拠は、CJDの孤発症例が輸血された血液内の病原体による感染(であること)の可能性を除外する事は出来ないと結論を下した。更に血液、及び血液製剤がCJD感染者、危険性の高いCJDの家族の一員、及び、hGHで治療された人々から提供されてない事を確認するためにあらゆる対策が払われなければならない。病原体の検出率の高い方法を開発しなければいけない。持続的な血液中のウイルスの存在(viraemia)は、モルモット、マウス、そして、 CJD患者において証明されたので、輸血用血液、及び、医学使用の為の血液製剤は、十分に検査されなければならない。

JD とEB

 2 人の姉妹、51歳と59歳は、双方共に臨床症状の出現時期には6年の差があった。彼女らは、42 年の間同居した。しかし、ここ 10年間は別々に暮らしていた。家族は、彼女たちの臨床症状を彼女らの農場にいるBSEに感染した牛と関連(関係)づけた。JDは、1989年に先に亡くなった。彼女は、朝突然肩の痛みで目を覚ました。数日以内に、彼女は、下肢の力が無くなり、更に、歩く事が困難になった。そして、抗抑鬱剤で治療を受けた。彼女の(担当の)神経科医は、ハンチントン舞踏病を初めに疑った。病院において、EEG検査によりCJDが確認された。検死は、実行されなかった。
 1996 年 9 月に、二人目の姉妹、EBが18ヶ月の闘病生活後に59歳でCJDにより亡くなった。彼女は、手の震えを発症し、それもパーキンソン病の初期症状に類似している様に思われた、更に、病状が進行して、よろめき、及び、バランスの損失が起きた。輸血提供者であった彼女の姉と異なりEBは、血液の受給者であり、4年間の間に大量の輸血を受けた。著者は、EBへの献血者を追跡しようとした。献血者5人中3人は、追跡する事が出来た、そして、この3人は、健康で異常はなかった。脳の比較組織病理学検査の結果で、小脳の広い範囲が気泡(空泡)化しており、多数のPrP陽性のプラークが明らかになった。PrPプラークは、BSEの病原体により感染した患者に比べると大きさは小さかった。しかし、ヒト成長ホルモン(由来の感染)の例において観察される小脳の検体における大きさ、及び、分布は類似していた。EBの脳で観察されたPrPプラークの分布の集まりが同じである為に、彼女の例は、輸血感染したことを強く示唆する。

(3)孤発性のCJDは、症例の大多数を形成するがまれである。しかし、世界的に存在しているのが知られている。古典的なCJDの年間の発生率は、人口百万人につき一人(1例)であると見積られた。しかしながら、公表されたデータは、百万人につき1例である事を立証しなかった。何カ国の民族系グループの年間の発生率は、百万人に一人以上に達する事もあるかも知れない。一方、一般の人口百万人に対しての発生率は、アメリカでは0.26から0.4、フランスは0.32、及び、英国では0.09である。BSEの出現以後は、年々英国でのCJDの発生率は増加している。今では、人口百万人に対してほぼ二人になった。

運動失調型亜急性CJD(An Ataxic Form of CJD)

 フォリーらは1955年に亜急性型進行性脳症の3人の中年患者に関して "The Ataxic-Cerebellar Form of CJD"と報告をした。その後、ブラウンウェルらは1965年に4人のAtaxic-Cerebellar Form of CJDを追加報告した。目立つ臨床的な特徴が特徴の現れる順番に報告された:小脳の急速に進行する運動失調、及び、筋肉のコントロール(構語障害)の妨害による会話が不明瞭な状態、不随意な律動的な急激な動き、昏睡状態に至る痴呆、及び、最終的には筋肉の剛性(不本意の動きが消滅する傾向)の状態。最終段階において、話す事が完全に不可能となった。闘病期間は、約13ヶ月であり、平均は7ヶ月であった。

新変異型CJD症例(New Strain CJD Cases)

