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薬害ヤコブ病訴訟の到達点と課題
2001年11月11日
薬害ヤコブ病大津訴訟弁護団
団長 中島 晃
1、はじめに−繰り返される薬害
(1)レンツ警告を無視したサリドマイド薬害
(2)劇薬を整腸剤に転用したキノホルム薬害スモン
(3)非加熱製剤を売りまくった薬害エイズ
(4)欠陥製品ヒト乾燥硬膜ライオデュラの移植による薬害ヤコブ病
2、薬害ヤコブ病訴訟の経過と概要
(1)訴訟の提起
- 1996.11 大津地裁に提訴
- 1997.9 東京地裁に提訴
(2)原告患者数
|
患者数 |
原告数 |
大津訴訟 |
13名(生存患者0) |
29名 |
東京訴訟 |
12名(うち生存患者3名) |
29名 |
合計 |
25名 |
58名 |
(3)被告
国(厚生労働省)、ビー・ブラウン社(ドイツのメーカー)、日本ビー・エス・エス(日本の輸入販売会社)、同社の役員2名
(4)審理の経過
- 大津訴訟 合計33回の口頭弁論を経て、本年7月2日に結審、来年3月に判決を迎える。
- 東京訴訟 大津訴訟とほぼ同じペースで審理が進行し、今年7月16日に結審。
- 2001.7 両地裁から和解勧告
- 2001.8 原告団統一要求書提出(加害者責任の明確化と謝罪、薬害根絶など11項目の要求を盛り込む)
- 2001.8 被告国意見書提出(法的責任を否定)
3、訴訟を通じて明らかになったこと
(1)ヒト乾燥硬膜(ライオデュラ)の移植とCJD発症との強固な疫学的因果関係の存在
(2)ビー・ブラウン社のライオデュラ製造工程の欠陥と杜撰な管理の実態
- ドナー選択のずさんな実態(死者の尊厳を犯す罪でビー・ブラウン社の社員が処罰される)
- ルック・バック体制の欠如
- プーリング処理(一度に最大600枚の製品が混合処理されていた)
(3)厚生省の杜撰な承認審査の実態と数々の警告の無視
- 1973 輸入承認−ドナー選択や混合処理等の製造工程の実態を審査せず(ドイツ本国ライオデュラの製造承認がなされたのは1978年)。
- 1974 角膜移植によるCJD発症が報告される。
- 1978 ガイジュセックらCJDの病原体はガンマ線等では不活化しないことから、患者の組織はいかなる意味でも移植に用いてはならないと警告。
- 1985 ヒト成長ホルモン投与によるCJD発症がアメリカ、イギリス等で報告される。
- 1987 アメリカCDC、FDAライオデュラ移植によるCJD発症の危険性を警告。
4、今後の課題
(1)国と企業の法的責任を明確にして、被害者の早期全面救済をはかる。
(2)潜在被害者の掘り起こしと全員救済の実現−厚生省調査で判明しているもの76名、おそらく全体で100名を上回る。
(3)ヒト、動物由来の医薬品・医療用具の安全対策と被害者救済制度の確立−新しい医療技術に対応したリスク管理の確立
(4)全てのCJD患者・家族(孤発生や家族性を含めた)を対象としたサポート・ネットワークの創設−CJDは人類が当面する最も深刻で困難な疾患(イギリスの経験)
(5)薬害の防止・根絶のための実効ある措置の確保
- 薬害ヤコブ病の原因究明と再発防止のための薬害ヤコブ病調査委員会の設置・この調査委員会には薬害被害者と被害者の意見を代弁する専門家・研究者を参加させる。
- 医薬品・医療用具の安全確保を監視し、薬害の防止を図るために、市民が委員として参加する公的な薬害監視機構を設置すること。
以上
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