 新変異型CJD(vCJD)は、英国で確認され、それが若い人々に影響を及ぼすという点が特徴である。vCJDの臨床経過は、孤発性CJDで通常見られる症状と異なる。これらの症状は、Ataxic-Cerebellar Form of CJD、及び、hGH由来のCJD発病患者と同じである。症状は、行動、及び、気分の変調を含み、さらに、抑鬱を伴い、更に足どりの揺れ、及び、織物を織るように歩くことが悪化する。患者は、踏み外したり、つまずきやすくなる傾向がある。患者は平衡感覚を保つこと、及び、歩く事が困難になり、まるで、彼らが落下すると感じ、サポートを必要とする。記憶障害は、病気の進行と共に明白になる。これらの症例は、古典的なCJDと関連している典型的なEEGの波形は示さなかった。末期のEEGの結果は、いくらかの遅い振幅波形の活動を示した。同様な波形は、hGH治療を受けた患者においても観察される。患者は精神科に紹介されるほど、典型的なCJDの症例の症状と非常に異なる。これらの症例の全ての初期診断は、脳における、もしくは、尿サンプルにおける nemavirus、及び、SAF を示すことによって診断される。CJDの為の従来の、そして容認された診断基準に基づいて診断するとこれらの症例は臨床上はCJDの疑いを持つ症例とは分類されないであろう。

CJD症例の通常の診断、及び、確認(Routine Diagnosis and Confirmation of CJD Cases)

 CJDの診断の際にはしばしば問題を生じる。なぜならば、組織学的検査の準備に時間が要するからである。動物へのCJDの感染経路の確認は更に長い時間を有する。それは潜伏期が長いからである。正しい診断に達する際直面する困難は、この病気の低い発生率や、現在の既知の症例は、おそらく氷山の一角にすぎないことから、一部説明できる。多数の人々は感染しても何も症状が無く、あってもわずかまたは準臨床状態のみ、もしくは、他の合併疾患によってCJD症状が隠されていると考えられる。
 非典型的な症例において、臨床症状、及び神経病理学的な特徴は、孤発性CJDで見られるのとは非常に異なっている。異常な特徴には、古典的CJDで見られたEEGの変化の欠如を含んでいる。従来のそして容認された診断基準に基づいて診断すると、全ての症例は臨床上はCJDの疑いを持つ症例とさえ分類されないであろう。初めに、それらは、CJD症例であると確認された。なぜならば、それらの脳がタッチ(印象)、及び、負の染色技術(それらの脳においてtubulofilamentousな粒子、及び、SAFの存在を示した)によって検査されたからだ。それにより診断を確認した。この技術は、診断を識別する事が出来、更に、確認するのに役立った。孤発性CJD症例においては、小脳の融合性のスポンジ状変化は、非常にまれである。

プラーク(Plaques、班)

 免疫組織化学染色により、CJD脳組織において2種類のプラークが確認された。(@)アミロイドβ(ベータ)−蛋白陽性(APP)プラーク、名称はアミロイド・プラーク、それらは、ADの証明である。小量のAPPは約15%のCJD症例に観察された。(A)プロテアーゼ抵抗蛋白陽性(PrP 27-30kDa)プラークは、PrP33-35kDa前躯体蛋白質(PrPc)から由来した物である。PrP陽性プラークはAD、及び、その他の非SEの神経学的異常患者には観察されてない事を指摘する事は、重要である。
 BSE型の病原体により感染した人々の、最も明瞭な神経病理学的特徴は、染色されたPrPプラークの大きさの多様性であり、2-35mmを示す。免疫組織化学染色により、細胞周囲のPrPプラークは広範囲に大脳、及び、小脳に分布し、さらに、少数のPrPプラークが脳幹神経節、視床、及び、海馬において存在している事を示した。
 BSE型病原体により感染した若い孤発性患者と比較すると、脳下垂体から得られたhGH由来のCJD症例は、明らかにPrPプラークの大きさ、及び、小脳での分布は異なった。例外は1人の患者だけで、それはEBであり、彼女は輸血を受けた。PrPプラークの大きさははるかに小さく、hGH症例の場合に見られたのと同様であった。脳のPrPプラークの大きさ、及び、分布図がhGH治療を受けた人と輸血を受けた人で同じである事は、輸血を受け発症した症例は汚染されている血液により感染した事を示唆する。

尿検査(Urine test)

 イオン‐キャプチャ技術が、臨床上診断されたAD症例のPrPc、もしくは、それらの一部を示す為に使われた。これは、尿サンプルからAPPを濃縮し、そして、その濃縮物に、ウェスタン・ブロット免疫染色を行なう方法である。APP抗体369を用いて、AD症例の尿から1つ、2つ、または、3つ全てのAPP segmentを示す事ができた。ただし、健康な個人からは検知されなかった。これは、CJD、及び、nvCJDに関する診断に寄与する意義があるかもしれない。同様に、この技術は、PrP抗体を用いてウェスタン・ブロット免疫染色を行ない、CJD、及び、BSEのプロテアーゼ抵抗蛋白/SAFを示す為に使用できる。もしくは、濃縮されたサンプルを電子顕微鏡検査のグリッドの準備をする為に使われている。

クロイツフェルト・ヤコブ病の脳における Nemavirus 粒子(Nemavirus Particles in Creutzfeldt-Jakob Disease Brains)

 CJD(患者)脳の薄い切片を切る事によりNemavaris粒子(NVP)と命名されているtubulofilamentous粒子が示され、それは自然界の羊のスクレイピーにおいて見られたそれら、及び、マウス、ネズミ、及び、ハムスターにおける実験的スクレイピーで認められている(粒子)と類似している。これらに関しては、別の章で詳しく述べる。これらは、BSEを含む全ての伝達性のSEsで認められる。NVPの数、及び、分布の図は、各症例によって異なる場合もある、さらに、同じ症例でも、脳の場所により異なる場合もある。更に、スクレイピーに関して、これらの粒子の内部はスクレイピー関連小繊維(SAF)により形成され、そして、Nemavirusの外部は単列DNAを含みそのDNAを解明されてない蛋白質層によって保護されている。

タッチ印象技術の開発(Development of Touch Impression Technique)

 EM によって、実験的に感染した動物組織の検査(試験)を単純化する為に、単純な印象技術がNVP/SAFを示す目的で開発された (Narang et al.、1987年、1988年)、そして、この方法は、既知の人間、そして、動物のウイルスを使った実験によって有効である事が立証された。この方法は、実験的スクレイピーCJDの脳に適用された。NVPは、今まで検査された全てのスクレイピー、および、CJD症例において確認された。この方法は、クロス―ブラインド調査により感染しているハムスターから様々な段階の潜伏期の組織、及び、対照群からの非感染組織を取り、行なわれた。検査された全ての組織の状態は、NVPの存在、または、欠如に基づいて、正しく確認された。更に、検体は接種後20日目に採取され、それは潜伏期の4分の1に当てはまる期間であるが、タッチ方法によって一貫して陽性の結果を与えた。ただし、脳の組織学的検査において、スポンジ状の変化は認められなかった。最終的に、これらにより、この技術が疑われている動物の一般検診、及び、診断の目的の為に適用されると思われる。

病原体の性質(Nature of the agent)

 最近、BSE調査会は、TSE病原体の性質、及び、突然変異の仮定の役割に関する証拠を報告した。既に、BSE調査会の宣言が一般通念になったように思われる。この問題全体の重要性は、病原体の性質に関するいくつかの仮説が、前に提案されて、論じられた( Narang、1997年、2001年) からである。著者がどちらの仮説を支持するかに応じて文献が選ばれ、仮説を支持し、そして、特定の考え方に合わない文献は完全に無視する。時々、仮説は、誤って引用されて、事実として強調される。大衆、及び、メディアが討論に加わったので、その問題は、非常に複雑になった。2つの主要な仮説、蛋白質対ウイルス、さらに、PrP遺伝子仮説における突然変異について、詳細に論じられた。

 多くの一般のウイルスと異なり、TSEの病原体は広範囲の宿主に感染出来る。そして、種の壁の効果はない。この性質は、TSEの病原体に特有ではない。手・足・口病、及び、狂犬病のウイルスは、広い範囲の動物種に等しい効力で感染する。物理的、化学的に広範囲にわたる安定性、特にヌクレア-ゼに対する抵抗性、紫外線光を伴う照射、加水分解、物理化学的安定度があり、そして著明な感染量を有するTSEの能力は時に、132℃で一時間半の熱において生き残れることは以前に論じた(Narang、1996、1997、2001)。例えばヌクレアーゼに、紫外の光による照射に、及び、加水分解に対する抵抗性を有する性質の多くは、思われたより異常ではない。大腸菌(E.coli)、及び、ボツリヌス菌は繰り返し照射を受けると抵抗を持つ事が出来る。熱処理は、感染力を破壊することは明らかである(Narang、1995年)。しかしながら、大半の感染力はオートクレィブにより破壊できる。そして、ほとんどの場合55℃以上のIN(1規定)苛牲ソーダ、及び、次亜塩素酸塩による処置により破壊できる(Narang、1995年)。

 明らかに新しい病気を追求しようと試みる時、最初の実践は、自然界に既存する病原体を捜すことである。過去において、羊における2つの明白な臨床の症候群、その両者がスクレイピーと呼ばれた。タイプ I は、(一般のタイプ)むずがゆさ、及び、毛の損失によって表明される。タイプ Uは、震え、及び、運動失調によって表明される。羊が、BSEに感染している牛の脳組織を接種されると、震え、及び、運動失調 (タイプ Uスクレイピー)を発症する。BSE、Kuru、及び、多数の最近のCJD症例における主要な臨床症状である震え、及び、運動失調は、同じである。BSEの種類が最も有毒な種類であり、新しい宿主への感染経路は経口感染が可能であり―猫、ミンク、牛、及び、人間のような動物に感染出来る。宿主の遺伝構成よりむしろ病原体の種類が臨床症状、及び、潜伏期上に優勢を持っていることは、感染したホストの種の範囲から明白である。

 プルシナー(Prusiner)、及び、彼の同僚は、個々のプリオンが病原体であると考えた。証拠なしで ロジャー・モリス(Roger Morris)教授は、1頭の牛においてプリオン蛋白質遺伝子の体細胞における自然な突然変異がBSEの孤発例につながったことをBSE調査会(www.bse.org.uk) に示唆した。一方、ある動物に他の動物を食べさせることは、eventualな流行の原因であるとした。更に、ジム・ホープ(Jim Hope)博士は、羊の胚胞細胞のPrP遺伝子における突然変異、及び、病原体のゲノムにおける別の突然変異: (すなわち)1つではなく、2つの突然変異の結果により新奇なスクレイピーの種類が作られることになると示唆した。これらの学説を支持する証拠は提供されなかった。

 PrPの役割:PrP33-35kDaは、PrPの前駆(ぜんく)蛋白質であり、正常な細胞内の蛋白質であり、伝達性の病原体の本質的な成分でない事は以前の総説において述べた(Narang、 1997年、2001年)。実験による伝達経路の研究により、伝達性の病原体の複写は新しい宿主種(由来の)接種、または、摂取後のみに始まる事が明らかになった。提供者である宿主からの一点の突然変異(point mutation)はPrP遺伝子にコピーされない。TSEの病原体は、"真の純種(breeds true)"の種類であり、1つの動物種から別のものに伝達される時には原型の特徴を保持していることは確立された事実である。これらの調査結果は、プリオンがその病原体ではない事を明瞭に論証する。

 マウスへのBSE病原体の感染経路に関する最近の研究において、BSEに感染した畜牛脳からの混合物を注入されたマウスの全てで、神経的な徴候や神経壊死が認められ、それらの55%には気泡(空泡)、及び、PrPscは検出されなかった。次に、PrPsc-マウスの脳を使用して、第2(次の)群のマウスに接種したところ、ほとんどのマウスは神経学的症状を伴ったが数匹のみがPrPsc-の分布図型を表した。第2群のPrPsc-マウスの脳を使用し、第3群のマウスに接種した場合には古典的な型が伝達され、ほとんど全てがPrPsc-陰性パターンを示したが、1匹のマウスでは、全てが消滅した(無くなった)。従ってBSE病原体は、新しい宿主内ではPrPscによることなく複製していた事は、明瞭である。

 最近、バルター(Balter、1999年)は、プルシナーによって提案された蛋白質だけによるとの仮説(protein-only hypothesis)を分析した。すなわち、家族性のCJDは、PrP遺伝子の自然な突然変異(Prusiner、1994年)と関連があると言う事である。当時、多くの研究者は、高値のPrPを示す突然変異体マウスの内2匹が神経学的な症状(徴候)を自然に生じた為に蛋白質だけによるとの仮説が有効であると考えた。しかしながら、病理学的結果が異なり、脳組織が感染力を持っていなかった事が明白になった。

 最近、マンソン(Manson et al.、 1999年)らは、プルシナーの実験を新しい技術を用いて繰り返した。プルシナーの研究と異なり、高値のPrPを示すtransgenicマウスは、900日の寿命の間に自然発病しなかった。しかしながら、これらのマウスが感染した脳抽出液を接種した時、それらは、平均約280日の接種後に臨床的に発病した。更に、プルシナーの研究により、ヒトPrPの量はtransgenicマウスでは正常のヒトPrPc量と比較して4から8倍の値を表す。これらの高値を含有するマウスからヒト、もしくは、ヒト―マウス混合のPrPscを含むPrPscを生成する事は出来なかった(テリング(Telling)、1987年)。これらの実験後にプルシナーのグループは、Narang(1992年)によって以前に提案された、PrPsc以外の他の"X"蛋白質、すなわち、巨大分子のchaperoneが蛋白の翻訳後の段階において必要とされると結論した。

 BSEを接種された羊は、震えを示すタイプUのスクレイピーを発病する。畜牛、または、ミンクがタイプI型を注射された時、数匹のみが、臨床的に病気を発病した。対照的に、今までのところ畜牛、及び、ミンクにおいては、タイプIに感染した羊の脳を投与しても臨床的に病気の発病は、認められなかった。しかしながら、同様に、BSE型を注入、もしくは、(経口)投与した場合、子牛、及び、ミンクの100%に臨床的に(病気の)発病が認められた。その事実は、タイプUがBSEの原因であることを示唆する。タイプUの震えと同じ臨床症状は、クールー、及び、最近のクロイツフェルト・ヤコブ病の多数の症例において観察される。BSEの病原体は、国内の猫、トラ、そして、動物園の動物のいくつかの種にスポンジ状脳症(SEs)を引き起こした。BSEの病原体の性質は広範囲の種別や遺伝子内容により影響、変化を受けず伝達する。それらにより、宿主のPrP遺伝子の多様性は、BSEの病原体に対する感受性の主要因ではない事を論証した。

 85種を超える動物園の動物がSEsと診断されたので、これらの研究に基づき、ヒトも含めてほとんど全ての哺乳動物に感染する事が可能であると結論する事は、妥当に思われる。BSEの絶滅の為、そして人間への感染の危険を減少させる為にBSEに対するワクチンの開発が提案される。そのような可能性は、十分に検討されるべきである。

 数年間、2種類の病原体の間に干渉現象がある事が知られていた。この現象に基づいて、私は、スクレイピーのタイプI型が、BSEタイプU型スクレイピーに対するワクチンの働きをすることを示した。多くの人々は、タイプI型を知らずに食べた事がある、そして ( 従って ) 、自然予防(保護)になる。200年の夏、バーミンガムでプルシナー博士の同僚、マイク・スコット博士は、羊は2種類の病原体を持つ:スクレイピー、及び、BSEの病原体であると述べた。その病原体は、これまで常に羊が含有し、そして、おそらく今後も常にそうであろう。現在スタンリー・プルシナー博士は、病原体の2種類の間での干渉現象を公式の場で認めた。彼は、スクレイピー型とBSEの両者が存在する時、スクレイピー型の方が優位であり、そして、BSE型による畜牛、及び、人々への感染を防ぐ。すなわち、スクレイピー型は、BSE型に対するワクチンの働きをする。病気を引き起こす病原体がウイルスである場合に、干渉現象は効果を表す。これらの研究、及び、調査の最終結論は、PrP自体が病原体ではないことを示唆する、従って、伝染性の病原体は、PrPsc以外の何かである。従って、それは、ウイルスでなければならない。